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南充浩 オフィシャルブログ

アダストリア苦戦の要因は出店過多よりも、売れない商品企画とブランドリニューアルの失敗にある

2018年10月1日 企業研究 0

アダストリアホールディングスの2019年2月期第二四半期決算が発表されたが、近年業績が低迷していたが、それに輪をかけた結果となり、同社の苦戦が改めて浮き彫りとなった。

売上高1050億500万円(前年比2・6%減)
営業利益5億2900万円(同86・0%減)
経常利益6億円(同84・6%減)
当期損失5億5400万円

となり、微減収大幅減益に終わった。また当期損益では赤字転落となっている。
 
この理由について「在庫処分の値引き販売によるもの」と、今回に限らず以前から説明されているが、たしかに同社直営の販売サイトでありドットエスティを見ていると、その値引き販売はつぶさにわかる。
恐らく、店頭で見ているよりもはっきりとわかるだろう。
それでも同社が上手いと思うのは、店頭では値引き販売の回数をおさえて、ドットエスティで連発しているところで、販売サイトの使い方は上手いと思うが、当方のように販売サイトも見比べている人間からすると、店頭で買う必要性がますますなくなり、これはこれで悪循環を生みかねない。
ドットエスティでは、タイムセール、オンライン特別値引き、シークレットセール(会員でログインしないと見られない)などが頻繁に行われているだけでなく、ときどき割引クーポンまで送られてくる。
安値で買いたい人は、店頭ではなく、ドットエスティで買うべきだと痛感している。ちなみに4000円以上で送料無料だが、同社の商品は割り引かれてもだいたい1500円くらいはするので、3枚買えば送料無料で、割引きクーポンを併用すれば3枚買っても3500円くらいに抑えられる。
 
アダストリアには多くのブランドがあるが、中でも主要なのはグローバルワーク、ニコアンド、スタディオクリップ、ローリーズファームの4ブランドで、この4ブランドを合わせた構成比は合計で53・3%もある。要はこの4ブランドの業績がアダストリアの業績を大きく左右するといえる。レイジブルーやHAREなんて売れようが売れまいが実はあまり業績には関係ない。
 
今回の決算では、前年比11・1%増となったニコアンドを除く、3ブランドが前年割れに陥っている。とくに落ち込みが激しいのがローリーズファームで前年比14・6%減の103億円となっている。グローバルワークは4・8%減の187億2600万円、スタディオクリップは4・2%減の118億8300万円だった。
 
主要4ブランドの中でもっとも売上高が高いのがグローバルワークで、続いてニコアンド、スタディオクリップ、ローリーズファームの順になっている。
 
ニコアンドの好調が続く要因は、当方は顧客ではないから良くわからないが、外から眺めている限りにおいては、ジーニング(ジーンズ類)を中心としたデイリーレディースカジュアルでしかも安いからだと思われる。このゾーンは30代前後の既婚女性には支持されやすい。ストライプインターナショナルのアメリカンホリックが好調な理由も同様だと思われる。
ジーンズを中心としたデイリーカジュアルでしかも「安い」というところがポイントである。決してアダストリアの前社名とかけたわけではない。
ジーンズを中心とした「安い」デイリーカジュアルならユニクロがあるじゃないかということになるが、何もかもユニクロ尽くしでは着る方としては飽きてしまう。
当方もたいがいユニクロ着用者だが、それでもユニクロばかりでは飽きてしまう。
ほかの電化製品や自動車、携帯電話などと違って、衣料品では、一つのメーカーが市場を何十%も寡占できない理由はこの「飽きる」という心理が働いているからである。
もちろん、冷蔵庫でも自動車でも携帯電話でも「飽きる」が、洋服の場合は、毎日幾通りもの組み合わせを選んで着用しているわけで、来る日も来る日も全身ユニクロが続くと、自動車などよりも簡単に飽きてしまう。
「たまには違うブランドが着たいよな」
と思う。ブランドが変わったってそんなに見映えは変わらないのに。(笑)
 
そんなときにニコアンドやアメリカンホリックは選ばれているのではないかと思う。値段はユニクロと同等かそれ以下だし。
 
同社最大のブランド、グローバルワークについても同じことがいえるのではないかと思う。
 
しかし、グローバルワークは2年ほど前にブランドテイストをリニューアルしてしまった。
以前は、木目調の内装でメンズ、レディース、キッズがそろうファミリーカジュアルだった。価格はユニクロより1000円くらい高かったが、ユニクロにはないデザインの商品もあり、「ユニクロ飽き」の30代夫婦からするとたまに選びやすいブランドだったといえる。メンズは、アメカジであまり代わり映えがしなかったが、レディースやキッズにはユニクロにないデザインの商品が確実にあった。
2年くらい前にリニューアルされたブランドは全く違う。
商品こそよく見ればテイストはあまり変わっていないのかもしれないが、店の内装はまったく変わった。180度、いや540度違ってしまった。
リニューアル直後に店を見たときにあまりの変貌ぶりに驚いた。「これがグローバルワーク?」と。
床も壁も真っ白で統一された近未来的、モードなテイストの内装に変わった。同じ商品を並べたとしても前とは見え方が全く異なる。
そういう意味では、服は服単体として見るものではなく、店に並んでいる状態でも見るものだと、グローバルワークが教えてくれたといえる。
 
恐らく、ターゲット層を少し若返らせたのだろう。
 
当方は、グローバルワークの近年の苦戦はこのリニューアルの失敗だと思っている。
 
以前に買い物をしていたファミリー客はこの近未来的テイストの内装で確実に離れてしまった。じゃあ、ファッション感度の高いファミリー客がグローバルワークを選ぶかというとそれは難しい。すでにブランドがスタートして15年くらいが経過しており、グローバルワークのイメージは消費者に定着している。このイメージを覆すには2年くらいでは時間が少なすぎる。
 
それなりに好調に推移していたグローバルワークのテイストをどうして一新する必要があったのかまったくわからない。ある関係者に言わせると「社内外の政治的力が働いたのではないか」とのことだが、そう勘繰りたくもなる不可解な一新だったといえる。
 
今後、グローバルワークはしばらく苦戦が続くだろう。そして新イメージが定着するまでさらに時間を必要とするだろう。
 
今回、アダストリアホールディングスの福田三千男会長は

 
赤字転落のアダストリア福田社長、「20年ぶりの異常事態」
https://www.wwdjapan.com/708246

とのコメントを出しているが、まさしく危機的状況にあるといえる。
 

構造的な問題として、ショッピングセンター(SC)拡大に伴う過剰出店が一因であるとした。「新たにSCが1店舗できれば、商品だけが増えて結果的に余ってしまう。この現象を止めるには、アパレル企業が自ら出店をセーブしていくしかない。このままではデベロッパーがアパレル企業に利益を求める構造も厳しくなる。そういった意味で業界の大きな転換点が来ている」と語った。

 
と分析して発表しているが、問題は過剰出店というより、売れにくい商品を作っていることだといえる。
 
例えば、レイジブルーにはいつの間にか200円くらいのボールペンまで並んでいるが、その商品は必要なのだろうか?また200円くらいのボールペンをわざわざレイジブルーで買う必要があるのだろうか?コンビニでも良いだろうし、低価格文具雑貨屋なんて掃いて捨てるほどある。スリーコインズでもいいだろう。
ある業者は「洋服が売れないから穴埋めがしたいだけ」と指摘するが、200円のボールペンでは売れたところで穴埋めにもならないばかりか、売れていないからドットエスティで割引販売されており、粗利率低下の一因となっている。
 
そして、先述のグローバルワークのリニューアルの失敗である。
出店数の増加よりもそれらの方がよほど問題であり、業績を低下させている真の要因であるといえる。
 

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ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

 
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