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南充浩 オフィシャルブログ

量産化できないと工業製品ビジネスは成立しないという話

2026年3月26日 経営破綻 0

昨日、スパイバーの私的整理が報道された。

実質経営破綻である。スパイバーの経営危機はここ数年毎年報道されていたからこうなることは予想通りである。

巨額な負債が報道され続けていたことに加えて、販売先がほとんど報道されたことが無いことも合わせて考えると設備などに巨額投資を続けていた反面、ほとんど売れていなかったと考えられるから経営が破綻するのは当たり前といえる。

 

 

そんなスパイバーの解説記事としてはこの記事が非常によくまとめられている。

【解説】私的整理のスパイバー、「これまでとこれから」

人工タンパク質素材の開発で世界をリードしてきたスタートアップ企業のスパイバーが、新たな局面を迎える。孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長の長女である川名麻耶氏が設立した新会社に、設備や知的財産、人員を譲渡する。スパイバーはこれまで投融資で1000億円以上を調達しており、私的整理により巨額の金融負債を整理することで、事業再建を加速する。一方、創業者である関山和秀社長と菅原潤一取締役の2人は、新会社の経営陣に加わらないと見られる。川名氏主導で、夢の繊維である「人工タンパク質繊維」の未来を担う。今後どうなるのか。

 

手短にまとめるとそういうことである。

 

 

 

スパイバーという名前は随分と前から聞き覚えがある。2007年に設立というからそれもそのはずである。しかし、19年も経過しているのに実用化されていないというのは、現時点での科学技術水準ではほぼ実現不可能ということになる。

今後、もっと時間をかければ実現できる可能性はあるだろうが、事業として運営している以上は赤字垂れ流しでは存続ができない。研究室なら話は変わるが。

 

 

経営危機が表面化したのは、「事業価値証券化」で調達した400億円という巨額融資の返済期限が迫っていたためだ。2020〜21年10月にかけて調達したこの資金は、米国に新設した人工タンパク質の原料工場の建設に投じた。米国工場は、2大穀物メジャーの一つであるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(以下、ADM)と共同で進めており、米ADMからは100億円の出資も受けていたものの、コロナ禍やインフレに伴う建設費の高騰で予算が超過。結果的に建設計画は大幅な縮小を強いられた。

とあるが、コロナ以降のインフレで計画変更を余儀なくされたのは何もスパイバーだけではない。不幸な事故ではあるが、それは天災と同様に他にも等しく降りかかっている。

 

 

 

このスパイバーはクールジャパン機構からも140億円出資を受けており、今回の破綻でクールジャパン機構の存在すら危うくなる可能性が極めて高い。

東洋経済オンラインには以下の記事も掲載されている。

ついに尽きるクールジャパン機構の命運、スパイバーの業績不振がトドメ/3度目の計画未達で「廃止」「統合」を検討へ | ニュース・リポート | 東洋経済オンライン

 

累積損失383億円を抱える官民ファンド「クールジャパン機構」が、損失を大幅に膨らませる危機に直面しており、いよいよ存亡の淵に立たされている。

クールジャパン機構の正式名称は「海外需要開拓支援機構」。日本の文化や技術といった「クールな魅力」を産業化させようと、リスクマネーを供給する官民ファンドとして2013年11月に発足した。

しかしこれといった実績は上げられず、過大経費と投資の失敗によって巨額の累損が積み上がっている。

 

とのことで、たしかに成功した事例はほとんど耳にしたことがない。強いて挙げれば初期事案のラーメン店「一蘭」くらいだろうか。それ以外は東南アジアへの百貨店進出から何からほとんどが失敗に終わっている。

 

 

 

この解説記事でも触れられているように、生成自体はある程度成功していたものの、量産化には成功しておらず、それゆえにスケールできなかった(大規模化できなかった)ことが破綻の最大の原因といえる。

工業製品としてビジネスを成立させるのであればある程度の量産化に成功しないと意味は無い。

アパレルに比べて実用化に時間はかかるものの、アパレルほど量を求められないメディカルや添加剤などの分野であれば、オーダーメード型の部材や原料としてのポテンシャルは今なお高い。

とあるが、それならそれで、メディカルや添加剤での量産化をもっと積極的に進めるべきだっただろうし、ほんとうにそれらの分野での使用量なら量産化できていたのだろうか、という疑問も残る。

 

 

経営権は孫正義氏の長女の川名氏に引き継がれるとのことだが、正直存続できるのかと個人的には疑問視している。

それはこの解説記事も同様で

現時点で、川名氏の率いる新生スパイバーの経営体制は明らかになっていないが、創業者である関山氏と菅原氏が新会社の経営陣に加わらないと見られる。ただ、大学発のベンチャーであるスパイバーは、創業直後からの古参メンバーや中枢スタッフの多くが、2人の創業者と深いつながりを持つ。2人の離脱が新生スパイバーにどのような影響を与えるかは未知数だ。

とある。

当方も同じ見方をしている。そもそも研究者二人が創業した会社で、量産化から生成からほとんどの工程は創業研究者2人のノウハウで成り立っていたはずである。その2人が抜けて、科学面での経歴がド素人の川名氏が経営のタクトを振るったとて、前任の2人以上に的確な指示・判断ができるとは到底思えない。

 

個人的には、川名氏が主導して、そのまま会社の清算手続きへ移行する可能性が極めて高いのではないかと推測している。

夢の繊維のポテンシャルは理解できるが、もう少し堅実な投資で事業を進めるべきだったのではないかと思っている。

 

 

 

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