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南充浩 オフィシャルブログ

しまむらの苦戦の理由はこれまで「安さ」以外の価値を作ってこなかったから

2018年10月2日 企業研究 0

このブログで何度か書いたように、予想通り「しまむら」が苦戦している。
2019年2月期第二四半期決算は、
売上高が前年同期比3.0%減の2756億円
営業利益が同40.0%減の143億円
経常利益が同39.5%減の147億円
純利益が同41.6%減の95億円
の減収大幅減益に終わった。また通期見通しも下方修正している。
数字は正直だ。しまむらは2018年2月期よりもさらに苦戦していることは明白である。
各メディアとも大きく報じており、それらの記事を複合すればしまむらの問題点はほぼ浮き彫りとなる。

しまむら、低価格の“勝利の方程式”に綻び 3~8月期の営業利益40%減
https://www.wwdjapan.com/711883
得意とする安さの訴求が裏目に出た。集客を狙って4月上旬には1400店舗達成、5月下旬には65周年記念にちなみ、140円で下着や小物を販売したり、「650円コーデ」を提案したりといった大胆なセールを展開。だが客足は戻らず、収益性を悪化させた。

とある。
しまむらは郊外店が多く、自動車を持たない当方には縁が薄い。このため、しまむらに対して親近感もなにもないのだが、その人間からするとしまむらには「これが欲しい」という商品がない。ユニクロや無印良品にはときどきそれがある。
当方からすると「安い」だけでわざわざ郊外のしまむらまで出かける気にはならない。なら都心にあるユニクロで390円の投げ売り品を買った方がずっとマシである。
ユニクロにはそれがある。例えばユニクロUの新作のアレが欲しいとか、アンダーソンコラボのアレが試してみたいとかそういう商品がある。
無印にも「これが欲しいな」「試してみたいな」という商品がある。例えば昨年買った「疲れにくいスリッポン」だとか「脱げにくいフットカバー」とか。
しかし、しまむらにはそれがない。当方の好みがすべてではないが、そういう「ブランド感」がしまむらには概して低いように感じる。

北島常好・社長は消費の変化に戸惑いをみせる。「従来はびっくりするくらい価格を下げれば客数は2~3割は増えていた。うちの“勝利の方程式”が通用しなくなっている。これは初めての経験だ。安くても不要なものは買わないという選別意識が消費者に芽生えてきている」。

と現社長のコメントが出ているが、こんな消費者の志向は今に始まったことではなく、他のブランドはとっくの昔に影響を受けている。敗戦直後と異なり、現在では多くの人は1年間服を買わなくても済むくらいに服を持っている。服を買うのは「お遊び」に過ぎない。だから500円くらいに値下げしてもバーゲン末期には売れ残っている服が珍しくない。安いからと言って着るか着ないかわからない商品を買うような人は今はいない。
しまむらだけがそこから免れていたに過ぎないと思うのだが、さすがに5800億円くらいの売上高にもなると、そういう「貧乏性」な消費者はあらかた既存顧客になっているだろうし、そこからさらに売上高を拡大するためには新規顧客を大量に掴まねばならないが、そういう志向の消費者は残っていないと見るべきだろう。6000億円、7000億円を目指すなら違う切り口が必要になる。
記事は

「絶対的な安さには執着しない」(北島社長)。安さ以外の新たな販売手法を模索する。

と結んでいるが、すぐには成功はしないだろう。なぜなら、しまむらは今まで「安さ以外」の売り方をしたことがないからだ。そして「しまむら」というブランドも「安さ以外」に付加価値を持っていないからだ。
また東洋経済も

しまむらの客離れ続く!デフレ優等生の誤算
https://toyokeizai.net/articles/-/240596

という記事をあげており、こちらはもう少し多角的に書いている。

特に主力業態「ファッションセンターしまむら」は、京都や大阪など都市部立地の一部店舗で、急速な出店が逆効果となり自社競合も発生。今年度上期の既存店売上高は、前年同期比で6.9%減と大きく落ち込んだ。

とある。しかし、当方は京阪神の都心ど真ん中で店を見たことがない。試しに店舗を検索してみると、当方が愛用する天王寺地区にも「あべの店」があることがわかった。
はて?天王寺駅前で見たことがないが?
と思いながら地図を見てみると、天王寺と平野の中間地点くらいにある。自動車客なら行きやすいだろうが、天王寺駅まで電車で通っている人は駅から歩いて15分くらいかかるので、当然行かない。しまむらは小商圏専門の店を得意としており、それには忠実だといえる。だが、立地的には「都心」に含まれるだろうが、ターミナル駅からの流入はほとんど望めない。そりゃ、「都心店」を出店しても売上高は伸びないわけである。
ほかにも

前2017年度は9期ぶりの減収減益に転落。北島常好社長は業績悪化の要因を「(前年度は)売り場を整理整頓する過程で在庫を絞りすぎてしまった」ためと分析し、アイテム数を拡充する方針を強調していた。だが、ふたを開ければ今年度はさらに苦戦している。

とあるが、好調なユニクロのアイテム数は少ない。アイテム数を増やして売上高が回復するなら、すぐに「新型商品」を投入したがる凡百のそのあたりのアパレル企業の業績はとっくに上向いている。根本的に考え方が間違っているのである。
結局、外野たる当方からすれば、既存のしまむらの仕組みでは5900億円が頂点で、それ以上の売上高を目指すのであれば、別の思想や仕組みが必要となると考えられる。
これまでの長所がいきなり短所になるというのは、企業にも人間にもよくあることで、例えば、

また、同社は頻繁に部門間異動をさせることで知られるが、そうした独特の人事戦略も裏目に出たのか、取引先の間では「(仕入れを担当する)バイヤーもどんどん交代してしまい、最近は素人のような人すらいる。目利き力のある社員が少なくなった」との声も漏れる。

とあるが、これまで好循環を生み出していた人事システムですら局面が変われば、悪循環に陥る例だといえる。
切り札的に開始したZOZOTOWNへの出店も疑問で、効果は限定的だと見られる。
手数料35%ともいわれる高額なZOZOTOWNに出店して採算が合うとはとても見えない。喜んでいるのは数少ないZOZO信者くらいではないのか。「しまむら」という赤いロゴの入ったTシャツを喜んで着ている人が何百人いるのか。もちろん、販促費・広告費と見なすこともできるが、今のしまむらにそんな余裕はないだろう。


というツイートを見てハッとしたが、しまむらは「安さ」を追求してマス化にしかこれまで手を打ってこなかった。ユニクロはデザイナーズコラボ、デザイナーズインビテーションなどコアファン層向けの施策もマス化と並行して行ってきた。その違いが今明確に表れ始めているのではないかと思う。しまむらが「安さ以外」の価値をこれから作り上げるのは並大抵ではない苦労が伴うだろう。
 

NOTEの有料記事もよろしくです。
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

 
この本が発売されたころが懐かしい~

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