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南充浩 オフィシャルブログ

「安売り」と「商品の目利き」しかできないアパレルは生き残れない

2018年10月3日 SNSについて 0

ちょっととりとめのない文章になってしまうかもしれないが。
世の中に洋服のブランドは腐るほどある。中には腐ってしまっているものも珍しくない。一般的に「価格が安いと大衆向け」「安い商品を扱うとブランドステイタスが崩れる」と言われるが、ある程度の買いやすい価格でないと売上高を拡大することは難しい。
激安である必要はないが、普通に働いていれば月に1品や2品買えるくらいの価格でないと、大規模に売ることは難しい。
 
 
そして、安い方が売りやすいというのは事実だが、安くても売れない物もある。
昨日書いた、しまむらの件だ。

しまむらの苦戦の理由はこれまで「安さ」以外の価値を作ってこなかったから

 

例えば、65円に値下げしても売れなかった商品がある。
ちなみに天満のバッタ屋には、今、「2点99円」という服を売っている店がある。まあ、一般人がお目にかかるこれが最低価格ではないかと思う。(笑)

2点99円!


しかし、「2点99円」が飛ぶように売れているかというとちょっと疑問で、それなりに売れているようだが、在庫がすぐさまなくなってしまうほどの売れ行きではない。もうかれこれ1週間以上はやっている。
これらを見てもわかるように安ければ必ず売れるというわけではない。
一方で、そこそこの安値の商品もありながら、ブランドステイタスを保っているブランドもある。
例えば、ナイキやアディダスである。最近のユニクロもそれに近づいているように感じる。
パクリ満載のZARAなんかもそうだといえる。
ナイキやアディダスのブランドステイタスは高いが、ABCマートやSTEPに行けば、2900~3900円でナイキやアディダスのスニーカーが買える。もちろん、安いラインと高いラインが存在するのは知っているが、ナイキやアディダスの品番すべて覚えている人はよほどのマニア以外にはいないから、どれが安いラインでどれが高いラインなのかすべて把握している消費者は少ない。
消費者から見たら、2900円も2万円もすべてナイキである。2900円で投げ売られていてもナイキのブランドステイタスは崩れていない。
 
 
ティファニーだって、何十万円のアクセサリーがイメージされるが、実は3万円くらいのアクセサリーもある。昔懇意にしていたオッサンが不倫していて「女にプレゼントするからそれを買うのに付いてきてほしい」といわれ、めんどくせえなあ、と思いながらティファニーに付いていったことがある。
まあ、当方が一人ではティファニーに入りにくいし、ティファニーを買うカネもない。店内を見る良いチャンスだと思った。それにしても不倫はやめとけよオッサン。
店内に入って商品を見せてもらうと、2万円~3万円くらいのアクセサリーがあって、一般人でも買える商品があるんだなとちょっと驚いた。材質は、無名の同価格のアクセサリーブランドよりは悪かった。
無名ブランドが安いのにプラチナを使っているとすると、ティファニーは銀、というような感じである。
3万円くらいのアクセサリーがあって大衆も買えるレベルなのにティファニーのブランドステイタスは崩れていない。
となると、一概に「安い商品を扱うとブランドステイタスが崩れる」というわけではない。ブランドステイタスを維持できるかどうかは価格以外の部分にあると考えた方が良いだろう。
 
 
しかし、それを考えているアパレル企業は少ない。日本に限らず、アパレル企業の多くは「安くすれば必ず売れる」と思っている。
じゃあ価格以外の要因というのはなんだろうというと昨日引用したツイートをもう一度引用する。
 


 
である。
低価格=マス化
と同時に、コア層向けの施策も必要になるということである。
ナイキやアディダス、ティファニーはそれができているということになる。ユニクロも最近ではそれができ始めているといえる。クリストフ・ルメールのユニクロU、JWアンダーソン、トーマス・マイヤーとのコラボなんかがそれで、古くはジル・サンダー氏との+Jやデザイナーズインビテーションシリーズなどもそれにあたり、ユニクロはなんやかんやと揶揄されながらもこれらの取り組みを10年間続けてきた。
 
関連するツイートをもう一つ引用する。
 


例えば、ユニクロのような取り組みは、それこそROIや「費用対効果(この言葉好きなオッサンとかジジイ多いよね)」では「悪」とされるが、こういう取り組みをしないと、ブランドステイタイスや付加価値は生まれない、もしくは維持できないということであり、ブランドステイタスがなくなったブランドは、いくら安くしてもマスにも売れなくなる。
かといって、無尽蔵にカネを使ってコア戦略をやれば良いというものではないが、この手の取り組みがないブランドはいくら安くしてもマスにも売れなくなる。65円でも売れなかったしまむらがその例だといえる。
 
コア戦略として「芸能人起用」、最近だと「インスタグラマー起用」「インフルエンサー起用」が挙げられるが、まあ、効果は限定的で、各ブランドも似たようなことをやっているため、即効性は薄い。しかもIT系や業界人が思っているほどSNSはエンゲージメントが高くない。やった方が良いが、やったからと言って即効性があるわけでも爆発力があるわけでもないのがSNSである。
SNSのエンゲージメントの低さについては、我らが美・プリンス(美肌以外への美の追求もすさまじい)深地雅也さんの書いたNOTEが参考になる。

「SNSマーケは井の中の蛙」を検証してみた!
https://note.mu/fukaji/n/nb5456e8b0e2e

 
低価格のマス化と、極言すれば採算度外視のコア戦略、この両方をやらないと「ブランドビジネス」は成立しないといえる。
アパレル企業の多くは「安売り名人」と「商品の目利き」しかそろっていないため、今後も苦戦は続くだろう。
今朝の繊研新聞に、不調を受けてしまむらが価格を見直すという記事が掲載されていたが、すでに「十分安い」しまむらがさらに価格をいじってもあまり意味はなく、別の「ブランド施策」が必要とされている。それに気が付かない間はさらに苦戦が続くのではないかと思う。
 

NOTEの有料記事もよろしくです。
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e

 
そういえば、ドン・キホーテの前身もバッタ屋だったねえ

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