百貨店の月次速報から見えるインバウンド消費の不確実さと食料品の強さ
2025年8月26日 月次速報 0
だいたい毎月25日ごろに日本百貨店協会が全国百貨店月次売上高を発表する。
そんなわけで8月25日に7月全国百貨店月次売上高が発表された。
売上高は4683億円で、6・2%減となった。減収は6カ月連続である。
インバウンド(免税売上高)売上高は36・3%減の大幅減収で5か月連続となる。
一時期は百貨店が急回復したが、今年頭から減収に転じた。個人的には百貨店の回復基調もこの辺りが限界点なのではないかと見ている。
全国店舗数もピーク時よりも大幅に減少しているので、年商がピーク時の9兆円まで回復することはあり得ないだろう。また、国内富裕層・準富裕層の消費は堅調とはいえ、今後何倍にも大幅に伸びるはずもないから、百貨店が無限成長することはあり得ない。どこかで踊り場が来ると思うのだが、そろそろ踊り場ではないかと個人的には見ている。
一方、昨年末まで持て囃されていたインバウンド消費だが、今年頭から大幅減少に転じている。毎月だいたい30~40%減で推移している有様だ。
これが、訪日外国人数が減っているなら相関関係がわかりやすいが、訪日外国人数は今年に入ってからも増え続けている。にもかかわらず、百貨店のインバウンド売上高は大幅減収となっているということは、持て囃されていたインバウンド消費も天井に達したのではないかと考えられる。
国内富裕層と同じで訪日外国人とて購買が無限に拡大するはずもない。
インバウンド売上高の大幅減少については
1、昨年よりも円高基調に転じた
2、モノ消費からコト消費に変わっている
あたりが理由だと報じられている。
常々書いているようにすべての事象には様々な要因が関連しているから、この2つも要因なのだろうが、いかにインバウンド消費が当てにならない物なのかがわかる。
まず、為替についてだが、たしかに昨年の160円前後に比べると、今年は1ドル145円前後の推移が多いので、15円程度の円高基調だといえる。だが、インバウンドが注目を集め始めた2010年代の為替レートは1ドル120円程度だったことから考えると、現在でも25円程度の円安基調である。
これで30~40%も百貨店インバウンド消費が落ち込むのであれば、インバウンドは決して当てにできる堅固な客層ではないということがわかる。
またモノ消費からコト消費というのも事実なのだろうとは思うが、そういわれてもう10年くらいが経過している。いつまでこの主張は続くのだろうか。
ちょうど10年くらい前、2015年とか2016年頃にもインバウンド消費が落ち込んだことがある。その当時も「爆買いの終わり」とか「モノ消費からコト消費へ」と言われていた。
この当時も百貨店のインバウンド消費が大きく落ち込み、インバウンド消費の当てにならなさが話題となっていて、実際に当時は「インバウンドへの過剰な期待は危険だった」と話す百貨店社員も少なからずいた。
だが、結局、その危機感は何ら実を結ばず、10年かかってまた同じ轍を踏んでしまったわけである。
インバウンド売上高なんて臨時ボーナス程度と位置付けておくのが賢明だろう。
毎月のこの発表レポートには興味深いことがいくつも書かれているので、興味のある方は毎月読むことをお勧めする。
例えばこの一節。
昨年好調だったラグジュアリーブランドを含む身のまわり品が16.1%減と4か月連続二桁減。
とある。グッチやLVMHなどのラグジュアリーブランドが減収に転じていると報道されている(エルメスは好調)が、百貨店でも不調に転じている。このまま不調が長期間続くようだと、百貨店がラグジュアリーブランドを導入する理由は薄れてしまうだろう。
個人的に興味があるのは、衣料品売上高と食料品売上高である。
7月の衣料品売上高は1150億2570万円で、構成比24・6%だった。
一方、食料品売上高は1318億3786万円で、構成比28・2%だった。
常々書いているように、百貨店の衣料品売上高が他部門を圧倒していたのは遠い過去の話で、現在は食料品と衣料品はいつも同じくらいで月次によって抜きつ抜かれつしている。
7月は食料品売上高が衣料品を上回った。上の一節でも触れているようにラグジュアリーブランドは「身の回り品」に入っているから衣料品にはカウントされていない。
それにしても、7月は衰えたとはいえバーゲンの月である。バーゲン月にもかかわらず、衣料品売上高が食料品売上高を下回るというのは、いかに百貨店の衣料品が厳しいかということになる。
さらにいえば、衣料品はだいたいどこの百貨店でも3~6フロアくらいを占めている。一方、食料品は地下1階だけか多くてももう1フロアか2フロアある程度に過ぎないから、食料品の坪効率がいかに優れているかがわかる。なにせ、売上高は同じくらいで、フロア構成は半分かそれ以下なのだから、食料品の優秀さがうかがえる。また食料品の商品単価は百貨店衣料品の10分の1~100分の1程度しかないのに、同等の売上高があるので、いかに回転率が高いかがわかる。
この動向を見ても、マス層の関心は衣料品より食料品に向いていることがわかる。
ではなぜ、食料品かというと、多くの人にとって食料品や飲食の方が、他人と話題を共通化しやすいからではないかと思う。最大公約数的に多くの人と話題にのぼらせて盛り上がりやすいのが食料品・飲食だと感じる。
衣料品の話題はよほどの同好の士でないと話が通じにくい。衣料品好きでも支持するブランドが異なると話にもならない。食の好みが多少異なっていても、よほどの人でない限りは喧嘩や論争にはなりにくい。普通の人同士であれば「へー、そうなんだ」で済ませられる。
また、食料品の「美味しさ」は自分でも体感しやすいが、衣料品の良さは食品より体感しにくい。吸水速乾とか高ストレッチ素材あたりは「良さ」を体感しやすいものの、そうでない衣料品の良さは体感の個人差が大きい。
百貨店は概して(例外はある)改装の目玉を衣料品にいまだに置きがちだが、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店のようにファッションに強い店舗以外は、顧客層に応じて食料品やキャラクター商品を強化する方が効果的ではないだろうか。