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南充浩 オフィシャルブログ

川上・川中・川下では全く異なる繊維衣料品業界

2025年8月6日 トレンド 0

同じ繊維衣料品業界とはいうものの、川上・川中・川下はそれぞれ商売のサイクルも商品のミニマムロットも異なるため、兼務することは難しい。

もちろん、それなりの成果を挙げている企業はあるが少数派であり、考え方をそれぞれの業態に合わせた結果といえ、考え方自体の使い分けができないと「原料から販売までの一気通貫」という構想が良くても儲からないばかりか、企業やブランドの廃止に追い込まれてしまう。

そして、当方が見聞きした範囲でいうと、考え方の使い分けができず、本業以外のどれかが失敗するというケースが多くあった。

 

 

90年代半ばごろから、衣料品業界ではSPA化が理想とされ、問屋不要論が強く叫ばれた。実際のところ、問屋は決して不要ではないが、世論の盛り上がりというのは時に理性を無くす。

その結果として問屋ビジネスそのものが縮小してしまったため、衣料品の店頭小売に乗り出す問屋も少なくなかった。ただ、結果的に成功例はほとんど無い。

理由は小売店と問屋ではビジネスサイクルも異なるし、顧客対応も異なる。さらにいうと商品のSKUも異なる。そのため、両方を管轄する経営者はそれぞれに合わせた考え方が必要となるのだが、人間はそんなに便利にできていないから、問屋的思考のままで小売店も経営しようとする。その結果失敗に終わる。

 

 

一般大衆にとってはどうだかわからないが、神戸発のセレクトショップ「乱痴気」の閉店は、関西の古株業界人には衝撃を与えた。

以前にも取り上げたが、2021年には創業者の手を離れて、タニモトという問屋に売却されていた。タニモトは近年BtoC向けの小売ビジネスを強く志向しており、2019年にはレディースブランド「パメオポーズ」をマークスタイラーから買収し、21年には乱痴気を買収している。

しかし、両方とも全店閉店となっている。パメオポーズは今年4月に全店閉店、乱痴気は8月に全店閉店した。

 

 

内部事情は様々あるだろうが、最大の原因はタニモトが問屋思考のままで小売店を運営したことにあるのではないだろうか。

実際、某関係者は「問屋思考のままで、高感度小売店を運営したことが行き詰まりを招いた」と話している。一応、対外的には両ブランドともに公式ネット通販だけは残して、再度出店するという公式声明を発表しているが、再起は難しいのではないかと当方は見ている。

公式ネット通販に絞って撤退したブランドが再起した事例を当方は過去に知らない。細々とネット通販が存続するか、いつの間にかネット通販すら消え去っているか、のどちらかである。今回もその事例から逃れられないのではないかと個人的には見ている。

 

 

先日、往年の人気ブランドだった「スタニングルアー」の譲渡が発表された。個人的には「また?」という感想である。スタニングルアーは転売され続ける流浪のブランドである。

もともとはルシェルブルーのブランドとして誕生したが、その後、瀧定大阪へ、そこからジャパンイマジネーションへと譲渡され今回である。

太陽谷 エスダーヴからレディス2ブランドを譲り受け | 繊研新聞

アパレルOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)やEC運営、中国向けの越境ライブコマースを手掛ける太陽谷(東京)は、レディスファッションの企画・販売のエスダーヴ(東京)から、アパレルブランド「スタニングルアー」と「メロウネオン」を9月1日付で事業譲受する。

24年にエスダーヴから事業譲受したアパレルブランド「デイシー」が、国内外で好調に売れていることを受けた。

とのことである。

どの報道も内容はほぼ同様で、WWDでは以下の通りである。

旧ジャパンイマジネーション、「スタニングルアー」を太陽谷へ事業譲渡

旧ジャパンイマジネーションのエスダーヴ(東京・河合剛社長)は、ウィメンズブランド「スタニングルアー(STUNNING LURE)」を、OEM・ODMやEC運営、中国向け越境ライブコマースなどを手掛ける太陽谷(東京・袁磊代表取締役)に譲渡する。譲渡完了日は9月1日。商標権や店舗などを譲渡し、従業員の雇用は継続する。

 

とのことで、太陽谷の社長名からすると中国系企業だと推察される。

 

そこで太陽谷の公式サイトを拝見したところ、資本金は300万円で実店舗は現在1店舗だけなので、OEMや越境ライブコマースを含めて年商規模は最も多く見積もっても10億~20億円規模ではないかと思われる。

今回、譲渡されたスタニングルアーは往年より店舗数が減っているとはいえ、5店舗ある。OEMとEC運営、ライブコマースを専門とする会社が5店舗とはいえ実店舗をチェーン運営できるだろうか。

要らぬお世話かもしれないが、経営陣がよほど思考を使い分けない限りは、実店舗はすぐに無くなってしまうだろう。太陽谷とすれば、手慣れたEC通販のみに集中した方がいろいろと楽である。恐らく、5店舗の実店舗は全店無くなるか、モデル店を1店舗か2店舗残して残りは閉鎖になるのではないかと個人的には見ている。

 

 

現在、多くの産地の川上企業が、川下の製品直販ビジネスに取り組んでいるが、製造から販売まで一気通貫であることはたしかだが、製造と販売はよほど思考を切り替えてそれぞれに臨まないと、虻蜂取らずの結果に終わりやすいので注意が必要になる。

 

 

 

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