最低限度の利益が確保できなければどんな事業も継続できないという話
2025年12月5日 産地 2
年に数本くらいは映画を観に行く。だいたいアニメか仮面ライダーかスーパー戦隊だが、たまにそれ以外もある。
11月下旬、「鬼滅の刃無限城編1」をやっと観に行った。たしか7月公開開始だったと記憶しているが、11月まで行かなかった理由は
1、暑すぎて映画館まで行くのが嫌だった
2、大ヒット間違いなしの作品なので混雑しているのが嫌だった
という2点である。
当方の性癖などどうでもよいことだが、人間が密集している空間に入るのが嫌いである。通勤電車などは我慢できるが、それ以外の事案、しかも娯楽ごときでわざわざその中に飛び込むことは極力したくない。そして当方は暑さが嫌いである。
11月になって気温も涼しくなってきたし、公開4カ月目で混雑のピークも過ぎているのでやっと足を運んだ次第だ。
作品としてこれまでの続編で満足できる内容だった。
この国内累計興行収入が現在400億円に迫っていることは報道されてご存知のことだろう。海外上映も好調で海外を合わせると興行収入は1000億円を突破しており、日本のアニメ映画としては新記録を樹立している。
自分は観ていないが、アニメ映画「チェンソーマン レゼ編」も国内で100億円の興行収入と大ヒットである。
実写映画だと「国宝」が170億円越えの大ヒットで邦画実写で歴代1位の記録を塗り替えた。
映画ビジネスというのは、原則的に興行収入の半分を映画館が持って行く。残り半分が供給側の実質的な取り分となることは広く知られている。
供給側の製作費(スタッフ、キャストの人件費含む)と広告宣伝費がその取り分を越えていなければ、粗利益は確保できたということになる。
だから、製作費と広告宣伝費を少なくすればするほど理屈では利益が確保されやすくなるが、作品のクオリティーが低くなる可能性が高いのと、知名度が高まりにくいため、興行収入は伸びにくい確率が高くなる。一方、製作費と広告宣伝費を多く費やせば逆に興行収入も増える確率が高くなる。
製作費1億円で広告宣伝費1億円くらいの映画が興行収入10億円あれば十分に利益がある。一方、興行収入100億円の映画でも製作費に50億円かけていれば赤字は必至である。
さらにいえば、製作費と広告宣伝費をかけてもさっぱり売れない映画もあれば、製作費と広告宣伝費を極力かけなくても黒字化する映画もある。
だから、やみくもに製作費と広告宣伝費を投入すれば良いというわけでもないし、ケチりすぎてもダメだということになる。どれだけの製作費と広告宣伝費を投入すれば確実に黒字化できるか、最悪収支トントンになるか、という興行収入の予想精度を極限まで高める必要がある。
こう見てくると、その原理は映画以外の他のビジネスと同様だということがわかる。もちろん衣料品も同様だ。
今年の国内映画は概して大ヒット作品が多く生まれた。しかし「概して」なので大爆死作品もある。
実写映画だと「宝島」だったし、アニメ映画だと公開中の「果てしなきスカーレット」である。宝島は内容を褒めるコアなファンもいたが製作費20億円・興行収入6億円で公開終了しているので大赤字である。果てスカは製作費20億~30億円と言われているが、現在の興行収入は4億円と報道されており、最終的には6億~10億円前後のどこかになると予想されているから大赤字確定である。
宝島の映像や脚本、役者の演技を褒めていたファンは見かけたことがあったが、果てスカは一部の勘違いイキリくらいしか褒めているのを見たことがない。「売上高が多いのが必ずしも良い作品(商品、ブランド)とは限らない」という理屈でいうと、宝島はそれに該当する可能性が高いが、果てスカは該当しないといえる。
要はいくら、芸術だ、物作りの魂だ、と言ったところで最低限度の利益が確保できなければ映画も含めてすべての産業・商業は事業継続できないということである。
もちろん、繊維・衣料品も同様で、最低限度の利益が確保できなければ事業は継続できない。
先日、こんなコラムを拝読した。
大阪で先月、テキスタイル展「糸_(イトヘン)の祭典」が初開催された。糸や生地を扱う21社が出展し、会場は大阪を代表する歴史的建造物である大阪市中央公会堂。テーマは「妖怪」だった。
(中略)
「出展社の売れ筋は各ブースで見られる。それはある意味、市場に合わせた商品でその企業の全力ではない。持つ力の全てを出し切れば人の心は必ず動く」と話す。あえて妖怪という架空の存在を設定することで、製作者の意識を〝売る〟から解き放ち、「何をどう表現するか」を問うた。アイデア、創作のリミッターを外せというメッセージだ。
ちょうど、当方もこの展示会をチラっとだけ見に行ったので気になって拝読したわけだが、出展していたのは生地商社、繊維商社、産地の工場や産元などだった。開催主旨としてはわからないではないが、過去、これらの企業は京都スコープやらジャパンクリエーションやらの生地展示会で散々「珍しい創作生地」を提案してきた。

もちろんそういう技術力・開発力・企画力を高める取り組みは必要だが、彼らの事業を今後も存続させるためには市場が求める「売れ筋」が必要不可欠である。それらの工場は機械を動かしているので、1メートルの生地や糸を作っていては到底採算が取れない。
生地なら最低でも5反とか10反、糸なら最低でも5000メートルくらいの数量は必要になる。
開発力や技術力、創造力を高めることは否定しないだが、事業を存続させるためにはある程度の数量が見込める「売れ筋」が必要不可欠であり、国内の繊維の製造加工業者の存続が危ぶまれているのは最低限の数量が見込めなくなっていることが大きい。
国内の製造加工場を持続可能にするには、数量の見込める「売れ筋」を製品メーカーなどに確実にクロージングできるコーディネーターやエージェントを養成することではないかと思う。そんな人材が養成ができるかどうかはわからないが。
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イトウチュウ より: 2025/12/05(金) 1:30 PM
私も展示会視察にいきました。(ひょっとして見かけたかも)
メーカー名などは伏せますが、すこし伺わしいところもみかけたのでちょっとお話します。
最近話題のリカバリーウエアですが、会場でも特許済みとお声をかけて頂いたので話を聞くことに、POPには素材機能説明と特許済とあり
担当者のご婦人も熱を入れた説明をされた、でもこちらも素人ではないから質問させて頂く、「素材特許番号はありますか?」
その場ではわからいと言われた、すぐNETで特許確認すると確かに特許庁の商標に申請があった・・・特許ってネーミングかな?
先日リライブが自主回収が取り上げられていたが、私のわまりでもワークマンを意識しての動きがたえない。
最近、個人的に日本刀熱が再燃していて色々ネットを徘徊してみると、現代刀を作る刀匠は
そこそこいても(と言っても200人以下くらい)、鞘とか柄とか金具とかを作る職人が減って
しまっているそうです。
美術品としての日本刀を買う需要はあっても、供給が追いつかなくて納期は全然不明なのだとか。
なんで減っちゃうかというと、刀匠になろうという人は居ても、鞘師とかになろうという人は
ほとんど居らず、賃金も安いし徒弟制度で弟子のうちは給料も出ないしで希望者も尻込みするとか。
刀匠のほうも炭の値段が上がったりで普通にサラリーマンやってたほうが儲かるようで、刀匠の
資格を苦労して取っても(これも徒弟制度で5年とか掛かるらしい)、刀匠として生計立てられる人は
相当少ないようです。
結局、美術品の世界も儲けが出なけりゃ衰退しちゃうんでしょうね・・・。