インターネット通販の普及でファッションが全国均一化されたと言われるものの・・・
2026年1月13日 トレンド 0
インターネットの普及で情報伝播(伝達ではない)がそれまでに比べて格段に速くなったと言われている。たしかにそれはその通りで、ファッションのマストレンドにしても、都心と郊外ではその普及にタイムラグがあまり感じられなくなっている。
情報伝播だけでなく、商品そのものを購入できるスピードも格段に速まっている。インターネット通販のおかげである。
ユニクロでもジーユーでもビームスでもアーバンリサーチでもユナイテッドアローズでも何でもかまわないが、著名どころの企業は軒並みインターネット通販を運営している。
それまでは大都市都心かそのベッドタウン都市くらいに出向かなければ購入できなかった商品が、今ではスマホかパソコンから発売と同時に購入できる。
もちろん到着までには数日くらいはかかるが、手に入れる速度は格段に速くなっていることは間違いない。インターネット通販が普及する前は「東京都心では人気がある商品だが、地方には店が無いから、全国的なビッグトレンドにはなれなかった」という商品がアパレルブランドに限っては多数あった。
しかし、インターネット通販の普及によって、それが在庫さえ残っていれば山陰地方の市町村でも数日後には手に入れられるようになった。
これは間違いない事実だろうと当方には感じられるし、実際、都心民とほぼ同様の服装をした人が地方にも増えたと感じる。
しかし、概して(全員ではないが、だいたい)都心民と地方民の「嗜好・好み」には今でも大きな隔たりがあると感じられる。むしろその違いはいくらインターネットが普及しようが、変わることは無いかもしれないと考えている。
2010年頃、ちょうど15年か16年前のことである。
今は亡きブルーウェイというジーンズ専業メーカーがまだ存続していたころ、展示会には毎回お招きいただいていた。今でも非常に感謝している。
当時はスキニージーンズ、スキニーパンツ全盛期で、メンズもレディースも市場はスキニー一色だった。スキニーのキモは「ピチピチなのに伸縮性が高くて動きやすい」ことだったから、それまでとは異なり、ビンテージ風のヒゲ加工やアタリとは無縁の世界だった。要するにスキニーやスキニーに類したパンツを売るにおいては、ビンテージ風のヒゲ加工は要らないどころか却って有害となる仕様だった。
そういう時代に、展示会ブースの一画には、ビンテージ風ヒゲ加工をさらにドギツク、ディフォルメされてヒゲ加工が縦横無尽に走っていてまるでイナズマみたいな柄になったコテコテを超えた超コテコテジーンズが展示されていることが常だった。
果たして、こんなものを今更どんな先に卸売りするのだろうか?
と疑問に感じて、担当者にそのまま尋ねてみた。すると、
「地方や田舎のジーンズショップにはいまだにこれを求めてくるお客さんが少なからずおられるようで、そういう店からはバカにならない数量が常に発注される」
とのことだった。
この回答には当時、かなり衝撃を受けた。いわゆる都心かそのベッドタウンで広まっているマストレンドと、田舎のマストレンドは大きく異なるという事実と、意外とこういう「ダサい」と言われる商品が一定規模のメーカーの売上高を下支えしているという事実と、にである。
そしてそのことをこのブログに書いた。多分今でもその記事は残っている。
しかし、それがいけなかったらしくその後、ブルーウェイからは出禁となってしまったので悔やまれるところだが、それも仕方が無い。
ちょうど同じころ、エドウインの展示会も割と出入りさせていただいていたのだが、展示会場の一画には、当時からすると古臭い股上深めのややゆとりあるストレートジーンズがいつも並んでいた。当然ビンテージ風でもないし、先ほどのようなイナズマ柄の過剰な加工は施されていない。本当に普通の色合いだが、その形はあきらかに当時からすると古臭い定番ジーンズだった。
エドウインの担当者にお尋ねすると
「地方・田舎のジーンズショップからは昔ながらの定番ジーンズを発注されるところが相応にあるので、対応しています」
という回答があった。
これも同様に「田舎向け」の「ダサい」とされる商品が売上高の一端を担っているという実状だった。これも書いたような記憶があるが、幸いにしてこちらは出禁になっていない。エドウインの寛大さに感謝するばかりである。(笑)
これが15年ほど前のことだから、インターネット通販がさらに普及した現在、こういう「嗜好のタイムラグ」は相当縮まっているのではないかと、当方は頭で考えていた。
ところが、この「嗜好のタイムラグ」というのはさほど縮まっていないというのが最近改めてわかったことである。縮まらないどころか今後も無くならないのではないかと思う。
象徴的な「残クレアルファード」が広まったのは2025年のことである。
「残クレアルファード」はこうして広まった マイルドヤンキーとトヨタの“最適解”:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
個人的な体験でいうと、2024年の後半に地元の店頭で、ピチピチのスキニーシルエットのスエット上下を着て金髪の推定35歳くらいの中年男性を見かけた。ワイドシルエットが全盛の24年にまだピチピチスキニースエットを穿いている中年男性がいるとは思わなかった。情報伝播が格段に速くなったにもかかわらず、嗜好は変わらないという話だろう。
大手の低価格ブランドが「コラボ」をするのは販促の通常手段となっているが、店舗の立地や客層によってそのコラボの性向は大きく異なる。
ユニクロとジーユーは都心立地、郊外大型商業施設立地という特性上、著名ブランドや著名デザイナー、ファッション性の高いブランドなどを選ぶ。例外はアニメコラボだろう。
一方、しまむら、ワークマンは地方ロードサイド立地が主体なので、そういうブランドとのコラボはあまり無い。ワークマンはエグザイルのタケヒロさんとコラボを連続しているが、個人的には人気絶頂期ではなく、なぜ今頃エグザイルなのかという疑問しかないのだが、田舎の30代・40代男性にはエグザイルが今も響くのではないかというのが某専門アパレルの意見だった。その指摘に当方は深く納得したという次第である。
この都心と田舎の「嗜好のタイムラグ」は今後も無くならないだろう。そして、地方・田舎の総人口というのは馬鹿にならないから、売上高を支える材料になり得る。そのため、あえてそういう性向の商品を重点強化するというのは一つの方策といえるのではないかと思う。