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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロの過剰表現が鼻に付く

2011年9月16日 未分類 0

 販促のセミナーとか広報・プレスリリースのセミナーを受講すれば「良い印象を持たれるように説明文を書きなさい」と教えられる。そのことは誠に正論であり、合成皮革という素材を「本革に似せたニセモノです」と説明するよりも「本革よりもお手入れが簡単です」とか「本革と違って雨に濡れても大丈夫です」とプラス面を強調するほうが良い。

 知り合いのデザイナーが数年前に、見た目が絹とそっくりなポリエステル生地でコートを製造したことがある。
絹のコートなら59000円くらいになるが、彼の作ったコートは29000円に価格を抑えることができた。何分、小規模デザイナーなのでこの価格だが、もしも大ロットで作れば19000円とか9800円くらいにまで価格を下げることができただろうと推測される。

さて、絹をポリエステルで代替する理由として、「そっちの方が生地の値段が安いからですわ。コストダウンです」と説明したら、正直者ではあるが販促や広報の観点から言えば失格である。
ちなみに筆者はそういう正直者が大好きであるが。
彼は元来正直者なのだが、さすがに20年以上もキャリアを積むと、多少なりとも上手な説明ができるようになっている。
彼は「絹よりもポリエステルの方がお手入れが楽ですよ。ムシに喰われることもありません」「シワになりにくく水に濡れても大丈夫です」「絹だと通常洗濯は難しいですが、ポリエステルなのでお洗濯も可能です」とプラス面を強調するように説明したところ、その商品を完売することができた。

ことほど左様にプラス面を強調することは、販促や広報の観点からすれば重要なことである。

これらのことが十分理解できているつもりだが、最近のユニクロの販促コピーは過剰表示スレスレではないかと感じる。

まず、先日発表があった「究極の服」であるが、何を持って「究極」と打ち出しているのかさっぱりわからない。
価格なのか、デザインなのか、素材なのか、シルエットなのか、縫製なのか、機能なのか。
9月23日に店頭に並ぶそうなので、店頭で商品を手にすれば何か分かるかもしれないが、現在、メルマガで送られてきた写真を見ただけでは、「見た目だけモードを気取ったダサい服」としか感じられない。

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(これが究極の服  笑)

だいたい「究極」という冠が付いたもので「ウワッ スゲー」と驚いたためしがない。
よく、アニメや特撮で「究極の○○」が登場するが、「究極」という語感からインスピレーションされるものに対して、現実に提示される事象は限りなくショボく感じられる。もしくは、内容がさっぱりわからないという事態に陥る。

「仮面ライダークウガ」の後半のキーワードが「究極の闇」だったが、どれほど恐ろしい空間環境なのかは画面を見ていてもさっぱり伝わらなかった。
「北斗の拳」では究極奥義「無想転生」が、宿敵ラオウとの最後の戦いでお目見えするのだが、誌面を見る限り「分かったような分からないような」奥義であった。
また「Zガンダム」は当初「究極のガンダム」というキャッチコピーだったが、翌年あっさりとその続編「ガンダムZZ(ダブルゼータ)」が始まってしまい、機体性能もZZガンダムの方が上だったため、いつの間にか「究極のガンダム」という触れ込みはなかったことにされてしまった。

「究極」と冠が付くと、名前負けしてしまうのが相場であるらしい。
「究極の服」にも同様の匂いを感じる。

また今秋冬物として、店頭に並んでいる「ウォームイージーパンツ」なる商品のキャッチコピーにも首を傾げさせられる。この商品は表地がスポーツウエアで見られるようなポリエステル布帛素材であり、裏にフリースが貼られているもので、フリースの欠点である風通しの良さをポリエステル布帛で防いでいる。

店頭POPのキャッチコピーで「はくフリース、という新発想。」と書かれているのだが、フリース使いのウォームパンツは何も今秋冬に初めてユニクロが開発したわけでも何でもなく、10年くらい前から存在している。もちろんその当時のユニクロでも販売されていたし、それ以外の量販店や安物チェーン店でも販売されていた。
我が家の中2の次男は、小学生のころからフリースパンツを冬場に愛用している。

今更、何が「新発想」なのだろうか?

10年近く前からある商品に対して、今更「新発想」とは過大表現ではないだろうか?

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(疑問を感じるPOP)

刺激的なコピーを付けた方が消費者の目を引き付けやすい。
しかし、事実ではないことを喧伝するのは商道徳として正しいとは思えない。
商売である以上、「売ること」は大切だが「売らんがため」なら何をしても良いと考えるのは筋違いである。
そんな手段で国内売上高1兆円・全世界売上高5兆円を達成したところで、到底、ユニクロと柳井正会長を称賛する気にはなれない。

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