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南充浩 オフィシャルブログ

インフレ続きでも年々下がり続ける衣料品への平均支出額

2026年1月8日 トレンド 0

新しい年が始まって、各メディアで様々な景況感の見通しに対する記事が掲載されているが、そのほとんどが「横ばい」もしくは「悪化」となっている。

正確に言うなら横ばいが最多だが、やや悪くなるという見通しがそれに次ぐという状態にある。

この記事に関しても同様だ。

【2026年の景気予測】企業の17.4%は「悪化局面」、「踊り場局面」は4割超。懸念材料は「インフレ」が45.8%でトップ | ネットショップ担当者フォーラム

 

当方も一生活者として「横ばい」という体感が強い。

繊維・衣料品業界の面々も同様に見通しておられるようで、その記事については以前に紹介した。「良くなる」という体感は一部の業界勝ち組企業に限定されるだろう。

2026年も繊維・衣料品業界全体の景況感は良くて横ばい、通常運転ならやや悪化ということになるだろうと思われる。

 

 

その理由の1つに、消費者の衣料品支出の低下が止まらないことにある。

端的にまとめてくれているのがこの記事である。

被服消費はなぜ戻らないのか 望まれる価値を伝える売り場作りを | 繊研新聞

 

総務省の家計調査で被服支出の内訳推移は、洋服がコロナ後も減少しているものの、その減少幅は縮小傾向にある。19年と24年、25年(1~10月平均)を比較し、消費市場の変化をみていきたい。

被服支出は総じてコロナ前水準を下回ったままだ。特に洋服支出の減少が目立つ。19年に月当たり4332円だった洋服は、24年に3727円、25年は3476円まで低下した。外出機会が戻っても、洋服を日常的に買い足す行動は復活していない。洋服が「優先度の高い消費」から外れつつある状況を示している。

 

まず、コロナ自粛が終わっても、衣料品支出への月額支出は低下し続けているというのが実態である。

記事中にもあるように明らかに洋服は優先すべき消費ではなくなっている。統計はもちろん平均値だから、いまだに突出して高い金額を洋服に支出しておられる方もいることだろう。しかし、その人数、比率は減少しているといえるし、洋服への支出が極端に減少した人が多く発生しているということにもなる。

洋服への支出は二極化しており、その格差は年々広がっているといえる。そして洋服に多く支出する人の数は増えてはいないということがわかる。

 

 

さらにいえば、2022年から顕在化したコストプッシュ型のインフレが続いており、23年以降、衣料品の店頭販売価格は総じて上がっている。だから、19年と同じ数量を買っていたとすると、支出額は上がるのが普通である。にもかかわらず、24年、25年と下がり続けているということは、いかに洋服を買わない人が増えているか、安い洋服を買う人が増えているか、もしくは買う点数が減少し続けているか、ということを如実に示している。

25年は10月までの統計なので11月、12月に爆発的に増える可能性はゼロではないが、その可能性は極めて低く、25年通年の統計も減少することになるだろう。

 

 

洋服は男子の落ち込みが大きい。19年の1410円が25年には1080円まで減少し、在宅勤務の定着によるビジネス衣料需要の縮小が影響している。婦人も2473円から2008円へと減少した。子供は25年に持ち直したものの、全体としては抑制基調が続く。履物類も19年比で減少(1501円、1401円、1266円)し、外出関連支出の回復が不十分であることを裏付ける。

 

この統計は、女性・男性・子供の支出金額を合計したもので、それが月額3476円とされており、女性、男性、子供のそれぞれの金額はびっくりするくらい低い。記事に書かれているが、25年男子は1080円、女子は2008円とそれぞれ減少。子供だけは389円と前年比24円増で微増しているが、低位安定という感じである。

 

 

 

もっとも、月額平均だから年間で考えると、女子が24000円強、男子は12000円強、子供は5000円弱ということになる。また、中央値はもう少し上になるのではないかと思われる。

 

 

しかし、消費全体が不調かというとそうでもなく、例えばエンタメ系は好調な分野や作品も少なくない。またプロ野球の観客動員数も過去最高を記録しているチームも多い。

映画では「鬼滅の刃」「国宝」「チェンソーマン」などの大ヒットが取りざたされているが、SNSを見ていると、何度も見に行っている人が少なからずいる。1回2000円だと大雑把に仮定すると、2回行けば4000円、3回行けば6000円の支出である。こういう複数回観に来る客が多ければ多いほどヒット作になりやすい。

 

プロ野球にしても同様で、好きな人はシーズン中に何度も通う。球場では、飲食をしたり選手のグッズを買ったりしてその都度少なくない消費をする。

昨年の関西万博でも同様で、当方の知り合いでも複数回通っている人が多数いた。

 

 

ジーユーやワークマン程度の低価格の服を買おうと思えば買える人は多数存在するが、記事でも触れられていたように「洋服への支出を優先しない」という人が如何に増えているか、である。

 

記事の見出しには「望まれる価値を伝える売り場作りを」とあるが、そもそも、洋服が望まれる価値とはなんだろうか。既存の洋服に不満を感じている人や新たな価値を切望している人がそれほどに多いとは思えない。逆に昔のスーパーの洋服を知っている当方からすると、今の低価格ブランドの方が、商品の見映えは随分とマシになっていて不満なんてさほどない。低価格ブランドがマシになって平均的になった分、洋服への支出は後回しとなり、エンタメやスポーツ観戦、飲食など他の「体験型レジャー」への支出を優先する人が年々増えているのではないかと思う。

国内の衣料品市場全体が急回復する未来はほぼ訪れないと見て、各社は日々の商いに励んだ方がよいだろうと思っている。

 

 

 

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