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南充浩 オフィシャルブログ

工場の人手不足も大きな課題だが、後継経営者不足も大きな課題だという話

2025年7月14日 製造加工業 0

先日、和歌山県高野口産地のオーヤパイルという生地工場が特別清算を行った。

オーヤパイル(株)(和歌山)/特別清算 織物製造 倒産要約版 | 倒産情報-JC-NET(ジェイシーネット)- 倒産・企業、政治・経済の情報サイト

 

 

当方は10年くらい前に3年間だけ、高野口産地総合展示会「ぷわぷわ」をお手伝いさせてもらったことがあり、その際にお世話になった工場の一つである。

特別清算が決定したのは今春のことだが、すでにコロナ禍が始まって少ししたころに関係者から「オーヤパイルさんが工場を閉鎖する方向で活動している」と耳にしていた。

そこから3~4年後に特別清算がやっと決定したというわけである。

 

 

先のサイトには以下のように状況が手短にまとめられている。

同社はパイル織物の生地および製品の製造会社、ほかに服飾雑貨も製造していた。海外の安価なパイル製品に押され、売上高の減少が続き、今般の新コロナ事態ではさらに売上不振に陥り、同社は2021年8月までに現業部門を停止、その後は機械や不動産の売却を進め、昨年6月に会社解散を決議し、今回の特別清算の適用申請となっていた。

この記事を信じるなら、4年前の21年に現業部門を停止していたことになる。現業部門を停止してから特別清算が開始されるまで4年もかかったというわけである。

 

 

この4年間に高野口産地関係者からパラパラと聞くと、経営者は自分の子息や親族に継がせることなく、特別清算を選んだという話である。

最近、経済メディアや業界メディアで叫ばれる「人手不足」とか「職人不足」が原因ではないということがわかる。逆に従業員はいたのである。従業員の中には展示会でお世話になった方もおられた。

工場を特別清算・廃業するときに最もネックになるのは、機械や建物の処分である。土地の売却は例外を除くとさほど難しくない。特に町や集落に近いと買い手はつきやすい。

しかし、機械類と建物をどう売却するか、もしくはどう廃棄するか、が課題となる場合が多い。

 

 

建物を壊すのにも多額の費用がかかるわけだし、織機や編み機、染色機などの機械は廃棄すると費用が発生するし、用途が限定されるため引き取り手も見つかりにくい。

中古自動車や中古の家具を売却するのとはわけが違う。

 

 

そして、今回の特別清算は、従業員不足や職人不足が課題ではなく、経営者の後継者不足に拠るところも大きい。

以前にも書いたが、いくら職人や従業員が多くても、経営者がいなくなるとその工場は終わりである。国内の繊維産業の工場の多くは「家業」として成り立っているものが多く、経営者が一族・親族が世襲している。

ただ、職業選択の自由アハハン♪という世の中だから、下の世代の子息や親族が必ず継ぐわけではない。

そうなると、廃業や特別清算にせざるを得ない。あとは、他社に身売りするか、現在いる従業員たちに株を買い取ってもらって従業員たちが後継経営者になるか、である。

 

 

以前、児島の洗い加工場「ニッセンファクトリー」で話を伺ったことがある。この洗い加工場は、創業家が娘さんだけになってしまい、その娘さんも工場を継ぐ気が無い男性と結婚したことで、従業員が株式を買い取ってその中から新たな経営者を決めて、存続している。ちなみに創業家との関係は現在も良好だと聞いている。

ただ、このような「従業員による買い取り」は当方の知る限りにおいては、さほど多くない。

当方も長らく従業員の立場にあったが、いろいろと不満はあるものの、経営者の立場に比べると格段にリスクは低い。なにせ、資金繰りに苦労する必要が無い。もちろん、解雇される可能性はあるが資金繰りによって借金を背負う心配は無い。

 

 

さらに、他社による工場買収も実現しづらい。

国内の繊維工場をわざわざ買収しようという企業は今のご時世ではかなり少ない。工場を買ったとて、上手く活用できる企業は少ない。メディアでは時々「繊維の〇〇工場を買収」という報道を見かけるが、あれはかなり少ない事例で、大半以上の工場は買収されずに、倒産か廃業か特別清算か、になるのが実態である。

 

 

以前にもこのブログで書いたようにメディアでは「人手不足」「職人の後継者難」ばかりが報じられていると感じてしまうが、実際は「工場経営者の後継者難」も相当数ある。他分野の工場はわからないが、繊維関係の工場では「経営者の後継難」は決して珍しくない。

60代・70代に差し掛かった工場経営者が「後継者がいないから、何年か後に引退する際には廃業しようと思っている」と語ることは少なくない。

他社に買収される繊維関係の国内工場は、稀有な例だと見た方が実状に近いといえる。

 

 

衣料品の国産比率の低下の原因の一つとして、工場で働く人の減少を挙げる報道が多いが、工場経営者の後継者不足も同時に報じる必要がある。

現在の国内工場の多くは、40~60代くらいの経営者に代替わりに成功しているが、20~30年後には今の経営者のほとんどが年齢的に引退を余儀なくされる。その際、後継者不足によって無くなってしまう工場は相当数になることだろう。それに伴って、国産比率はさらに低下することになるのは間違いない。

 

 

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