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南充浩 オフィシャルブログ

大手企業の国内繊維産地へのクローズアップは20年遅かったという話

2026年1月20日 産地 0

国内の繊維産地企業はなんやかんや言われながら毎年着実に減っている。

例えば、昨年12月、要するに先月の倒産統計繊維版はこのようにまとめられている。

2025年12月 倒産統計繊維版 – 信用交換所

2025年(令和7年)12月全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は31件で、前月比は同件、前年同月比では2件(6.9%)増となった。
負債総額は182億800万円で、前月比では120億6200万円(196.3%)増、前年同月比では137億500万円(304.4%)の増となった。
負債額10億円以上の倒産は、マツオインターナショナル㈱(東京都渋谷区、婦人服製造小売、負債額76億8200万円)、松尾産業㈱(実質本社:大阪市中央区、婦人服地ほか卸、負債額34億3000万円)、ドッグ繊維㈱(和歌山市、婦人丸編ニットウエア製造、負債額23億円)、神繊興業㈱(兵庫県豊岡市、撚糸加工、負債額11億円)の4社、5億円以上は3社が発生した。

 

とのことで、一般消費者認知度はそれほど高くはないと思われるマツオインターナショナルは大々的に報道されたものの、ドッグ繊維と神繊興業はほとんど報道されていない。

 

ドッグ繊維は和歌山に拠点を置くニットメーカーで、神繊興業は豊岡市の撚糸加工業者である。

この手の国内繊維製造加工業者は今後減ることはあっても増えることはほとんど考えられない。今のご時世に倒産・廃業する繊維工場はあっても、新たに繊維工場を始めるという物好き・酔狂はほぼ存在しないからである。

以前にも書いたが、現場の職人や従業員の後継者難はたびたびクローズアップされるが、工場経営者の後継難は報道されないものの深刻である。

 

 

今の工場経営者はだいたいが40代~60代半ばくらいで、2代目・3代目・4代目になっているが、20~30年後に次世代が工場経営者を継ぐとは限っていない。実際に知り合いの工場経営者でも子息・子女は全く別の業界で就業していることも珍しくない。子息・子女が20~30年後、脂ののり切った40代・50代に差し掛かったときに、それまでの充実したキャリアを捨てて実家工場をわざわざ継ぐとは思えない。

 

 

さて、その一方で、メディアや著名なアパレル企業、有名セレクトショップなどは国内繊維産地企業との協業が少なからずクローズアップする。

例えば、直近の一例でいうとこの記事内容。

《もう少し知りたい》「ビームスプラス」が〝ニットの五泉〟と取り組む狙いは? | 繊研新聞

 

ビームスのメンズカジュアル「ビームスプラス」とニット産地で知られる新潟県五泉市のニッターの活動が勢いづいている。ビームスプラスが販売員研修の一環として24年から実施している五泉市での工場見学や交流が発展し、昨年は地元の高校での講義やイベントに取り組みを広げた。衰退に向かう日本の物作りへの危機感が双方を結び生まれた活動。産地に新たな風穴を開けようとしている。

 

とのことである。

別にこの記事の内容自体が悪いわけではない。新潟の五泉地区のニット工場とビームスプラスが一昨年から活動をしているというだけのことである。

この活動自体はビームスプラスのスタッフのニットに対する知識の向上にもつながるので良いことだとは思うが、いかんせん20年遅かったと言わざるを得ない。

別にビームスだけが悪いわけではない。他の有力アパレル企業、有力セレクトショップも同罪である。

 

 

20年前というと2006年になるが、この頃、有名アパレル企業や有名セレクトショップがある程度は注目していた国内産地は、三備地区のデニムくらいだっただろう。

90年代半ば以降のビンテージジーンズブームによって、デニム産地はそれなりに注目を集め、知名度を高めた。

 

だから、当時、取材対象だったチャらっとしたアパレル企業人もセレクトショップスタッフも三備地区のデニムについては饒舌にコメントをしてくれたし、それなりの興味は持っているような姿勢だった。だが、他の繊維産地に関しては「知らない」「興味が無い」という者がほとんどだったと感じる。

もちろん、一部の国内デザイナーズブランドや物作り系小規模ブランドは産地との取り組みがあったが、メディアへの露出はネームバリューが無いためほとんど無く、効果としては限定的だったと言わざるを得ない。何せ、メディアへの露出も少なければ、彼らのロット数も少なかったため、当然工場を潤すほどの発注量にはならなかったからだ。

 

 

せめて、この時期に大手各社が国内繊維製造加工業者に今くらいの注目をしていれば、もう少し減少速度は緩やかだったのではないかと思えてくる。

大手各社が国内産地に強く注目するようになったのは早くても2010年代半ば以降である。

 

毎年、国内生産比率統計は減少し続け、希少性が出てきたことが大きいだろう。それに加えて、大手各社がこれまで得意としてきたトレンド提案、人気タレント起用という販促プロモーションが効果を発揮しにくくなったことも大きいのではないかと思っている。

今現在、顕著になっているが、消費者の衣料品支出を優先しない姿勢がこの頃から表面化しつつあったのではないだろうか。

 

さらに言えば、この頃から「ストーリー」を強調する販促手法が強く謳われ出した。このため、「国内〇〇工場で職人が手掛けた××」という具合にストーリー背景として利用しやすかったということも大いにあっただろう。

 

もちろん、注目されないよりはされた方が良いし、やらないよりはやった方が良いということは間違いない。ただ、繰り返すが20年遅かった。せめて20年前に今ほど大手各社が注目していれば、と思えてならない。

 

 

 

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