ヨーカドーの「ファウンドグッド」終了から見える外圧と衣料品需要の低さ
2025年8月20日 企業研究 6
イトーヨーカドーがアパレルブランド「ファウンドグッド」の終了を発表した。
これはイトーヨーカドーが自主編集のカジュアルウェア平場を廃止して、アダストリアとの協業によるアパレルブランドで、導入からわずかに1年半で終了が決定してしまった。
ヨーカ堂 アダストリアと協業の「ファウンドグッド」を終了 | 繊研新聞
イトーヨーカ堂は26年2月でアダストリアとの「ファウンドグッド」の仕入れ契約を終了する。ヨーカ堂の持ち株会社であるヨーク・ホールディングスが9月に米ファンドのベインキャピタルの傘下に入ることになっており、「事業ポートフォリオ再構築の中で判断した」という。
セブン&アイグループのもとで事業改革を進めていたヨーカ堂は自主アパレルからの撤退に伴い、24年2月から衣料品売り場にファウンドグッドを導入、ショップ型、コーナーなど64店で扱っている。
とのことである。
発表は昨年2月で、完全終了は来年2月だから展開期間は2年ということになる。
この繊研新聞の記事が他メディアと異なる優れた点は、ヨーカドーの持ち株会社であるヨーク・ホールディングスが今年9月から米ファンドのベインキャピタル傘下に入ることによる事業再構築と明言している点にある。
とはいえ、ファウンドグッドが好調に売れていたなら、米ファンドとて「廃止しろ」とは言わなかった可能性が極めて高い。
ファウンドグッドの売れ行きが「思ったよりも低い」というのはアダストリアの木村治社長自身が今年1月の日経新聞で語っておられたことは以前にこのブログでも紹介した。
アダストリア木村治社長「もうアパレル企業とは思わない」 – 日本経済新聞
――イトーヨーカ堂の衣料品売り場向けブランド「FOUND GOOD(ファウンドグッド)」を始めたことも話題です。成果は。
「思っていた数字までには届いていない。予想以上にヨーカ堂の退店が進んでいることもあり、スケジュール通りの展開はできていない。ヨーカ堂の食品売り場に来ている30〜40代の層をとりたいと思っていたが、実際には60〜80代がメインだった。これまでは基本的にヨーカ堂が要望したMDを組んできたが、多少幅を広げた方がいいと思っている。来期からアダストリアの得意な『修正力』が効いてくる」
とのことである。
このインタビュー記事から考えられるファウンドグッドが計画値よりも売れなかった理由は
1、30~40代客を取りたかったが、実際のヨーカドーの客層は60~80代だった
2、ヨーカドーの撤退スピードが当初計画より速い
という2点が考えられる。
まず、1についてだが、実際に売り場を見た感じではたしかに30~40代の家族向けだということはわかる。しかし、ヨーカドーで服を買う客層は60~80代で客層と商品はミスマッチだった。しかしながら、インタビュー通りに「修正」をかける時間があれば、数年後の業績はまた異なっていたのかもしれない。その修正時間が与えられないままに外圧もあって終了が決定してしまったといえる。
次に2についてだが、展開店舗数が多ければ多いほど、営業利益は別として全体の売上高は稼ぎやすい。しかし、イトーヨーカドーは急激に店舗数を減らし続けており、恐らくは当初の予定よりも店舗数が減っていたと考えられる。そのため、計画していた全店売上高にはなかなか届かなかったのだろう。
それでも、各店の店頭がある程度賑わっていれば手応えは感じられるので継続もあり得たのだろうが、断続的に売り場を定点観測していると、店頭もそれほど賑わっていなかったので、展開店舗数だけの問題ではなく、各店頭の売れ行きも「思ったほどではなかった」と考えられる。
イトーヨーカドーと同一施設内、もしくは近隣にあるユニクロ、ジーユーと比べると平日昼間の入店客数は雲泥の差だった。
各メディアが開始当初から約1年間くらいは「ファウンドグッド順調」という報道を重ねていたので、順調だと信じていた人も少なからずいただろうが、定点観測してみると、とても順調には見えなかったというのが率直な感想である。順調と報道し続けた各メディアは反省してもらいたい。
不調だった原因はこれ以外にもいろいろと考えられるものの、当方は、イトーヨーカドーの顧客層であるマス層の衣料品への興味の低下が最大の原因ではないかと思っている。可処分所得の伸び悩みという要因もあるが、それが無くても衣料品への関心度合が大きく低下していると考えられる。
では、マス層の関心は何に移っているのかというと、ガンプラ、アニメ、キャンプ、アウトドアなど様々挙げられるが最大の関心事は「食」ではないかと思う。
当方は「食」に対してさして興味は無いが、やたらと食い物の話をする人は周りにも多い。
1年前の記事だがこんな記事もある。
直近で食料品は65.4%…百貨店やスーパーで取り扱う商品の移り変わり(2024年公開版)(不破雷蔵) – エキスパート – Yahoo!ニュース
ちなみに直近の2023年では、衣料品15.8%(前年比プラス0.7%ポイント)、食料品65.4%(前年比マイナス0.8%ポイント)、住関品など18.1%(前年比プラスマイナスゼロ%ポイント)。新型コロナウイルスの流行により衣料品や住関品を購入する目的での来店機会そのものが減じたことに加え、内食特需による食料品への需要急増が生じた2020-2021年の反動があったようだ。とはいえ、「食品デパート化」の色合いが強い状態なことに変わりはなく、また食料品の金額そのものは前年比で増加している。
この統計は百貨店とスーパーを合算したものというところには留意しなくてはならないが、合算すると売り上げ構成比の65%が食品になっているわけである。逆に衣料品は15・8%しかない。
記事内のグラフを見てもらえばわかるが、1980年には合算した衣料品の売り上げ構成比は42%もあった。食品は30%しかない。
当時の百貨店とスーパーは完全に衣料品が花形商品だった。それだけマス層の衣料品需要・衣料品への関心度合が高かったといえる。
しかし、現在は食が2倍以上にも増えて65・4%もの構成比を占めている。これはマス層の関心と需要が完全に食に集中していることを示している。
ヨーカドーは再建策の一つとして「ファウンドグッド導入」を掲げたが、マス層の需要から鑑みると、衣料品で経営再建を果たすことは難しかったと言わざるを得ない。むしろ食品を強化したり、食品に付随した何かを強化する方が再建策としては妥当だったのではないかと考えられる。
ヨーカドーに限らず「衣料品を諦めない(諦めたくない)」と表明しているスーパーマーケットは何社かある。衣料品は必需品でもあるから売上高がゼロにはならない。また、衣料品の購買を高めるための啓発活動も必要であることは間違いない。ただ、マス層の需要と関心度合を見ると「衣料品強化」はかなり難しい取り組みだということはスーパー各社は認識すべきだろう。
comment
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いなかもの より: 2025/08/20(水) 2:12 PM
スーパーの2階でしか服を買えない80代以上がほんとの購買層なのに、あんな若い感じにしちゃったらそりゃ売れないよね。うちの近所の西友も2階の服売り場がなくなって、うちの嫁はんは仕事柄高齢者のことよくわかってるから、スーパーの2階の服売り場がなくなったら、困るお年寄りがたくさんいるのにどうするんや、とお怒りであった。ヨーカードーはそれを全国規模でやっちゃったんだな。
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細野 より: 2025/08/21(木) 7:37 AM
子どもの頃は親が選んでくれた、ヨーカドーのエムシーシスターの服を着ていて、たまにオシャレなアイテムもあって嬉しかったです。でも中高生になってからはライトオン、そしてUNIQLOやアダストリア系ブランドがメインになっていきました。
ファウンドグッドは気になって何度も見に行ったものの、バッグや小物にはユニークなデザインがある一方で、服は地元のしまむらで売っていそうな感じ。子ども服を見ても服は多いけれど靴が少なくて、子どもはすぐにサイズアウトするからこそ靴の品揃えが重要ですよね。靴が少ないのは子育て世帯のニーズをあまり見ていないのではと思いました。
結局、ファウンドグッドは、子育てファミリーにとって「ちょっと響かない」ブランドだったかなと感じました。
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ばらだぎ より: 2025/08/21(木) 9:04 AM
ヨーカドーの衣料品の販売員が、自社の商品に殆ど興味がないというのも要因としてあると思います。
新ブランドが入荷したらエスカレーター周りに並べて、
落ち着いたら真ん中くらい、売れなくなったら隅っこに
行って値下げ。ずっと前の商品がずっとあり、季節外れの商品はバックヤードでハンガーごとホコリをかぶってる。
それの繰り返しに悪い意味で慣れてしまい、売ろうという気概が
ほぼ感じられない。品物だけでなく従業員も店構えもそっくり
変えないと改革は難しいと思います。 -
ミナミミツヒロ的けち人間 より: 2025/08/22(金) 9:23 AM
という事は、投売り合戦がはじまりますな
安もの買いマニアとしては、うっしっしな展開ですなwwwGMS各社から仕様書が書ける人間が消えたのが2000年ごろ
25年たった今では、売れるモノを見抜ける人間すら
いなくなってしまいましたGMSの「食品+テナント化」は今後ますます進展するでしょう
いまのGMSに自前で商品を企画・開発する能力はありません
食品PBが話題になったりしますが
あれもNB各社に自社専用品を
開発段階から丸投げしてるだけですから -
メルクーリオ より: 2025/08/22(金) 6:59 PM
FOUNDGOODは知らない間に展開が始まってて「あ、こんなのあったんだ..」って印象でした。
自分が行ったのは都内のイトーヨーカドーでしたが、見ている人はほぼいませんでした。モノはそこまで悪くありませんでした。
ユニクロが若干値段が高くなってきてるこの頃、比べるとちょっとだけ安いですね。イトーヨーカドーの客層と合わないというのもありますし、ユニクロ以外の選択肢としてアリだと思うもののデザインに特徴が弱く、あえて選ぶ理由に欠けるというのが個人的な印象でした。
低価格高品質であればユニクロでよいし、ユニクロじゃ満足できない人は「ユニクロにない特徴」を求めてユニクロ以外にいくと予想してます。
それはFOUNDGOODではないですね。ちょっと期待してたんですが…まぁそうだよねって結末です
30~40代だと、物心ついた時にはすでにユニクロ、しまむら、無印良品とかで服を買うのが普通になってて、スーパーに行っても食品売り場以外には行かない人も多いんじゃないんすかね?
たいていのスーパーは1階が食品で2階が衣料品その他って感じだから、まったく2階には行かずに食品だけ買う人のほうが圧倒的に多かったりするんじゃないのかと、勝手に思いました。
うちのアラエイティーwの親なんかは、逆に最近はスーパーの服しか買ってないようですがw