中堅規模のアパレル関係企業の経営破綻の原因はコスト上昇と大手の寡占化
2025年8月25日 トレンド 0
今春ごろから、中堅規模の一画を占めるアパレル業者の経営破綻が続いている。
信用情報なんかを愛読しておられる方はとっくにご存知のことだろう。
特に、R1000、ジェニィ、スタイル、ミエルと7月末から8月20日までたて続けに破綻している。それぞれ、主力商材分野は異なる。R1000は「レトロガール」というレディースブランド、スタイルはバッグ類、ジェニィは子供服、エミルはメンズカジュアルという具合だ。
主力商材は異なるものの、規模感は割と近しいため、これに対する「まとめ記事」を書くことは、業界メディアとしては当然の作業である。
「ザックリ言ってこういう傾向がありますよ」という「まとめ記事」を書くことはそれなりに意義があると、いうのがメディア業界の定説で、当方もそう考えている。
そういう意味ではこの記事は評価できる。
スタイル、ジェニイ、R1000 中堅アパレル企業の破綻が相次ぐ理由とは | セブツーは、世界各地のファッション&ビューティ情報を多言語で毎日配信するインターナショナル・メディアです。
8月20日には、英ブランド「ポール・スミス(Paul Smith)」のバッグや革小物などを手掛けてきたスタイル(本社:東京都墨田区、代表:金子豊)が東京地裁へ破産を申請した。負債総額は約21億5000万円にのぼる。スタイルはライセンス事業を中心に展開し、かつては百貨店や専門店を通じて広く販売網を築いたが、近年は消費者ニーズの変化に対応しきれず、売上の低迷が続いていた。
同日、宮城県仙台市に本社を置くエミル(代表:佐々木浩)も自己破産を申請。カジュアルウェアを展開してきたが、負債総額は約12億円。地方都市を中心に事業を展開していたが、EC市場の拡大や低価格ファッションとの競争で苦戦を強いられた。
さらに18日には、大阪市に拠点を構える子ども服メーカーのジェニイ(代表:平原亮太)が自己破産を申請。負債総額は約15億円に達した。ジェニイはガールズブランドを中心に展開し、若い母親層に人気を集めた時期もあったが、少子化の影響に加え、Z世代をターゲットにする新興ブランドの台頭も打撃となった。
福島県喜多方市のカジュアルウェアメーカー、R1000(代表:金子一弘)は自主再建を断念し、7月29日に民事再生法を申請。負債総額は約34億3000万円に達した。さらに5月27日には、シューズの小売「ゼットクラフト(Z-CRAFT)」やキャンプ用品「ピースパーク(PEACE PARK)」を展開するロイヤル(本社:名古屋市、代表:中根智大)が東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約93億1800万円。
とのことだが、この原因について
1、SNSの普及とECの浸透によるスピード感について行けなかった
2、原材料費・燃料代高騰、円安基調など諸々のコスト上昇
3、D2Cブランドの乱立などの新興ブランドの台頭
の3つを挙げている。世の中の事象は複数の原因が存在するので、この3つが必ずしも間違っているとは言わないが、確実に影響が大きかったのは2の「コスト上昇」だけだろう。
もちろん1と3についても要因の一つだろうが、さほど影響は大きくなかったのではないかと考えられる。
例えば、1のSNSとECの普及・浸透だが、今回言及されている企業はいずれもECをそれなりに展開していた。特にR1000 とかロイヤルなんかはネット通販でも一定規模の売上高があった。
さらに言うなら、ECに強い企業だって経営破綻している。
4月に破綻したズーティーである。
この企業なんてネット通販が主力だし、売上高はさほど低下していないにもかかわらず、経営破綻に追い込まれている。最大の原因は「コスト上昇」だった。
2010年代後半の「業界におけるネット通販ブーム」によって、ネット通販運営のコストは上昇したとはいえ、業界全体に主要販路の1つという認識が定着したため、中堅規模のアパレル業者なら、ほぼ全社がネット通販を完備するようになった。
各社がそれなりの金額をネット通販で販売しているのに「ネット通販とSNSのスピードについて行けなかった」はあまりにも的外れではないか。「ネットとSNSはすべての悪だ」という昨今のオールドメディアの主張と同じステレオタイプでしかない。
3についてだが、EC内におけるブランドの乱立はたしかにその通りで、ネット通販でも消費者は恐らく分散化傾向にあるだろう。何せ、個人の収入には限りがあるから全ブランドを買うことは不可能で、いくつかのブランドを決めて買ったり、ネット内で価格比較をしてから買うなどの行為は日常的に定着している。必然的に購買は分散化傾向になる。
だが、D2Cが脅威だという論調も2010年代後半くらいで止まった認識ではないのか。すでに破綻しているD2Cブランドは無数にある。またインフルエンサーが企画しているD2Cブランドは長続きしにくいという実状もある。
さらに言えば、今回破綻した中には「家族経営で経費管理がザルだった」と指摘されている企業もあるから、一概に「SNS、ネット通販、D2C」だけで片付けるのは、業界と読者をミスリードしやすいのではないか。
結局、中堅規模のアパレル業者が経営破綻に追い込まれている最大の原因はコスト上昇が挙げられるが、それ以外には、消費者による購買が大手チェーン店各社に集中しやすいということが挙げられるだろう。以前にもご紹介したが、年商1000億円以上の大手チェーン店上位10社が市場の7割を寡占している実態がある。残り3割のシェアを中堅から零細企業の全社で奪い合っているのが現状であり、必然的に各社とも売上高は伸びにくい。その中のどこかが売上高を伸ばすということは、他のどこかから客を奪っているということで、客を奪われた先は消えるしかない。
大手の寡占化が進む中、小規模・中堅規模のアパレル企業の経営破綻は、まだまだ続くと考えた方がよいのではないかと思う。