「売らない店」のベータが国内全店閉鎖へ
2025年9月18日 売り場探訪 0
「売らない店」として一時期注目を集めていた「ベータ」が全店閉店に追い込まれた。
この報道は日経クロストレンドが9月16日に記事をアップして、17日にファッションスナップドットコムがアップした。
「b8ta」が国内全店閉店 「売らない店」の象徴が日本から完全撤退へ :日経クロストレンド
2025年9月16日、体験型店舗「b8ta(ベータ)」を運営するベータ・ジャパン(東京・千代田)が、25年9月末をもって日本国内の全店舗を閉店することを正式に発表した。
22年には、25年までに最大10店舗の体制を目指していたが、計画は達成されなかった。25年3月に東京の有楽町店と大阪の阪急梅田店を閉店し、残りの渋谷店も閉店予定。国内の店舗はこれでゼロとなる。今後は会社の清算か売却かの議論を進める見込みだ。
とのことである。
米国発祥の「ベータ」だったが、米国は2022年に一早く全店閉店しており、その後は日本法人が独立して国内運営をしていた。
新しい業態へのチャレンジは必要不可欠だと考えているから「売らない店」の存在そのものを否定する気はない。ただ、マス化するかといえば、国内開業当初から難しいと思っていた。
ベータを含め、他の「売らない店」も軒並み2020年に店舗をスタートさせている。もちろん先進性があると判断してのことだったのは言うまでもないが、最大の要因はコロナ自粛だった。
我が国では戦後初となる全国的な長期間の営業自粛が続いた。
その結果、商業施設から多くのテナントが一時撤退をした。テナント側企業としても持ちこたえることが先決だから、採算の見通しが立ちにくい物件からは一時的に撤退することは当然の判断である。
そのため、百貨店を含め、多くの商業施設に膨大な空き店舗が発生した。
これがショッピングセンターや量販店なら空きスペースにベンチを並べたり、ガチャポンを設置したりしてもあまり問題は無い。フロアあたりの売上高は稼げなくなるかもしれないが、ベンチやガチャポンコーナーがあったとしてもさほど見映えに齟齬は生じない。
しかし、高級感とかおしゃれ感を重視する百貨店ではそんなことはやりづらい。
必然的に何かの売り場で埋めなくてはならない。この時期から百貨店内でのポップアップストア開催が劇的に増加したのはそういう理由がある。
とはいえ、1週間~1か月くらいで入れ替わるポップアップストアばかりでは百貨店側も入れ替え作業やプランニングで疲弊してしまう。
そうなると、ベータに代表されるような「売らない店」の常設導入は売れるかどうかは別にしても、非常に好都合だったわけである。
2023年5月にコロナ自粛が全面的に解禁されると状況は一変する。
再び、実店舗への人流が回復した。特に都心の人気商業施設はコロナ前と同等かそれ以上の来館者数となった。そうなると人気商業施設の空きスペースには物販テナントが復活するし、消費者側もコロナ前のように必要な物は各ブランドショップで買うようになる。
阪急うめだ本店でのベータの催事と、その後の8階常設店(今年3月に閉店)を拝見したが、いろいろなジャンルの物が売っているが、何がメインなのかわかりづらいので、個人的には利用する気は起きなかった。


服なら服屋に行くし、電気自動車なら自動車ディーラーへ行く。電機製品が欲しければ家電量販店へ行く。広く雑多に見たいのであれば、大型スーパーの平場やホームセンターを物色する。なぜ、小ぢんまりとした「売らない店」の限られた品揃えの中から買わねばならないのか当方には理解できなかった。
例えば、このサイトにも当方の感想と同様のことが書かれている。
b8ta、2025年9月30日までに全店閉店・日本撤退-米国発「先進ガジェット体験型店舗」、米国の全店閉店に続いて | 都市商業研究所
各企業・ブランドのブースには様々な商品が置かれ、実際に商品を手に取って体験することができるショールーム的な運用が特色で、商品説明のためのタブレット端末も設置されていた。
一方で、国内の多くの店は百貨店やファッションビルなどの商業施設内に立地しており、それゆえ来店客からは「何の店か分かりづらい」との声も少なくなかったようだ。
全くその通りである。ベータに限らず、百貨店内に常設された「売らない店」が鳴かず飛ばずなのも同様の理由だろう。
この記事にはサラっとベータの国内撤退の流れがまとめられている。
「売らない店」として話題を集めた「ベータ(b8ta)」が、「b8ta Tokyo – Shibuya」を9月28日に閉店する。今年3月には「b8ta Tokyo – Yurakucho」、「b8ta Osaka – Hankyu Umeda」、「b8ta Tokyo – Shibuya」内に併設されていた「b8ta Cafe」が閉店しており、9月28日で国内の全店舗が閉店することになる。
今年3月に有楽町、阪急うめだ、渋谷店内のカフェが閉店されており、それ以降は渋谷店のみで営業が続いていたことになる。
また、日経クロストレンドでも少し触れられていたが、2022年8月にはこんな記事が掲載されていた。
全国に「売らない店」拡大 b8taが2025年までに最大10店舗体制へ
もう、見出しだけで十分だろう。10店舗体制が目標だった2025年に全店閉店となってしまったわけだから、あまりにも皮肉が効きすぎている。
今後、ベータ以外の国内の「売らない店」も閉店に追い込まれるか、売り方を変えて細々と存続するかのどちらかだろう。
比較的に新しい物好きのアメリカでベータが日本よりも早くに撤退に追い込まれたことも加味して考えると、元からこの売り方にはマス化するほどのポテンシャルは無かったと考えられる。もちろん、実験としてはあっても良かったが、ニッチな売り場として細々と存続するのが適正規模ではないかと思う。
「売らない店」は「売れない店」とコロナ自粛期間中からも揶揄されてきたが、それが実証されてしまったといえる。