従来型メンズスーツという市場は縮小均衡するほかないという話
2025年11月20日 企業研究 0
先日、メンズビジネススーツ大手の苦戦傾向をまとめたが、それは誰が見ても同様だったようで、繊研新聞も次のようなまとめ記事を掲載している。
大手紳士服専門店 上期、客数減で既存店減収 ビジネスウェアが落ち込む | 繊研新聞
大手紳士服専門店の25年4~9月連結決算(コナカは25年9月期)は、AOKIホールディングス(HD)を除き減収で営業赤字や減益となった。主力のファッション事業はAOKIHDだけが増収だった。各社とも客単価は前年を上回ったものの、客数の減少が響き既存店売上高も前年を下回った。主力のスーツの販売数の減少傾向が続く。
とのことで、青山商事とAokiの現状は先に伝えた通りだが、青山もAokiも紳士服以外の異業種の収益で企業を支えている。
その点、紳士服と一部カジュアル以外に目ぼしい業態が無いコナカ(異業種は手掛けているが規模が小さい)とはるやまはこの記事が書いている以上に厳しい状態にさらされているといえる。
また、この記事で「唯一の増収だったAOKI」とされているが、ファッション事業の増収はわずか1%に過ぎず、営業損益は8億円の赤字を計上している。エンターテイメント事業が無かったならAOKIも赤字決算に陥っていた。だから、Aokiとて全く安泰ではないし、ファッション事業だけを取り出して見れば厳しい状態であることは他の3社となんら変わらない。
さて、はるやまの中間決算を見てみよう。
売上高 134億6500万円(対前期比2・7%減)
営業損失 20億7600万円
経常損失 18億7800万円
当期損失 23億700万円
という減収赤字に終わっている。
続いて、決算期の異なるコナカの25年9月期連結決算は
売上高 554億8700万円(対前期比12・1%減)
営業損失 7億6600万円
経常損失 3億4500万円
当期利益 4億7800万円
と大幅減収赤字に終わっている。
コナカ、はるやまは青山商事、AOKIのように異業種ビジネスを大きく育てることに注力すべきで、紳士服を中核とするファッションビジネスで企業経営を良化させ、成長することは容易ではない。個人的な意見だが、ファッションビジネスだけで経営改善と企業規模成長はほぼ不可能だと見ている。
常々書いているが、冠婚葬祭が無くならないことから、従来型スーツの需要が完全消滅することは無い。
しかし、年間販売枚数が今以上に増える要素はないし、需要が増加する要素も無い。
従来型メンズスーツは、既存の売上高を前年維持から微減くらいで保ちつつ、粗利益を確実に取るという方策しか残されていない。
既成スーツの売れ行き悪化は2000年代半ばごろから取りざたされてきたが、その対策として生まれたのが値ごろ感イージーオーダースーツ業態だったといえる。
ただ、既製スーツが要らないのに値ごろ感イージーオーダースーツの需要だけが急増することは本来考えにくい。また値ごろ感イージーオーダースーツ需要が仮に伸びるとするなら、既製スーツの需要はさらに減ることになる。なぜなら、多くの人はどちらかのスーツを手に入れれば気が済むので、わざわざ両方を買うような人はほとんどいないからである。
だから、値ごろ感イージーオーダースーツを手掛ける各社も売上高100億円前後が頂点となりつつある。その筋では最大手と見なされていたグローバルスタイルですらようやく110億円台に達した有様である。
さらにいうと、ビジネスシーンでのカジュアル化・簡略化が止まらない。むしろ加速している。
ジーユーの8000円前後の合繊ストレッチ素材のセットアップやAokiのパジャマスーツですら、受け入れられている職場が珍しくない。Tシャツにジャケットを羽織るというスタイルが許されない職場でも襟付きのシャツを着ていれば、ジーユーの8000円セットアップでも許されるだろう。
そうなると、わざわざ、従来型スーツを買うという人はさらに減る。
これをファッションコンサルタントなどは「社会のコンフォート化」として社会全体がコンフォートやリラックス感を求めていると解釈し、一例として欧州メゾンブランドを実例として解説するが、当方はそこまで大げさなものではないと見ている。
もちろん、社会のムードや雰囲気というのは時代によって変化する。そしてトップ層であるメゾンブランドがそれを反映することもその通りだろうと思う。
ただ、青山商事などが対象顧客としているマス層はそんなトップメゾンの提案などはあまり気にしていないだろう。何ならそれを知らないという人も少なくないだろう。
マス層からすれば、簡略化・カジュアル化されたのでそれを着てみた。着てみたら楽なので職場から禁止されないならそれを続けたい。という感想を持った人がほとんどだろうと個人的には考えている。
セットアップにスニーカーという服装もすっかり定着した。スニーカーを着用してみれば、従来型のビジネスシューズよりも快適で歩きやすく足が疲れにくいというのは当然の結果である。
そうなると、職場で禁止されないのであればスニーカーを常時着用するようになるのは当たり前である。彼らは「快適性を求めながらナンタラを表現するためにスポーツというテイストを差し込んで、どうのこうのするのが人間としての哲学を反映したものである」なんていうことは1ミリも考えていないだろう。
結局、ここまでカジュアル化・簡略化が進んでしまってその快適性を多くの人が体感した現在において、従来型スーツの需要が戻る確率はほぼゼロに近いほど低いと考えられる。
従来型スーツの販売額が大きい企業ほど、企業規模を維持するためには異業種事業を育てる必要性に強く迫られている。
はるやま、コナカは相当厳しい状況に追い込まれている。