百貨店依存率が高すぎる三陽商会は中期経営計画の達成が難しいだろうという話
2025年7月3日 企業研究 0
先日、三陽商会の2026年2月期第1四半期決算が発表され、営業利益が95・1%減の大幅減益となっていて話題となった。
三陽商会が純利益93.8%減、インバウンド消費急減速で百貨店苦戦 2026年2月期第1四半期
三陽商会が、2026年2月期第1四半期決算(2025年3月〜5月)を発表した。売上高は145億800万円で、前年同期比で5.7%減少。営業利益は3600万円(前年同期比95.1%減)、純利益は3600万円(同93.8%減)といずれも大幅に減益した。
とある。
営業利益額はわずかに3600万円だから、赤字転落ギリギリといえる。
理由は見出しにもあるように百貨店のインバウンド売上高激減によるもので、百貨店の売上高構成比率が突出して高いことが三陽商会の変わらぬ弱点だということがわかる。
百貨店がコケると三陽商会も同時にコケることになるわけである。
2025年2月期決算の資料を見てみよう。
三陽商会(8011)の財務情報ならログミーFinance 三陽商会、営業利益率は計画達成・ROEも計画通り着地 10年後の長期目標達成に向けた新中計を公表 – ログミーファイナンス
このサイトの「チャネル別売上実績」というコーナーを見てもらいたい。
四半期ごとの実績と伸び率が書いてくれてあるが、めんどくさいので年間トータルの数字を見てみよう。
百貨店売上実績は391億900万円で、売り上げ構成比は実に64・6%にも上る。直営店の構成比はわずかに5・9%しかない。EC・通販が13・6%、アウトレットが12・0%、その他販路が3・9%となっている。
売上高の65%弱を百貨店に依存しているということがわかる。
また直営店も明らかに弱い。3・9%しかない「その他販路」とさして変わらない5・9%の構成比しかない。
それ以外の販路は「EC・通販」「アウトレット」しかない。どちらも13%とか12%程度の構成比しかない。
ショッピングセンターやファッションビル、総合スーパーなどの販路はほとんど無いことがわかる。
もちろん、高額ゾーンに特化した売り方という捉え方はできるが、それなら、例えば直営店とECの売上高をもっと増強させる手もあるだろう。
そして、前年比でいうと、百貨店が2%減、直営店が3%減と振るわない。トータル売上高も1%減に終わっている。
EC・通販とアウトレットは前年増となっているが、両方ともたったの1%増に過ぎない。構成比が小さいから1%増程度では焼け石に水で、全体の業績を補完できない。
要は、全チャネルが横ばいか微減に終わっているわけである。
これが2025年2月末までの三陽商会の業績だった。
2026年度はまだ4分の1が終わっただけだが、26年度は前年度にも増して厳しいスタートとなっている。
ちなみに26年2月期決算の目標値は据え置きで
売上高625億円
営業利益33億円
となっている。
ただ、売上高は目標値に届く可能性が低くはないが、営業利益額が目標値に届く可能性は限りなく低くなっているといえる。現時点での営業利益額はたったの3600万円しかない。これを単純に4倍してみると、とてもではないが33億円には届かない。残り四半期ごとに最低でも11億円ずつの営業利益額を稼ぐことが求められる。
第1四半期で3600万円しか営業利益を稼げなかった企業が、次以降の四半期ごとに11億円ずつ営業利益を残すことが可能だろうか?当方はかなり難しいと見ている。
さて、今回の記事では
同社は、今年4月に2026年2月期から2028年2月期にかけての新たな中期経営計画を発表。アッパーミドル市場での競争優位性を確保しながら事業規模の拡大およびポートフォリオの最適化を図り、2028年までに売上高700億円、10年後までに1000億円の達成を目指している。
と締められている。
これは今年4月時点でも各社であった報道の通りである。
28年度の売上高700億円は達成が厳しそうだが不可能ではないだろう。あと95億円の積み増しで到達できる。毎年30億円ずつの上積みで達成できることになる。ただ、毎年30億円増収するというハードルはそれなりに高い。
さらに、10年後の売上高1000億円はどうだろうか?あと400億円の積み増しが求められる。毎年40億円ずつの増収が求められるということになり、こちらは相当に難しいだろう。
これを到達するためには百貨店依存体質を改める必要がある。インバウンド販売が苦戦に転じたとはいえ、大手百貨店各社の決算は悪くない。むしろ微増収傾向である。そういう環境にありながら、三陽商会は微減収大幅減益に落ち込んでいるわけだから、百貨店販路での増収は限界を迎えていると言わざるを得ない。
付け加えると、大手百貨店各社は都心旗艦店の大幅増収が牽引して比較的好調な決算だが、地方・郊外店は苦戦傾向がつづいており、今後も閉店が相次ぐと考えられるので、決算は現時点がピークに近いと思われる。
そうなると、百貨店依存の三陽商会が毎年30億~40億円増収し続けるということは画に描いた餅にかなり近いといえるのではないか。
残り400億円の積み増しを達成するためには他の販路の売上高を拡大するほか手がないが、EC・通販も伸び悩んで横ばいが続いており、GMSやショッピングセンター、ファッションビル販路は皆無に近く、直営店売上高も小さい。
バーバリーショックの最悪期は脱したものの、三陽商会は現在掲げている中期経営計画を変更するか、他販路を著しく強化または開拓するか、どちらかしか方策は無い。ただ、どちらを選ぶにせよ、かなりの痛みを伴うことだけは間違いないだろう。