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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品業界に数多くある「キャズム」

2018年9月21日 ネット通販 0

衣料品・繊維業界には川上から川下まである。
原料、素材を川上、製造加工を川中、小売店を川下というが、それぞれの段階で知識の断絶が凄まじい。
ちょっとかっこつけてルー大柴かぶれのファッソン業界人かIT業界人的にいうと「キャズム」があるということになる。
各段階で「当たり前」と思われていることが実は他の段階ではまったく当たり前でないことは珍しくない。
当方は一応、川上から川下まで何となく取材した経験があるので、それなりに各段階の話を聞いてもわかることが多いが、それでも知らなかったことは山ほどある。逆に当方が「当たり前」と思っていることが実は当たり前でないと指摘されて驚くことも多くある。
昨日は、オリジナルのブルーで染めたデニム生地を製造してもらうには、最低でも5000メートルの糸を染める必要があるということを書いたが、実はこのことを知らない人がデニム業界にも多くいる。
リーバイスやエドウイン、ビッグジョンなどの専業メーカーOBならご存知だが、そういうブランドではなく、ファッションに寄ったブランドに属していた人はあまりそのことを知らない。たとえそれがジーンズ類をメイン商材とするブランドであってもだ。
また、デニム生地の重さを表すオンスという単位がある。
ボクシングのグローブもオンスで表す。Tシャツの生地の厚さもオンスで表す。
数字が大きければ大きいほど重くて厚いということになる。
オンスという単位は1平方ヤード面積あたりの重さが基準で決められている。
1ヤードというのは1メートルよりも少し短い。
「グローバルスタンダードガー」という割にはアメリカという国は特殊な度量衡を使用しており、グローバルスタンドではない。
ヤードとか華氏温度とか特殊な単位を使っている。
それは置いておいて、1平方ヤードであることを知らない人が業界にも多いので、狡すっからい生地屋は1平方メートルあたりの重さを「オンス」として提示することがある。
1平方ヤードより少し広い面積あたりの重さなので、当然、オンス数が大きくても生地はそれよりも薄くて軽いことになる。
生地メーカーはその分、使用する綿花料を減らせるというわけである。
知識のないブランド側はまんまと騙されている。
キャズムの例でいえば、最近注目が集まっているウェブ関連に対しても大きな断絶がある。
ウェブ業者とそれ以外の繊維業者ではウェブに関する知識量がまったく違う。
月とスッポンほど違う。
誠実で良心的なウェブ業者も数多くあるが、繊維業者の知識が浅いのを良いことに、専門業者なら噴飯ものの浅いウェブの知識でもっともらしく指導するコンサルも多く、それに騙されて損失を拡大している繊維の製造加工業者も多い。
例えば、情報発信のツールとしてのウェブとしてはSNSがある。
主なものを挙げてみると
ブログ
ツイッター
フェイスブック
インスタグラム
Line
くらいだろうか。
最近だと
Tiktok
もある。
しかし、一口にSNSで拡散と言ったところで、使用者数はもとより使用者層がまったく異なる。
その特性を知らなければ、いくら毎日良質の情報を発信しようが自社がリーチしたい層にはまったく届かない。
ちゃんとした読み物として届けて、記録としても保管したいのならブログだし、オッサン層に届けたいならフェイスブックである。
日本でもっとも幅広い層に使われているのはツイッターだし、若年層男性と女性全般に届けたいならインスタグラムである。
老人層でも使っているのはLineだからLineのタイムラインに情報を流すというのも有効な手段である。
そのような大まかな特性だけでも把握しないことには、アホなイカサマコンサルに騙されるだけである。
例えば、30代・40代男性に向かって情報を発信したいのに、インスタグラムに集中していてはあまり意味がない。
老人層に届けたいのにツイッターを熱心にやっていても意味はなく、Lineかフェイスブックに集中すべきということになる。
そして、何よりも重要なのはウェブは拙速でも良いから始めることの方が重要になる。
使いながらやり慣れて軌道修正すれば良いだけのことで、全体を見極めるまでじっくり調べるなんて言っていたら、一生始めることはできない。
なぜなら、ウェブの使い方は毎日変わるとまでは行かなくても、1年経てば大きく変わるからだ。
見極めて調べている間に潮流は代わる。
2010年頃にあれほど持て囃された動画中継サービスのUstreamはあっさりと廃止されてしまった。
2005年頃に我が国でブームだったミクシィも同様で、今ではオンラインゲームの方がメインになっている。
未だにマイミクとかミク友なんて言ってる人はほとんどいない。
先日、ある展示会で旧知の年配のコンサルタントの方にお会いしたが「ネットのことはもうちょっと調べて吟味してから始めるべき」なんて指導を製造工場にして呆気にとられた。
まあ、見極めて吟味している間に好機は逃すだろうし、その時になればまた別の潮流に変わっているだろうから、その知識は無駄になってしまうだろう。
このようにいたるところにキャズムがあるのが、繊維・衣料品業界である。
まあ、どの業界も同じかもしれないが、それをある程度俯瞰して把握している人材があまりにも少なすぎる。
これが繊維・衣料品業界が苦戦し続ける理由の一つといえる。
 

NOTEもよろしく~
https://note.mu/minami_mitsuhiro
 

イカサマコンサルが次に使うのはこのジャンルだろうな~

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