需要が減少した分野の製造工場が生き残るためには「売れそうな物」を作るほかない
2026年3月25日 製造加工業 1
生活様式の変化や快適性の向上などの理由でこれまでの製品が売れなくなるということが起きる。
売る側も困るわけだが、製造加工業者はもっと困るわけである。
売る側は取扱商品を変えれば何とかなる場合が多い。しかし、国内の製造加工業者は専門的に特化していることが多いので、今更全然違う物を作ることはできにくい場合が多い。
その一例が、メンズビジネス革靴だろう。
何度も書いているが、冠婚葬祭や式典がある限り需要はゼロにはならない。しかし、ビジネスファッションのカジュアル化によってスニーカーや革靴調スニーカーの着用者は確実に増加している、
消費者とすれば、規制されていないのであれば楽なスニーカーを好んで着用するのは極めて当然のことで、わざわざしんどい物を進んで着用したいマゾ気質の人はそんなに多くない。
靴屋とすれば、対応するのは比較的に簡単で、メンズビジネス革靴の取扱量を減らしてスニーカー類の取扱量を増やせば何とかなる。まあ、あとは販促とか広告宣伝とかそちらの手腕が問われるわけだが。
しかし、製造業者はそうはいかない。革靴工場とスニーカー工場は同じ靴というアイテムを製造しているが、必要な機械や技法、技術は全く異なる。
これは衣料品や生地も同様で、Tシャツ工場とジーンズ工場は全くの別物だし、ニット生地工場とシャツ生地工場は全くの別物である。
メンズビジネス革靴「リーガル」ブランドでお馴染みのリーガルコーポレーションは、革靴需要の低迷による経営悪化のために、製造工場の一つの閉鎖を発表した。
売れない物、売れにくい物を延々と作り続けるわけにはいかないので経営的には当然の措置である。
その一方で、高いスキルを持った革靴工場を閉鎖して良いのか?という議論もある。これはこれでその通りで、技術が失われるのは一瞬である。
これは革靴のみならず、すべての分野で共通したジレンマといえる。もちろん繊維業界にも。
話しは逸れるが、石破政権末期にアメリカから80兆円の投資を求められ、それに妥結したことがあった。同時に55兆円投資を求められた韓国はいまだに妥結できずにまごついている。
これを「カツアゲ」かのように報じているメディアが多いが、実はアメリカとしては「造船」の技術移転や提携を日本と韓国に求めている部分もある。
第二次大戦当時は造船大国だったアメリカだが、現在、造船技術はすっかり失われていると指摘されている。アメリカ経済を支えているのは、金融とAIを含むIT産業、それから農業である。農業は国策として保護されているので横に置いておいて、経済分野においては効率化を優先した結果、最も儲かりやすい金融とITにいつの間にか収れんして行ったというわけで、非効率的な造船技術は失われてしまった。
民間企業の経営効率の観点からすれば当然の選択である。
アメリカの造船のようなことはどの国でもどの分野でも容易に起きる。
だからと言って、製造業者をゼロにするのが国として社会として正しいのかという意見もある。当方も同様でゼロにするのは問題があると思っていて、細々とでも製造業が続くような取り組みは必要不可欠だろう。
細々と作り続けるためにはどうすべきかとなると様々な意見がある。もちろんどれが正解なのかはやってみないとわからない。
個人的には「その工場の技術を使って売れそうな物に合わせて作る」という自衛策しかないのではないかと思っている。
メンズビジネス革靴に対して同様の意見を述べておられるのが、シューフィッター佐藤靖青氏で、自身のブログでこう述べられている。
2259 革靴が消える国は、強くなれない。 – シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ
個人的に心配してるのが
たとえば自国の軍隊の靴が
自国で生産できなくなったら終わるということ。
今の自衛隊の靴は100%国産です。
リーガルもオーツカもマドラスも
かつては大日本帝国の陸軍・海軍の
足元をきっちり守ってたんですが今こう。
(中略)
革靴が売れない時代なら
売れないなりの革靴を作ればいい。
プライドを捨ててスポーツメーカーと
1秒でも早く組めばいいんですよ。
とのことで、税金を投入して保護する以外なら方策はこれしかないだろう。革靴業界はスニーカーブランドと組んで、国内市場規模が過去最高に達しているスニーカー市場で売れそうな革靴+スニーカーのミックスモデルを発売してみてはどうかと思う。
「本物ノ」とか「伝統ガー」とか叫んでも、快適さに慣れた消費者は従来型のメンズビジネス革靴には戻らない。戻らないならその層に売れそうな感じの商材を開発するほかない。
これは衣料品でも同様だと当方は感じていて、快適性や高機能性に慣れた消費者は「本物の」とか「伝統が」の商材にはほとんど戻らない。だったら、快適性や高機能性の衣料品を製造すれば良いのではないかと思う。
もちろん、少数のコアなファン層は存続し続けるだろうからそういう層に向けて少数の「本物の」「伝統が」の商材を提供し続ければよいわけで、経営の屋台骨は今の消費者に受け入れられそうな商材を作ることで支えるほかないだろう。
逆に「本物の」「伝統が」の商品を今のマス層に広めようとすることはほとんど効果が無いだろう。業界がキャンペーンをしたが本物の着物がマス層に広まっただろうか。この論争を観始めて15年くらいが経過しているが着物の市場規模は拡大していない。ビジネススーツも同様だし、革靴も同様だろう。
なかなか難しい問題ではあるが、国の保護に頼らずに工場が生き残るのはこの方策しかないのではないかと思う。
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自衛隊に1990年代にいて、去年まで予備自衛官もやってましたが、自衛隊のブーツはあんまり良くないですw
今はミ◯リ安全がたぶん全部作ってると思いますが、結構なテスト期間を経ていたのにショボい出来で、何回か細かく変わったりしてました。昔のやつはクソ固い豚革で新品は必ず靴擦れが出来る酷いブーツでした。後輩は靴墨付けすぎたのか、1ヶ月弱の長期の演習中にゴム製のソールが完全に剥がれてしまってました(今のブーツもソールは接着)。
PKOなんかでは、自衛隊のブーツじゃダメだと、アメリカのダナー社製のちゃんとしたブーツが支給されたりもしてました。