ブランドの買収・転売の頻度が高まってきたと感じた話
2025年6月27日 企業研究 0
「モモタロウジーンズ」などのジーンズブランドを展開するジャパンブルーをダイドーリミテッドが買収したという報道があった。
突然の報道だったので驚いたとともに、「また?」という感想も抱いた。
理由は、ジャパンブルーは22年1月に買収が発表されたばかりで、たったの3年強で転売された形になるからだ。
[お知らせ・企業情報] 【株主の異動と新経営体制への移行のお知らせ】 | japanblue(ジャパンブルー)|倉敷市児島発祥のジャパンブルーデニム&ジーンズ
株式会社ジャパンブルーは、株式会社刈田・アンド・カンパニー(以下「K&C」)のグループ会社が運営するK&C1号投資事業有限責任組合が当社の85%の株式を保有(以下、本件株式譲渡)すること、並びにK&C主導での新たな経営体制に移行することに2021年12月31日付で合意し、本日本件株式譲渡および新経営体制への移行を実施しましたので、下記の通りお知らせします。
とある。22年1月31日に掲載された告知である。
以前からも書いているように、ジャパンブルーは元々、デニム生地を中心とした生地商であるコレクトという企業が祖業で、その後、オリジナルジーンズの企画・製造・販売に進出したという経歴がある。
22年1月の発表によって、創業家から苅田・アンド・カンパニーが買収したというわけだが、今回はそこからさらにダイドーリミテッドが買収したということになるため「転売」というわけである。
22年1月の時点では
なお、創業者である真鍋寿男を筆頭とする既存株主らは引き続き15%の株式を保有しつつ、K&Cとの協力を進め、当社事業の更なる発展を支援して参ります。
とのことで、創業者たちが15%の株式を引き続き所有したままとなっていた。
今回のダイドーリミテッドへの転売については
ダイドーリミテッドは26日、「モモタロウジーンズ(MOMOTARO JEANS)」などを運営するジャパンブルー(岡山県倉敷市)の株式の80%を取得し、子会社にすると発表した。取得金額は約58億円。毛織物で発展したダイドーはスーツなどの重衣料アパレルを主力にするが、ジャパンブルーを傘下に入れることでジーンズカジュアルおよびデニム素材に事業領域を広げる。
と報道されている。
85%の株式のうちの80%をダイドーが買い取ったわけだから、恐らく創業者たちは15%の株式を保有し続けたままになるのではないかと考えられる。
さて、モモタロウジーンズのような非上場のこだわりメーカーの決算状況は開示されないが、今回はダイドーリミテッド側のプレスリリースで開示されているので、興味深く眺めてみたい。
22年8月期
売上高 22億9700万円
営業利益 1億2400万円
経常利益 1億4400万円
当期損益 9700万円の赤字
23年8月期
売上高 49億4100万円
営業利益 4億8600万円
経常利益 4億9300万円
当期利益 2億5200万円
24年8月期
売上高 54億4300万円
営業利益 4億5200万円
経常利益 4億4800万円
当期利益 2億7600万円
となっている。
22年8月期から23年8月期にかけて売上高が倍増している点についてだが、以下のように注釈がある。
株式会社ジャパンブルーは、2022年8月期より、決算日を2月28日から8月31日に変更しております。これに伴い、決算期変更の経過期間となる2022年8月期は、2022年3月1日から2022年8月31日までの6か月間となっております。
とのことで、半年分の変則決算なのでだいたい半分程度になっているわけである。
22年8月期の売上高を2倍すると売上高は約46億円となるため、23年8月期とほとんど変わらないことがわかる。ジャパンブルーの売り上げ規模は40億円台後半~50億円半ばを推移しているということが分かる。
24年8月期は売上高が約5億円増の54億円強となっているため、一見すると好調に見えるが、営業利益は3400万円の減収に転じているため、本業の利益率は悪化している。5億円の増収では諸々のコスト増は吸収しきれなかったと見るのが適切ではないかと思われる。
さて、ダイドーリミテッドの現状については記事で
一方、ダイドーリミテッドは衣料事業と不動産賃貸事業の2つの柱を持つ。衣料事業は「ニューヨーカー」のほか、21年に連結子会社化したブルックスブラザーズジャパン、中国の自社縫製工場、16年に買収した伊素材メーカーのポルテトルトなどで構成する。不動産賃貸事業は毛織物工場跡地の再開発で1993年に開業した大型ショッピングセンター、ダイナシティ(神奈川県小田原市)などを手掛ける。2025年3月期の業績は、売上高が前期比0.3%減の286億円、営業損益が6400万円の赤字(前年同期が4億4200万円の赤字)、純損益が24億8300万円の赤字(同2億9100万円の黒字)だった。
とまとめられており、直近の決算は微減収赤字という厳しい状況となっている。
また直近では株主と取締役選任について激しいバトルを繰り広げた経緯があり、
ダイドーリミテッドをめぐっては、昨年6月、11年連続営業赤字の同社に対してアクティビスト(物言う株主)のストラテジックキャピタルが経営陣の刷新を求めて応酬を繰り返す異例の事態になった。株主総会を経て、ダイドー側が推す取締役とストラテジック側が株主提案する取締役で構成された新体制がスタートし、経営の立て直しを進めている。
という状態で落ち着いている。
今回のジャパンブルー買収については、ダイドーが得意とするところのメンズスーツやメンズトラッドが、クールビズの定着と世界的なビジカジスタイルの定着によって、なかなか成長軌道に乗りにくいことから、ジーンズカジュアルブランドへの進出を模索したのではないかと思われる。
ジャパンブルーの商品はだいたい2万円台半ば~3万円台後半という比較的高価格帯なので、ダイドーが既存で展開している「ニューヨーカー」や「ブルックスブラザーズ」の価格帯と親和性が高いと判断したのだろう。
ただ、この目論見が的中するかどうかは今後の推移を見守らねばならない。
個人的には、買収後もジャパンブルーは現在の50億円内外から60億円くらいの売り上げ規模で推移し続けるのではないかと見ている。この手のジーンズブランドが100億円、200億円という成長軌道を描くという未来図が当方にはなかなか見えない。
それにしても近年はブランドの買収や転売が相次ぎ、過去の業界構図が大きく塗り替えられており、ブランドの買収や移籍が頻繁に起きる欧米社会に近い形になってきたと感じてしまう。