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南充浩 オフィシャルブログ

チェーン店が不振品番を売りさばくためには「店舗間移動」が有効になることが多い

2025年7月31日 企業研究 0

大学を卒業して就職したのが低価格チェーン店だった。

衣料品に興味があったわけでもなく、販売員に興味があったわけでもない。もちろん予備知識は皆無である。

当然、最初は店長やチーフに言われるままの作業をすることになる。しかもその作業が何のために必要なのかは全くわからない。わからないけどとりあえずやるという感じだった。

配属当初から定期的にあった作業が「店振り(てんぶり)」である。これはこの会社独自の言い回しだったと後になって知ることになるが、業界標準用語でいうと「店舗間移動」である。

 

 

定期的に本部から「〇〇品番を〇枚、〇店へ送りなさい」と月に何度か指示が来るわけで、配属当初の当方はわけがわからないながら、黙々とダンボールに詰めて配送伝票を書くという作業を行っていた。

業務の概略を何となく覚えてくると、配送指示があった品番は、当店ではあまり動いていないが〇店では品切れ寸前まで売れているということだった。

もちろんその逆もあった。当店で品切れ寸前の品番が他店から大量に送られてくる。

 

 

業界の皆さんには当たり前のことだろうが、要は、売れ筋が各店によって異なっているということである。

個店だと、不振品番は値下げして売り切るほかないが、チェーン店だとその品番が好調な店に送ることで値下げせずに、もしくは値下げ幅が小さいままで売り切ることが可能になる。

これが「店舗間移動」の基本的な考え方である。

 

 

先日、こんな記事を拝見した。

「売れ筋」は全店共通じゃない? “個店売れ筋”軽視に眠る売上拡大の伸びしろ

いや、何を当たり前のことを?としか思わなかった。

ただ、もしかすると衣料品業界以外の人には意外と知られていない事実なのかもしれない。

店舗ごと、地域ごとにある程度売れ筋が違うというのは、業界内では常識化しているといえる。今でも続いているのかどうかわからないが、昔は繊研新聞でも東京〇〇店と大阪〇〇店の売れ筋比較という記事が定期的に掲載されていたし、メンズファッション雑誌にも似たようなページが定期的にあった。

 

 

 

現在、多くの主要ブランドは自社インターネット通販を完備している。

その中でも特に店舗在庫を調べる機能が付いているブランドも少なからずある。その機能が最も使いやすいと感じるのがユニクロとジーユーの通販サイトである。

残存枚数まではわからないが、どの店には残っていてどの店には残っていないのかがわかる。当方は残っている店が近隣である場合、そこまで出向いて購入するのだが、この店舗在庫検索機能を見ても、各店で商品が均等に売れるわけではないということがわかる。

 

 

もちろん、超人気商品なら全店完売しているが、そうではない商品だとA店は完売しているがB店は豊富に残っているということは普通にある。

ということは店舗間で売れ筋商品や売れ筋商品の売れる速度が異なっているということになる。

 

 

で、この続きの記事は以下になる。

予測は無駄、物流費は惜しむな 「店間移動」で利益を取り戻せ!

ある店で欠品している商品の68%は他の店でダブついていて、その過剰在庫を必要な店舗に取り寄せれば欠品率は10%まで下げられるという話がありました。

店間移動にはもちろん、輸送コストがかかります。そのため、その在庫移動は本当にコストをかけてまでやる必要があるのか?が問題になり、物流経費だけを見ている管理部門からストップがかかったり、一方、店舗が他で売れる商品なら自店に置いておこうと、移動指示に従わないこともあります。その結果、せっかくプロパーで売れる販売チャンスを逃しているケースも少なくありません。

とある。

 

記事では店舗間移動の輸送経費を節約するために、初回配分の精度を高めようとする企業があると書かれているが、ある程度の精度向上は可能でも毎回的中させることは不可能だと思っている。そんなことができるなら業界で苦労する人は誰もいなくなる。

そこで、しまむらの事例が示される。

その一つがファッションセンターしまむらを展開するしまむら社です。同社では、初回配分の予測なんて当たりっこない、であれば売り始めてから、店舗間で在庫の過不足を調整すればよいと割り切ります。

初回配分はほぼ一律同数を全店に配分しそして、商品ごとの実際の売れ行きを見て、すぐに売れて欠品する店に、売れずに滞留している店から在庫を店間移動(同社では店間移送と呼ぶ)させて需要にあわせて在庫を最適化することをルーティン業務にしています。

とある。これは極めて合理的な施策だといえる。

 

 

ただし、この店舗間移動によって不振品番を処理できるのはチェーン店店舗が本社直営の場合である。国内のほとんどの大手チェーン店は大部分の店舗が本社直営なので店舗間移動の運用が可能になる。

A店の商品をB店に移動させたところで、本社が管理して資産に計上している在庫の量は変わらない。なら、どの店に移動させて売ったってかまわない。

だが、店舗数の95%前後がフランチャイズ店となるワークマンにはこの仕組みが無い。なぜなら、各店の商品は各店が自腹を切って仕入れた物だからである。屋号は同じでもA店とB店は全くの他人である。いくらB店で売れていようがA店が自腹で仕入れた〇〇品番をB店に送る義理は無い。

 

 

また、店舗間移動と同様の理屈で「他店からの取り寄せ」も成り立っている。

多くのチェーン店は〇〇品番が切れていて他店に残っている場合、お取り寄せできる場合が少なからずある。ユニクロ、ジーユーなんかは店頭で依頼すれば可能であり、実際にそれを利用したこともある。

これも各店が個人経営フランチャイズの場合は基本的には成り立たない。

 

 

先日、ワークマンがフランチャイズ経営者の募集に関して、法人を解禁した。作業服ではなく、カジュアルウェアを販売する場合、不振品番の処理をどうするのかが課題になる。作業服なら購入者の買い替えサイクルはある程度決まっているし、さほどファッション性も求められないから、今年残った商品でも来年には完売できる可能性が高い。しかし、嗜好品要素の強いカジュアルウェアはそうは行きにくい。それをなるべく値下げせずに処理するためには店舗間移動で好調店に集めるのが効果的である。その体制を構築するには法人による複数店舗のフランチャイズ経営が必要不可欠になる。

カジュアル販売を強化するワークマンが法人フランチャイズを解禁するのは当たり前の流れだといえる。

 

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