紙媒体の雑誌の廃刊・ウェブ移行が止まらない理由
2025年10月10日 メディア 2
少し前のことになるが、今年9月下旬に女性ファッション誌「MORE」が紙に印刷した雑誌の発行を休止することを発表した。
女性ファッション誌「MORE」がプリント版の刊行を休止 77年創刊
集英社が発行する女性ファッション誌「モア(MORE)」が、9月26日発売の「MORE AUTUMN 2025」号をもってプリント版(紙版)の刊行を休止することを発表した。
「今後は「MORE JAPAN by SHUEISHA」として、集英社が刊行する雑誌・WEBメディア・SNSを通じ、より幅広く日本各地の魅力を発信する取り組みへと拡大してまいります。ご期待ください」と綴っている。
とのことである。
今後の活動については集英社の発表を読んでもこの記事の引用部分を読んでも具体的にはよくわからない。集英社が発行する他の雑誌にも企画ページみたいな感じで不定期掲載するのだろうか?WEBメディアに関しては、まあ、平常運転としてやるのだろうと言うことだけは理解できる。
かつてはその人気ぶりで名を馳せた「MORE」だが、実際は23年から月刊雑誌ではなくなっていた。もう採算が合わなくなったのだろう。
当初月刊だった同誌は、2023年9月28日発売の同年11月号から年4回の発行となっていた。
という経緯があり、年4回の季刊化からたったの2年で、紙雑誌の発行が完全休止となったわけである。いかに採算が厳しかったかが伺える。
今回の「MORE」に限らず、近年、かつての人気ファッション雑誌が次々と廃刊になっている。
なぜ、紙の雑誌が次々と廃刊になっているのかは、様々な媒体や識者が語っているところではあるが、購読部数の減少が止まらないということもさることながら、企業やブランド、団体からの広告出稿料が減少し続けているところが大きい。
さらに加えて、2022年のウクライナ侵略以降の各種コスト高騰も雑誌廃刊を加速させているといえる。
何度も指摘されていることの繰り返しではあるが、よほどの製造コストが低い雑誌以外のまともな商業雑誌は、購読料金だけでは製造コストがまかなえないという事実がある。
これを各誌は企業、ブランド、団体からの広告出稿料を集めることで補填してきた。
2000年代前半のことだったが、当時は雑誌全盛期であるにもかかわらず、雑誌「GQ」の当時の編集長だった方が、講演で「我々の雑誌も購読料金だけでは赤字なんです」と明言されておられたことがあった。
2000年代前半というと雑誌全盛期で、購読部数も絶好調だった。当時のアパレルやブランドの広報担当者は「雑誌にどれくらい掲載してもらえるか」に血道を挙げていたと言っても過言ではない。
それほどの購読部数、影響力があったが、実際には広告出稿料を集めないと赤字だったわけである。
そうなると、全盛期から購読部数が減少すればどれほどの赤字になるかは想像に難くない。
一方、企業、ブランド、団体は購読部数が多いから雑誌に広告を出稿するわけだから、購読部数が減れば当然、公告の出稿も減る。企業側からすると広告を出稿する意味が無いと判断されるからだ。
購読部数が減るということは、ほぼ自動的に広告出稿も減るので出版社の赤字はさらに拡大してしまう。
それでも2010年代後半以降何とか持ちこたえてきた雑誌もあるだろうが、22年のウクライナ侵略以降の各種コスト高騰がそれにとどめを刺したと言えるのではないか。
光熱費、物流費の高騰とそれによる連鎖的な各種コストの高騰は日本国民全員が知っている通りである。これによって印刷代も高騰しているだろうから、雑誌社が紙媒体の印刷をやめるのは当然の判断といえる。
ただ、ペーパーレスガーと叫ばれながら2025年まで経つと、日々の生活や仕事において完全ペーパーレス化は現在の技術や人間の習性から考えても難しいということは各人が認識しているのではないかと思う。
また、災害による長期停電になれば印刷物の方が役に立つ。
このようなことを考えると、印刷業が完全に国内に失われるということは国益にも公益にも反するから、何とか国内印刷業が完全消滅しないようにどこかで底打ちになってほしいと思う。
それはさておき。
今回はMOREだったわけだが、今後も廃刊するファッション雑誌はメンズ、レディース問わずに増え続けるだろう。
紙で発行するファッション雑誌数は減るだけ減り続けることは間違いない。
雑誌の代わりにストリートスナップやインスタ投稿などで十分という声が世間の大勢を占めていると感じるが、個人的には老化による視力の低下も相まってか、それらのウェブ画像を長時間にわたって見続けることは結構しんどい。あくまでも個人的な意見に過ぎないのだが、全員がウェブ投稿だけを見て満足しているわけではないと思う。
いつかは底打ちをすると思うが、いつ、どれくらいの部数減少で雑誌類が下げ止まるのかは不透明だと言わざるを得ない。
当方は女性雑誌に対して全く何の思い入れもないが、今回のMOREの紙媒体廃刊については、驚いたという女性も多かったのではないかと思う。
comment
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とおりすがりのオッサン より: 2025/10/14(火) 11:10 AM
前にもコメントした気もしますが、昔の雑誌全盛期(ファッション誌に限らず)には、広告代がメインの収入で、発行部数多くすると印刷製本代で利益が減っちゃうから、「発行部数〇〇万部!」とハッタリだけカマして、雑誌自体はあんまり刷らなかったとかまであると聞いたことありますw
雑誌に限らず、情報の鮮度が問われるものほどデジタルに移行し、逆に鮮度が不要なものほど紙媒体に残る傾向を感じます。
ファッション雑誌が役目を終えつつある一方で、画集や小説、料理本、参考書といった分野では、紙の「物質性」や「体験性」に価値が残っています。
情報の種類とメディアの関係性を見直す良いきっかけになる記事でした。