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南充浩 オフィシャルブログ

経営再建に向けた動きが対照的なライトオンとマックハウス

2025年6月20日 企業研究 1

たまに年配のカジュアル業界関係者にお会いすることがあるが、ライトオンとマックハウスが買収されてしまったことはいまだに話題に上る。

ライトオンはワールドに買収され、マックハウスは親会社のチヨダからジーエフホールディングスに売却された。両社とも奇しくも同時期の昨年秋に発表された。

理由は多くの方がご存知のように、両社ともに業績不振による。

両社の商品戦略、販売戦略の巧拙以前に、すでにジーンズを基調とした全国カジュアルチェーン店という業種そのものが成り立たなくなっているのではないかというのが個人的な意見である。

 

 

発表後、すでに半年以上が経過したわけだが、両社の動きは現時点では対照的といえる。

まず、ライトオンだが、現時点では新しい動きは何もない。たまに店頭を見に行くが、品揃えもさして変わらない。ただ、店内の商品陳列量は一時期に比べると減ったように感じる。

これは改革の一環なのか、単にキャッシュフロー改善のために仕入れ・製造量を抑えているのか、狙いは外部からではわからない。しかし、明らかに何らかの狙いがあって商品量を抑えているのではないかと思われる。

ただ、それ以外は何の動きもないように見える。すくなくとも外部からは。

もちろん、経営状態が債務超過寸前にまで破綻していたライトオンの再建策がそんなに短期間に策定できるはずもない。そんなに短期間に策定できるなら世の中のアパレルブランドやアパレル小売店の倒産はもっと減るだろう。

ワールドからするとこれまで一切馴染みの無かったジーンズカジュアルチェーン店というものの傾向を観察している段階なのではないだろうか。

あくまでも個人的な予想だが、1年間の傾向を観察した上で今秋か今冬くらいに何らかの再建策が発表されるのではないかと思っている。

 

 

 

一方、マックハウスは今月から大きく動いてきた。新しい親会社に動かされたというべきだろうか。

まず、新しい事業として金融・投資を発表した。暗号資産に投資するとのことで、

マックハウスがカイ気配スタート、暗号資産への投資発表で関心が向かう | 個別株 – 株探ニュース

同社は12日の取引終了後、新たな事業として金融・投資を開始すると発表した。暗号資産に投資し、ビットコインを保有することで財務健全性の向上を図るとしている。発表を受け、短期の値幅取りを狙った買いが集まったようだ。暗号資産のほか、上場企業の株式や債券などへの投資を実施し、キャピタルゲインやインカムゲインの獲得を目指す。またベンチャー企業への投資やM&Aアドバイザリー業務にも着手する。臨時株主総会での承認を経て開始することを予定。新事業の開始に伴う支出額は5億円程度を想定する。

とある。

 

また、続けてリカバリーウェアへの進出も発表した。

マックハウス、機能性繊維メーカーと提携 リカバリーウエア開発へ  – 日本経済新聞

18日、機能性繊維を開発するAddElm TECHNOLOGY(アドエルムテクノロジー、東京・渋谷)と業務提携したと発表した。スポーツ衣料などに使用される機能性繊維の技術を活用し、疲労回復を促すリカバリーウエアの共同開発を見据える。新たな顧客層にアピールする狙いだ。

アドエルムテクノロジーは機能性繊維の開発を手がける。国内のアパレルと協業し衣料品の共同開発にも取り組んでいる。

とのことで、この2つの新規事業計画によって、マックハウスの株価はストップ高となり、翌日にはストップ安になっており、投機筋に株価は大きく左右されている。

 

 

買収後の動きが対照的な両社だが、個人的には、慎重姿勢を見せているライトオンの方に好感触がある。ただ、これは何の根拠も無い勘である。

一方、マックハウスだが狙いはわからないではない。

正直なところ、ユニクロより上でセレクトショップより下の価格帯でジーンズ基調の全国カジュアルチェーン店という業態での再成長はライトオン、マックハウスともに望めないと思っている。

若い層にジーンズが復調基調ではあるとはいえ、カジュアルのコーディネイトの基本にジーンズを置く人は以前ほどには多くない。

 

 

スキニーブーム終焉まではジーンズをカジュアルコーディネイトの基本アイテムに据えていた人は男女ともに相当多かった。それから10年が経過した今、若い層がジーンズ回帰を見せてはいるものの、当方が大学生だった30年前ほどのジーンズへの傾倒ぶりは無い。

メンズでいうなら、スラックスありジョガーパンツあり、ミリタリーパンツあり、その中の1つにジーンズが加わっているという感じである。ジーンズ「が」いい、ではなく、ジーンズ「も」いい、というのが今のジーンズの立ち位置である。

レディースはトレンドの移り変わりがメンズよりも格段に速いので、今ジーンズに回帰している人が長期間ジーンズを支持してくれるわけではない。見捨てる時はいとも簡単にあっさりと見捨てる。

 

 

そう考えると、全く新しい分野に進出を決めたマックハウスの姿勢は理解できる。

暗号資産や金融のことはわからないが、ハイリターンが期待できるが同時にハイリスクでもある。その辺りに危険性を感じる。

一方、リカバリーウェアだが、現在のリカバリーウェア、特に睡眠時の疲労回復商品については市場が拡大しつつある。その原因は、老人層人口が増えていることにあると考えられる。

当方もそうだが老人になると若い頃に比べると睡眠が上手くとれなくなる。眠りが浅くなったり長時間睡眠ができなくなったりする。当然、肉体の疲労は蓄積する。

そのため、睡眠時の疲労回復ウェアは需要がある。老人人口が増えることで販売枚数は増えやすくなる。

 

 

そのため、新規参入できる余地はあるとマックハウスの親会社は考えたのだろう。

だが、リカバリーウェアにはすでに先行企業がひしめき合っている。テンシャルのバクネのように2万円台の商品から、ワークマンの2000・3000円台の商品まで存在する。

今からマックハウスが新規参入して一定の需要を確保するなら、価格訴求か高機能訴求しか勝ち目が無いと当方は考えている。

 

 

ワークマンと同等か少し上くらいの価格帯を訴求するのがまず1つ目の方策である。ワークマンと同等か下回るのが理想だが、マックハウスとその背景では恐らく実現は不可能だろう。

なので、少し上の4000~6000円台の商品で価格訴求をしてみてはどうか。この価格帯に著名な大手企業は知る限りでは参入できていない。ワークマンの次の安値はAokiの7900・8900円である。

 

次に1万円台・2万円台の高価格帯を狙うのであれば、先行している「バクネ」を上回るような高機能性を実現すべきだろう。既存商品の1・5倍くらい疲労が回復できます、というような高機能商品である。

ただ、どちらも実現するためには製造から販売、広報宣伝まで相当の工夫を凝らす必要はある。そこを理解して取り組めば大きな失敗はしないのではないかと思われるのだが。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2025/06/20(金) 11:51 AM

    【暗号資産に投資し、ビットコインを保有することで財務健全性の向上を図るとしている。】

    これはギャグじゃないなら、もう先行き見えてるって感じではないでしょうか?w
    ビットコインなんて乱高下するものは投資じゃなくて投機で、財務は不健全化するのでは?
    それか、なんか他に思惑があるのかもしれませんが、本気で健全化しようとしてるなら気が狂ってるとしか・・・(^_^;)

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