乱痴気の閉店 再オープンはかなり厳しいのではないかと思われる話
2025年8月4日 企業研究 0
神戸発のセレクトショップ「乱痴気」が閉店した。
発表は7月下旬で、閉店は8月3日だった。
神戸の名店「乱痴気」が全店舗を閉店 オンラインストアのみ継続し再オープンを目指す
神戸を拠点とするセレクトショップ「乱痴気」が、8月3日に全店舗を閉店する。同店は、1993年に兵庫県神戸市で創業。国内外のデザイナーズブランドを幅広くセレクトし、独自のストリートスタイルを発信してきた。現在は神戸に2店舗、東京・渋谷に1店舗を展開。今後はオンラインストアのみ継続し、店舗の再オープンを目指すとしている。
とのことで、他のメディアでもほぼ同様の手短な内容だった。
この報道で、久しぶりに「乱痴気」の名前を耳にした。記憶をたどると恐らく10年前後ぶりではないかと思う。2010年代半ば過ぎまでは各報道で目にしていたが、2010年代後半からはめっきり報道が減った印象がある。
もちろん、生活圏が違えば、継続的に乱痴気の名を耳にしていた人も少なくないだろうが、当方の生活圏では2010年代半ば過ぎからめっきりと耳にしなくなって、ほぼ忘れかけていた。
乱痴気の名前がメディアへの露出を強めたのは、90年代後半ごろのことだったと記憶している。当方の印象としてはアーバンリサーチとほぼ同時期にメディア露出を増した印象が強い。
90年代後半から2000年代後半にかけては、業界紙だけではなく、ファッション雑誌にも頻繁に取り上げられていた。
2010年ごろになると、乱痴気は「国産品コラボ」を強化し始め、産地とのコラボイベントに頻繁に登場するようになった。
実際、播州織とか加古川の肌着とかその手の産地コラボ品や産地コラボイベントを2010年代半ばまでは盛んに打ちだしていた。当方も何度か産地コラボイベントを取材と称して拝見させていただいた。
ところが、2010年代半ば過ぎごろから乱痴気の名を報道で見かけることがめっきりと減った。ほぼ無くなったと言っても過言ではない。
もしかしたらファッション雑誌を読んでいれば見かけたのかもしれないが、もう2010年代半ばにはファッション雑誌の購読を当方はやめてしまっていた。
そのため全く見かけないまま2025年を迎えたわけだが、2000年代後半以降熱心だった産地コラボもその頃には報道されなくなっていたので、開催していなかったか、開催したとしてもごく小規模なものになっていたのだろうと推察される。
今回の閉店報道を受けて、考えられることは売り上げ不振だろう。あと、入店ビルの契約更新も考えられるが、3店舗同時に更新になることはかなりの低確率なので、その線は薄い。
一時期、それこそ2000年代には大阪にも店舗があったし、もっと店舗数も増えていた記憶がある。いつの間にか3店舗にまで縮小してしまっていた。
そういえば、名物だった創業者の方は今どうしておられるのだろうと思って、ウェブ検索をしてみると、こんな記事を発見した。
現代表の前川拓史さん(57)。創業者の星加(ほしか)弘之さんがあと数年で80歳になるのを前に廃業を考えていた2020年、取引があった前川さんが「これは残さなければ」と事業を承継しました。先代の星加さんは登山家で、自作のザックとともに山に登っては、機能や背負い心地を追求してきました。
とのことで、神戸ザックという登山用リュックメーカーの社長になっておられた。
この記事には、2010年代以降のことが手短に前川氏の言葉でまとめられている。
一方の前川さんは、1993年に神戸発のセレクトショップ「乱痴気(ランチキ)」を創業。世界を飛び回り、自ら目利きした先端のファッションを神戸に持ち帰ってきました。出店したトアウエストや乙仲通りはいつしかアパレル店などが集積し、流行に敏感な若者に人気のエリアに。東京・渋谷にも進出しました。「ところが2010年前後から、売り上げがガタンと落ちて」。スマートフォンやネット通販の普及、ファストファッションの台頭、リーマン・ショックや東日本大震災…。流行の窓としてのセレクトショップや、ファッションと消費を取り巻く状況は急速に変化していました。その頃から前川さんのアンテナは、足元へ向き始めます。「アメリカで古着を探してレンタカーを走らせていたのが、兵庫県内の地場産業を車で見て回るようになって」。兵庫の地場産品をセレクトしたショップ運営なども始め、その過程で、後継者不足などで伝統が途絶えてしまう例も目にしてきました。
とある。
当方の記憶と体感は間違っていなかった。2010年ごろから、旧来路線から国産品路線にシフトしており、産地コラボが盛んだったのはそのためだったということがわかる。
ではこの名物創業者は現在、乱痴気の経営にかかわっているかというとそうではない。
神戸のセレクト店「乱痴気」が閉店 復活視野にECサイトから刷新 | 繊研新聞
事業承継を目的に21年、同店を運営するワークトゥギャザーロックトゥギャザー(神戸市)の全株式を取得したカジュアルブランド卸・小売りのタニモト(岡山市)の谷本昌宏社長は、「自分も含め、誰もが憧れたランチキをさらにパワーアップさせるのが狙い」と話す。
とのことで、21年からはタニモトが運営しているわけである。それを報じているのは繊研新聞くらいしか見かけていないので、こういう報道は価値がある。
で、実際に各メディアが伝える「再オープン」は可能なのだろうか?
結論から言うと、当方はタニモトが運営し続ける限り、それは難しいのではないかと見ている。再オープンはできるかもしれないが長続きさせることは難しいのではないかと思っている。
それはタニモトのこれまでの実績を鑑みるとそうなる可能性が高いと思われる。
タニモトは2019年にマークスタイラーからパメオポーズというレディースブランドを譲渡されている。2020年のコロナ禍という惨事があったとはいえ、2025年4月には全店舗閉店してしまった。コロナ禍があったとはいえ、業績不振だったのだろう。
マークスタイラーが「パメオ ポーズ」を事業移管 – WWDJAPAN
乱痴気は最終的に3店舗だった。再オープンさせるにしても小規模店舗数にならざるを得ない。3店舗程度の店舗数のセレクトショップは、大手とは異なり、店長やオーナーの好みが反映されやすく、その個人的な好みこそが数多くはなくてもコアなファンを生み出す。
ところが、乱痴気は21年のタニモトへの譲渡以降、コロナ禍が終わっても3店舗での業績を向上させることができなかった。恐らくは小規模セレクトらしい品揃えや販売スタイルをタニモトが提案できなかったのではないかと思われる。そして、それはテイストや品揃えは全く異なったが先行閉店したパメオポーズも同様だったのではないかと考えられる。
経営陣が刷新されないままに再オープンさせても、小規模店ならではの「濃さ」が作れないだろうから、長続きさせにくいだろう。また一つの時代が終わったと感じさせられるのだが、乱痴気の場合は2025年ではなく、2021年の譲渡時に終焉を迎えていたのではないかと思えてならない。