国内アパレル総小売市場規模の伸びは商品価格の値上げが理由だろう
2025年12月10日 速報 0
先日、24年の国内アパレル総小売市場規模が発表された。
2025年度のアパレル総小売市場規模は8.5兆で1.7%増、伸び率鈍化も4年連続でプラス成長 | ネットショップ担当者フォーラム
矢野経済研究所が発表した国内アパレル市場に関する最新調査結果によると、2024年の国内アパレル総小売市場規模は前年比1.7%増の8兆5010億円と推計、4年連続でプラス成長を記録した。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年比では約93%まで回復している。
とのことである。
しかし、単純に回復基調であるとは判断するのは危険である。
広く知られているように、基本的に物価は上昇し続けている。特に2022年のウクライナ侵略以降、年々物価が上昇している。衣料品も値上がりしている。ユニクロの値上げが典型例である。
その物価上昇率を加味すると、前年比1・7%増という売上高は単なる値上げ分に過ぎない可能性が極めて高い。もっとシビアに見ると、衣料品の値上げ分すら吸収できていない可能性が高い。
参考に24年の消費者物価指数を見てみると、
統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の年平均結果の概要)
(1) 総合指数は2020年を100として108.5
前年比は2.7%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は107.9
前年比は2.5%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は107.0
前年比は2.4%の上昇
とある。生鮮品とエネルギーを除く指数が最も物販の物価上昇率を示していると思われるので、その上昇率は前年比2・4%である。
もちろん、すべての商材が2・4%値上がりしたわけではない。もっと値上がりしている商材もあれば、ほとんど値上がりしていない商材もある。
衣料品にしても2・4%以上値上がりした品目もあればそうでない品目もあるし、ブランドごとにも値上げ率は異なる。
それらの前提を考慮しても、前年比1・7%増という売上高の伸び率は、平均的な物価上昇率2・4%すら吸収できていないということになる。そのため、市場規模成長とはいいつつもその成長分のほとんど、もしくは全て、が販売価格の値上げに拠るところだと考えられる。
むしろ、衣料品の総販売数量は前年よりも減っていると考えられる。
実は発表元の矢野経済研究所もその可能性は大いに認めており、記事には次のような一文がある。
今後の市場見通しについて、矢野経済研究所は「2030年頃までは2024年比で微増水準で推移する」と予測。少子高齢化や人口減少の影響で長期的には市場の縮小が見込まれるものの、原材料費や物流費、人件費の上昇により商品単価が上がることで、販売数量の減少を一定程度カバーできる可能性があるとした。
とあり、「商品単価が上がることで、販売数量の減少を一定程度カバーできる可能性」と示している。
特に、物価上昇が顕著となった2022年以降の市場規模は値上げ分を吸収しただけの伸びではないかと考えた方が適切だろう。そして総販売数量は減少が続いていると考えられる。
その原因をすべて少子高齢化に押し付けるのは無理がある。10年、15年くらいのスパンで人口動態は大きく変化することはあるが、2~3年で大きく変化することは少ない。
一見すると回復基調が続いている国内アパレル総小売市場規模だが、実質的に売上高も販売数量も伸びていないのは、消費者のマインド変化と支出先の変化が顕著に表れ始めていると考えるべきではないだろうか。
まず、第一に可処分所得の伸び悩みと全商材の値上げに対する生活防衛があるだろう。
賃金がいくら増えようが、それと同じ割合で社会保障費が徴収されれば可処分所得は増えない。可処分所得が増えなければ支出を普通の人間は増やさない。
そして、すべての商材が値上がりしているのだから、支出額を抑えるために、削りやすい衣料品から削っていると考えられる。明日着る服が無いなんて言う人はよほどの災害や事件に遭遇した人くらいである。
次に考えられるのが、娯楽の多様化である。
衣料品が娯楽の上位を占めていた時代は完全に終わった。動画配信・音楽配信のサブスクリプション、アウトドア、スポーツ、釣り、ガンプラ、グルメ、オンラインゲームなど趣味は多様化していて、それぞれが相当な市場規模を形成している。となると、衣料品よりも趣味に優先して支出をする人が増えるのは極めて当然である。
2020年以降の百貨店を含む商業施設のリニューアルプランのほとんどが、食とエンタメ・サブカルの強化である。阪急百貨店うめだ本店くらいにファッションが強い施設以外は軒並み、食、エンタメ、サブカル売り場を強化して集客増につなげている。
これを見ても、マス層の衣料品への興味がいかに低下しているかがわかる。
あと付け加えると、低価格ブランドでもそこそこの見た目の服を揃えられるようになったことも大きいだろう。よほどに衣料品や糸、生地に関心が高くない人からすれば、そこそこに小ざっぱりした服が値ごろな価格で揃うのなら、そこで買うのは当たり前の反応である。
今後もすべての商材の値上がりが続くことが予想されるため、来年発表される25年の統計も恐らく回復基調は続くだろう。ただ、販売総数量は減り続けるか、良くて横ばいなので、一握りの勝ち組アパレル以外は厳しい商況が続く確率が極めて高いと考えられる。