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南充浩 オフィシャルブログ

ステテコの終わりの始まり?

2012年6月11日 未分類 0

 ユニクロが突如力を入れ始めた「ステテコ」なのだが、ステテコというアイテムの素材はクレープと呼ばれる強然織物である。

滋賀県の高島がクレープの産地として有名なのだが、ここは古くから「高島縮」という和装向けの生地を織っていた。その技術を活かしてクレープ地を織るようになる。

高島晒協業組合のサイトによると、
http://www8.ocn.ne.jp/~sarashi/index.html

1909年頃、薄地の片撚り縮みのシャツ地が海外で販路を開き、
これを「クレープ地」として大量に製織されるようになった。この頃の織物の幅は2尺(約60cm)であった。
(当時輸出が約60%内需が約40%と記録にある・・高島織物物史より)

とある。

100年以上前には、もうクレープは大量生産されていた。

クレープとは何かというと、サイトから引用する。

通常の平織りにくらべ緯糸の撚り回数を約1.5倍以上ひねる事により生じるうね(縦しぼ)で肌につく面積を少なくし、織り糸の本数も通常180本のところ120本で織り上げることで、すきまを多く、風通しがよくなるように仕上げています。

とのことであり、一言でまとめるなら緯糸(よこいと)に強撚糸を使った凹凸感のある低密度織物であるといえる。
綿100%なので吸水性があり、しかも凹凸感があるので肌にまとわりつかない生地である。

さて、件のユニクロのステテコだが、店頭で見まわした限り、この「クレープ地」が使われている物はない。
薄地の綾織りや平織りがほとんどである。一部に凹凸感のある編物もあったかもしれない。しかも「ドライ」を謳っているのでポリエステル混である。
これでは「ステテコ」ではなく、単なるロングトランクスか吸水レギンスである。薄手生地を使った膝丈の布帛トランクスと言った方が適切である。

実際に、肌着メーカーの中には「ステテコ」の名称を使わずに「ロングトランクス」と銘打っている正直な企業もある。

余談だが、こうした「正直な企業」よりも「方便の達者な」ユニクロの方が売上高が大きいところが、何ともやりきれない思いにさせてくれる。

金曜日にステテコのことをブログにアップしたところ、
高島産地の関係者や和装関係者などから「今夏はステテコの売れ行きが昨年よりも悪い」というお知らせをいただいた。人によっては「今のところ、昨年の6~7割減の売れ行き」だという。
もっともステテコは「クールビズ商品」と認知されているので、6月後半から8月にかけて大きく動くかもしれない。

6月上旬までの時点で、ステテコの売上が伸びないのは、一つにはブランド数が増えすぎたということがある。
カラーステテコを最初に打ち出したアズの「ステテコドットコム」だが、ドメインの取得は2005年である。
2009年ごろまではカラーステテコ、ファッションステテコといえばここしかなかった。
ところが、その後、カラーステテコが市民権を得てから雨後のタケノコのように各肌着メーカーから新ブランドが投入された。
極めつけは今夏のユニクロである。

次にユニクロのように単なるロングトランクスを「ステテコ」と銘打って販売しているブランドが増えたことがある。
これでは何がステテコなのか消費者は混乱するばかりだ。ロングトランクスみたいな商品もあれば、パジャマのボトムスみたいな商品もある。いくら何でも便乗にも程があると思うのだが。

3つ目はカラーステテコ、ファッションステテコの重要な要素である「色柄」に格差があることだろう。
「ステテコドットコム」は先行者らしく、とくにグラフィックの柄に工夫を凝らしているが、新規参入ブランドの多くはパジャマや下着トランクスの延長線上のようなグラフィック柄が多い。
これではダサすぎて、インナーとしてならまだしも、ルームウェアとしては使いようがない。

今夏、ユニクロが参入したことで確実に「ステテコ」は値崩れを起こすだろう。
もしかしたら今夏で商品寿命が終わるかもしれない。数年先に振り返れば、「ステテコブームの頂点は2011年夏だった」ということになっているかもしれない。

これは個人的見解だが、ユニクロが取り組み始めるとその商品の寿命は「終わり」だと感じる。
フリースしかり、ダウンジャケットしかりである。
もちろん、フリースもダウンジャケットもいまだに各社の店頭には並んでいる。
しかし、フリースは一部のブランドを除いて今でもファッションアイテムだろうか?
ダウンジャケットを今秋冬に拡充して打ち出すブランドがユニクロ以外にあるだろうか?

消費者にとっては、フリースは定価1990円で、週末値引き990円になったときに買えばよいルーム防寒着である。ダウンジャケットはとっても軽いけど定価5990円で買う商品である。

そういう意味では2012年夏は、ステテコの商品寿命が終わった年なのではないだろうか。
塩野七生さん風にいうなら「ステテコの終わりの始まり」なのかもしれない。

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