暗号資産投資の危険性が顕在化したANAPの決算
2026年1月16日 企業研究 0
当方は金融や投資に関してはド素人なので、あまり詳しくないが、株式の売買や投資信託などについては基本的なことは理解している。実際に小金を動かしてみた経験もある。
だが、暗号資産(ビットコイン)については正直胡散臭いという印象しかない。高騰と暴落を繰り返しているという印象が強く、ド素人では確実に負けると思っているので死ぬまで手を出す気は無い。
近年、アパレル業界では主力となる衣料品の売れ行きが伸び悩んでいる企業が多い(全社ではない)ためか、ビットコインを主力業務の一つに掲げる企業が増えている。それらは総じて業績が低空飛行を続けている企業とまとめることができる。
そんな中、ビットコインに手を出したうちの1社であるANAPがかなり厳しい状況となっている。
まず、先日発表された第1四半期連結だが、
ANAPホールディングスが暗号資産で19億円の評価損 6期連続の赤字決算が示す構造的課題
という有様である。記事を引用する。
アパレルブランド「アナップ(ANAP)」などを展開するANAPホールディングスは1月14日、2026年8月期の第1四半期決算を発表した。売上高は5億3100万円、営業損失は5億9200万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は27億7700万円となった。
純損失が大きく膨らんだ主因は、連結子会社のANAPライトニングキャピタルが保有する暗号資産(ビットコイン)の評価損だ。2025年11月30日時点での評価替えにより、19億6458万円の評価損を計上した。
ANAPホールディングスは2020年8月期以降、6期連続で営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上。さらに、2019年8月期以降は7期連続で営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっている。第1四半期の連結累計期間においても、営業損失および経常損失が続いており、本業の収益力回復は依然として道半ばだ。
とのことで、ビットコイン進出が裏目に出たといえる。
これまでさほど興味が無かったのでANAPの決算短信なんて真面目に見たことがなかったのだが、改めて見てみると、売上高が20億円弱しかない。しかも2014年8月期の決算公開以降、ほとんどの期で営業赤字である。
2023年に経営破綻してから、新しい経営陣によって再スタートを切ったが、それ以降も赤字決算を続けている。記事中にもあるように6期連続赤字である。
ちょっと興味がわいたので上場直後の2014年8月期決算を見てみると
売上高 88億4400万円
営業損失 4億8000万円
経常損失 4億5900万円
当期損失 3億8600万円
とすでに赤字だった。こんな赤字体質でよく上場できたと驚くほかない。
さらに言えば、売上高は2014年比だと4分の1以下に落ち込んでいる。2026年8月期見通しは見通せないとのことで未公表となっているほど商況が不透明である。
ちなみに2025年8月期連結は
売上高 17億7400万円
営業損失 14億5600万円
経常損失 3億1600万円
当期損失 27億1700万円
となっていて、破綻して経営が刷新された直後の決算なので比較は適当ではないかもしれないが、2014年比では5分の1にまで売上高が縮小してしまっており、よく倒産しないものだと驚いてしまう。
こんな体たらくで倒産せず、破綻しても新スポンサーが決まるというのは何か特殊な要因や人脈があるとしか考えられない。
ちなみに主力であるアパレル製品でいうと、ネット通販の画像を見る限りでは「極めて普通の何の変哲もない」レディースカジュアルである。売り場ではその他大勢のレディースカジュアルブランドに間違いなく埋没してしまうと思われる。
さて、このANAPにはビットコイン巨額評価損以外にも結構大きなスキャンダル疑惑が報じられている。
アパレル事業を展開するANAPホールディングスは、2013年に大和証券を主幹事証券として東証ジャスダック(現スタンダード)に新規上場した。だが20年8月期以降、連続赤字を計上し、23年に債務超過となり実質破綻。昨年、ネットプライス事業再生合同会社などが再生スポンサーとなり、27歳の若月舞子氏が社長に就任するなど再起を図っていた。
新しいスポンサーの下で、ANAPは2つの新規事業を展開している。暗号資産とエステ事業だ。今年4月、外部から調達した資金で暗号資産のビットコインを購入する「ビットコイン財務戦略」を導入。6月には日本の株式市場で初めてビットコインを出資財産とする第三者割当増資を敢行し、市場関係者の注目を集めていた。
問題は、同じころに進行していたエステ事業である。昨年11月からANAPの経営に参画したグループから送り込まれた経営陣により、ANAPはエステサロン「エルセーヌ」関連事業に着手する。今年3月から5月にかけて、金融業者などから41億円を借り入れ、業務提携先に事業取得対価などの名目で約41億円を払い込んでいた。
ところが、エステ事業により計上された資産が瞬く間に減損処理されるなど、41億円全額が費用計上され、25年8月期は27億円もの最終赤字となった。事業再生のどさくさに紛れて、41億円ものカネが新規事業投資の名目で流出したといえる。
驚くべきことにこうした巨額投資は、今年3月から7月まで社長を務めていた人物の独断で行われ、取締役会の承認を得ていなかったという。さらに外部流出した41億円の大部分は提携先を迂回(うかい)し、ANAPに投資資金を融資した金融業者に還流していた疑いがある。大胆不敵ともいえる資金還流の一端が明るみに出つつある。
とのことだが、暗号資産と並ぶ新事業であるエステ事業に対する疑惑である。
旧来の主力であるレディースカジュアルアパレルは埋没して鳴かず飛ばず、新事業のビットコインは巨額評価損、エステ事業は疑惑報道、と企業存続すら難しい状態にあると当方には映る。
さて、新体制になってビットコインに進出したアパレルには、旧マックハウスと堀田丸正がある。特に堀田丸正なんて社名自体を「ビットコインジャパン」とまで変更してしまっている。
この2社からは現時点では発表されていないが、ビットコイン投資に軸足を置くことがいかに危険なことなのかは、今回のANAPの巨額損失を見ても明らかだろう。この2社の行く末は大丈夫なのだろうかと他人事ながら心配で夜しか眠れない今日この頃である。