明確な成功モデルが無くなったアパレル業界
2016年1月28日 考察 0
昨日からこのブログのURLが変わった。
開設5年強にしてやっと独自ドメインを取得した。
である。
なぜ独自ドメインにしていなかったかというと、一番大きい理由は「めんどくさかった」からだが、いろいろな方にご指摘いただき、やっと重い腰を上げた。
これからもよろしくお願いします。
ちょっと昨日の続きみたいな内容になるが、昨年あたりからアパレル業界全体の手詰まり感が強まっていると感じる。
分かりやすい打開策が見当たらないアパレル業界の不況感
http://minamimitsuhiro.info/archives/4572161.html
70年代とか80年代のファッションビジネスは体験していないので論評を避けるが、90年代以降を見てみると、
97年に北海道拓殖銀行と山一証券が倒産して、一気に不況感が押し寄せた。
もちろん、この時も消費は低迷した。
その前後でダイエー、マイカル、そごうが倒産した。
アパレル業界でも連鎖倒産が相次いだ。
信和シャツの倒産は貸し倒れによる連鎖倒産だと報道された。
しかし、オンワード樫山、ワールド、サンエーインターナショナル、東京スタイル、三陽商会あたりの大手アパレルは堅調ないし好調だったし、98年ごろからユニクロブームが始まる。
業界には分かりやすい成功モデルがあったということである。
1つはユニクロ的な徹底した低価格品の提供である。
これ以降、各社は血眼になって低価格品の開発を進める。
個人的に印象的だったのはワールドがデザイナー田山淳朗氏と提携した「オゾック」「インディヴィ」というブランドを発表したことと、その商品デザインの先進性だった。
今の「オゾック」も「インディヴィ」も商品デザインも店作りも没個性の埋没したブランドだが、この当時はまったく違っていた。
ちょうどこのころ、「最後のデザイナーズブランドブーム」も起きていた。
これはこれで業界にとってはもう一つの分かりやすい成功事例だったといえる。
さて、このあと業界ではデザイナーズブランドブームは終焉し、ユニクロの急成長を迎える。
そのため、各社ともに低価格品の開発が一層進む。
次に景気が悪化したのは2008年のリーマン・ショックである。
もちろん、各社ともに業績は悪化したが、ちょうどこの年にグローバルファストファッションブランドが上陸しており、ここから4年か5年くらいはファストファッションブームが起きる。
低価格+トレンドというのが今度は業界的な成功モデルと見なされるようになる。
現に各社ともそういうブランドを急ピッチで開発した。
今年、会社清算される遊心クリエイションの「イーブス」もその一つである。
アーバンリサーチだと「センスオブプレイス」はそういうブランドだ。
古着屋出身のウィゴーも完全にこちらにシフトした。
この分野には一定の需要があるから、今後も絶滅することはないだろう。
安くてそこそこにトレンドがある商品というのは使いやすい。
一部の偏執的ファッショニスタは毛嫌いしているが、それはあくまでも少数派である。
大多数の人から見たらこれほど使いやすい商品はない。
利便性がある商品はその価値を正しく伝えることができれば多数から支持される。
余談だが、量販店やホームセンターを主導した渥美俊一さんという人のペガサスセミナーでは「トレンド品は低価格で売る」というのが基本的な考え方だった。
なぜなら商品寿命が短いからである。
トレンドはいつかは終わる。
終わってしまえばトレンド衣料品は着用できない。
ならそんな寿命の短い物は低価格で売るべきだというのがその主張だ。
渥美さんと面識はないが、最初に就職した会社でこの人の本を読まされた。
その会社の社長がセミナーに入会していたからだ。
この考えは、今のファストファッションブランドに採用されているといえる。
さて、それはさておき。
ファストファッションブームも沈静化した。
沈静化したというより定着化したというべきで、その分野が今後も大きな成長を続けられるとは考えにくい。
2010年を越えたころからインターネット通販への注目が高まる。
もちろんそれ以前からも存在したが、このあたりから腰が重かった大手各社も参入し始める。
しかし、2016年現在はどうか。
楽天だけで4万店の出店があり、Yahooは34万店、このほかにアマゾンやらZOZOTAWNやらの大手モールが犇めいている。
当然、各ブランドの直営サイトもある。
単にネット通販というだけではとてもじゃないが埋没してしまう。
その結果、ネット通販ブランドの苦戦、破綻というもの珍しくない。
夢展望の連続赤字、ogage japanのトライシクルジャパンの倒産、をはじめとして枚挙にいとまがない。
ビッダーズなんてどうなったのか最近では名前すら聞かない。
また今月末で全店閉鎖になるジーンズカジュアルショップ「デンバー」だって楽天とYahooに出店していたし、各店舗がブログで情報発信をしていた。
デンバーの事例を見ると、ネット通販やネットでの情報発信をしていても売り方・やり方を工夫しないとあまり効果がないということがわかる。
となって、2016年現在、業界がこぞって参考にできるような成功事例がない。
「アホみたいな高額商品」とか「自己満足っぽいこだわり商品」がダメなことは各社が身を以てすでに体験している。
そういう意味ではアパレル業界はこれから大変である。
各社が独自の成功モデルを模索しなくてはならないからだ。
それが何かというのは、各社の得意分野、配置している人材、経営者の思考、で大きく異なる。
もちろん作ることは重要だが、売り方・売ることも重要になる。
「単に安くした」とか「単にネット通販を開始した」だけでは売れないことは去年までで証明されている。
飲食店・カフェ併設とかライフスタイル提案も掃いて捨てるほどある。
カフェがあるからあの服屋に行こうなんて人はほとんどいない。
ちょろっとバッグや雑貨を並べただけのライフスタイル提案型ショップなんて意味が分からない。
これからは各社が自社の強みを見極めつつ、手探り状態で、自社に適した成功モデルを探さねばならない。
それしか方策は残されていない。
これはなかなか大変な状況であり、筆者がそんな立場に置かれたら真っ先に逃げ出してしまう。
しかし、それ故にもしかしたら、独自性の高いブランド、企業も生まれるのではないかと思う。
かなり確率は低いだろうけど。