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南充浩 オフィシャルブログ

大丸梅田店を冷笑していたライバル店こそ見識が低い

2011年9月20日 未分類 0

 大阪・梅田の百貨店で最も好調なのが大丸梅田店である。
その好調ぶりが先日、産経新聞に掲載されたので改めて紹介したい。

「大丸梅田店は大阪百貨店戦争の勝ち組?! 絶好調の理由は…」
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110918/biz11091818010004-n1.htm

大丸梅田店(大阪市北区)の快進撃が続いている。昭和58年のオープン以来、最大規模となる改装を今春実施し、売り場面積を改装前の約1・6倍にあたる6万4千平方メートルに広げた。4月19日のグランドオープンから4カ月間(8月19日まで)の売上高が前年同期比75%増に達し、8月単月では前年同月比89%増と過去最高を記録した。

という。
面積が60%増になっているのだから、売上高が増えても当然という考え方も成り立つが、広い面積の店舗が必ずしも売れているというわけではないから、オープン景気もあるとはいえ、前年比75%増は好調と断じても差し支えないだろう。
また、夏枯れで数字の伸びない8月にも、倍増近い前年比89%増と売り上げを拡大している部分は特筆すべきである。

産経新聞は、好調の要因として

大丸梅田店は、今回の大改装で、人気キャラクターグッズの「ポケモンセンター」とミニカー玩具の「トミカショップ」、生活雑貨「東急ハンズ」、カジュアル衣料「ユニクロ」などをテナントとして誘致した。

 首都圏では、高級ブランドの路面店オープンのあおりを受け、百貨店からの撤退が相次ぎ、空いた空間をさまざまなテナントが埋めているケースが目立つ。大丸梅田店の動きについて「あれは百貨店ではない」(ライバル店)といった冷ややかな声もあった。しかし、ふたを開けてみれば、来店客数と売上高の増加に貢献している。

 もともと大丸梅田店はJR大阪駅周辺で働く30歳代前後の女性を主力購買層に置いていた。増床で従来の百貨店にはなかったテナントが入ったことで、客層が広がり、売り場の担当者は「今では家族連れや年齢層の高い人の姿もよく見られるようになった」と話す。

とする。

今年3月17日のこのブログでも指摘させていただいたが、
「ポケモンセンター」「トミカショップ」「ユニクロ」「東急ハンズ」の導入が客数を牽引している。
http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/2424110.html

百貨店の凋落の原因の一つとして「高価格帯の婦人服に特化しすぎた」ことが挙げられる。
昔、百貨店が隆盛を誇った高度経済成長期には、家電売り場があり、おもちゃ売り場があり、最上階には遊園地と家族で楽しめる大食堂があった。
これによって、若い子連れ夫婦からお年寄りまで幅広い客層を取り込むことができた。
実際に、筆者は体験していないが、子供の頃、百貨店の大食堂に家族で行くのが楽しみだったと語る方々は多い。また、筆者自身も子供の頃、百貨店の屋上遊園地で何度か遊んだことを記憶している。

それが、バブル期から効率的な売り場作りを追求しすぎて、もっとも単価が高く、楽に売れる高級婦人服への集中度を過剰に高めた。これが現在に続く百貨店凋落の原因である。
百貨店は、そのころから「ファッションに興味があって、高い値段の服が欲しい、40代までの女性」しか行かない商業施設となった。自ら顧客層を絞り込みすぎたと言える。
その結果、百貨店に行きたがる子供や男性はめっきり減少した。もちろん、お年寄りも減少した。

今回の大丸梅田の取り組みは、お年寄りは別としても子供と男性を百貨店に呼び戻すという目的を達成している。

「ポケモンセンター」「トミカショップ」=子供
「東急ハンズ」=男性

がターゲットである。

このテナントがあることによって、20代後半~30代前半の子連れの若いお母さん層も来店しやすくなる。
通常の「レディースウエアしかない百貨店」に子連れで出かける場合、たいてい、子供が同行することを嫌がる。
なぜなら、百貨店に行っても退屈だからだ。
屋上遊園地はない、おもちゃ売り場はない。ゲームセンターもない。
だから、子連れの主婦層は郊外型のショッピングセンターに行くことになる。

しかし、「ポケモンセンター」「トミカショップ」が大丸梅田店にあることで、子連れで来店しても、子供が退屈しないで済む。また夫を同行させても、夫も「東急ハンズ」で時間を潰すことができる。
従来型の百貨店だと、夫は休憩スペースのベンチに座ってジュースでも飲んでいるのが、精一杯の時間つぶしである。

大丸梅田店のテナント導入は論理的で合理的である。

文中にあるように「あれは百貨店ではない」などと寝ぼけたことを言っているから、ライバル店はダメなのである。
だいたいにして、高級な婦人服を欲しいと思う消費者がどれだけ存在すると考えているのだろうか?
梅田地区に絞って考えると、阪急、阪神、大丸、伊勢丹と4つの百貨店がある。
「高級婦人服が欲しい」と考える消費者は、4つの百貨店すべてで買い物するはずがない。どれか1つ、せいぜい2つまでである。

そして、ユニクロの登場以来、低価格ブランド各社の「品質」も向上している。
これは「物性面」だけの品質ではなく、店頭での見せ方、ブランドとしての宣伝手法、洋服のデザインすべてをひっくるめたものである。明らかにバブル期の「安物」ブランドとは異なる。
消費者は、百貨店だけで洋服を買う必要がない。
極言すれば、百貨店で服を買う必要がない。

大丸梅田店を冷笑していたライバル店の思考は明らかにバブル期で停滞してしまっている。
安物売り場にもバブル期で思考が停滞している幹部を見かけるが、百貨店にもバブル期で思考が停滞している従業員が多い。

今後、大丸梅田店の売り上げがどのように変化するのかは注目が必要だが、
「ヤングから40代ミセスまでの高級婦人服ブランドをそろえるのが百貨店」という考えが変えられない百貨店は、今後、間違いなく滅び去るだろう。

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