アパレル商品が「ヒット商品ランキング」に入らなくなった2025年という年
2025年12月11日 トレンド 0
ほぼ無為な日々を過ごしている当方だが、たまにメディアや業界関係者から「今、何がヒットしていますか?」と問われることがある。
しかし、個人的には明確に「コレ」と名を挙げることができるような商品は見当たらないと思っている。
いわゆる先端層とか一部集団内でのヒット、というかホットな商品は存在するのだろうが、目に見えて世の中のマス層に支持されている商品は見当たらないと感じる。そしてそういう先端層や一部集団内での注目や支持が必ずしもマスに広がるわけでもない。
そんな当方と同じ感覚のコラムが掲載された。
先日、日経トレンディが発表した「25年ヒット商品ベスト30」にはアパレル、ファッション系が入っていなかった。例年はいろいろなアパレルが取り上げられており、昨年はグンゼの「アセドロン」と「バレルレッグジーンズ」が入ったが、今年はなかった。
個人的にファッション関連で今年ヒットしたのは「ハンズフリー靴」と「リカバリーウェア」ではなかったかと思う。ハンズフリー靴は手を使わず履ける利便性が子供から高齢者まで支持され、多様なブランドに一気に広がった。リカバリーウェアも「疲労から回復する」という機能性が疲れに悩む人々に求められた。
とあり、まさに同意である。
もちろん、日経トレンディのセレクトした商品が必ずしも適正ではないだろう。しかし、25年ランキングにファッション系が1つも入っていないというのは、マス層にヒットしているとみなされる商品が1つも存在しなかったということを表していて、それは事実だろうと当方は思う。
昨年選ばれた「アセドロン」「バレルレッグジーンズ」は今年市場から消え去ったかというと、まだ残っていて、それなりにヒットしている。グンゼの吸水速乾肌着「アセドロン」は今年も販売しているい、来年も販売する。バレルレッグジーンズはいまやジーユーの定番アイテムの一つになっている。
ただ、メディアは新規性を好むから、2年連続で同じ商材を選ぶことを避けたのだろうと思われる。
そして、このコラムに挙げられている「リカバリーウェア」「ハンズフリー靴」はアパレル製品の中に限れば25年のヒット商品にふさわしかったと当方も考えている。
だが、選ばれなかった理由も相応にある。
リカバリーウェアは今年の「新語・流行語大賞」の候補には挙がった。ただ、どちらも技術特許訴訟、健康効果に対する疑念といった問題も出た。
とのことで、どちらの商品もグレーゾーンが大きい。グレーゾーンが大きい商品を「中立公平」「社会の木鐸」を形式的にも自称する大手メディアが選ぶことは建前上できない。
ハンズフリー靴は手を使わずに履けるという便利靴だが、その仕組みの特許について訴訟で揉めている。一方、リカバリーウェアに特許訴訟はないが、健康効果について科学的にも統計的にも実証できていない。「効果があった」という人も体感ベースに留まっているし、「効果がない」という人も体感ベースに留まっている。いわば、どちらも「単なるお気持ち」に過ぎないわけである。
また、リカバリーウェアについてさらにいうと「過大広告」の問題も頻発している。
今年11月に「りらいぶ」が血行促進効果の定義に該当しないことから48万枚を自主回収したことは大々的に報じられたのでご存知の方も多いだろう。
「りらいぶ」がシャツとスパッツ48万着を自主回収、「遠赤外線血行促進」の定義に該当せず : 読売新聞
衣料品製造販売会社「りらいぶ」(仙台市)は5日、遠赤外線で血行を促進させる製品として販売するシャツとスパッツ計約48万着を自主回収すると発表した。厚生労働省が示す定義に該当しないと判明したためで、安全性に問題はなく、健康被害の恐れはないとしている。
回収対象は、2024年2月から製造販売する「リライブシャツα」と「リライブスパッツα」の2製品。「家庭用遠赤外線血行促進用衣」として販売していたが、遠赤外線を放射する範囲がプリント加工部分に限られ、衣類全体に機能を有するとの定義に合致していなかったという。
とのことで、これは「表記に偽りがあった」ということに他ならない。
一般的な大手メディアではあまり報道されないだけで、リカバリーウェアの効能の過大広告を薬機法とてらい合わせて是正勧告されている事例は各業界メディアでは多々報じられており、りらいぶだけの問題ではない。
そんなグレーな売り方が横行しがちな商品を大々的に顕彰することは、立場上、大手メディアにできるはずもない。
このコラムは
「定番商品にこそ大きい市場がある」と以前に聞いたことがある。靴や下着といった必需品で革新的な物が発明されると、やはり影響は大きい。定番的な商品でも「これが当然」と思わず疑ってみることが大きな市場を生み出すかもしれない。
と結んでおり、マス層にヒットさせるには市場の大きい定番的商品が最も適しているというのはその通りだろうと思う。
ただ、毎年必ずランクインしていたヒット商品にアパレル商品が今年は一つもランクインしていなかったという事態は、いかにアパレル商品への興味がマス層から失われているか、を物語っていると個人的には感じる。もちろん、みんな全裸で生活しているわけではないから、衣料品は必ず購入する。しかし、これまでのように「強い興味」を持って買っている人は減っているのではないか、という話である。
すべてが多様化している社会において、娯楽や優先支出先も多様化していて、ファッションもその中の一つに過ぎない存在になっている。今年のヒット商品ランキングがそれを如実に表しているといえる。