
ウール製品が市場から無くなりつつあると言われる理由
2025年6月18日 素材 0
6月16日からいきなり全国的に猛暑日が到来して、当方は完全な真夏スタイルに突入した。
ポリエステル素材の吸水速乾Tシャツを着て、合繊素材の半ズボンを穿くスタイルである。
湿度の高低にも左右されるが、当方の体感的には32度以上になるともう綿100%Tシャツでは汗の乾燥が間に合わなくなる。34度、35度では綿100%Tシャツを着続けることは当方にとって拷問に等しい。
夏の高温化・長期化は切実な問題で、当方がこの時期に買う服は吸水速乾素材以外だけである。例えば、ユニクロやジーユーで綿100%半袖Tシャツが590円・790円・990円で投げ売られていてもほとんど買うことが無い。理由は涼しくなるまで着用しないからである。
綿100%半袖Tシャツに目が向くのは9月に入ってからになる。
中高年男性は体感的に圧倒的に綿100%信者が多いのだが、当方は真夏の綿100%素材は興味の対象外である。肌の弱い方は綿100%の方が良いらしいのだが、そこまで肌が弱くないので、洗濯してもシワになりにくいという理由から、真夏以外でも合繊素材の長袖服を着ることが個人的には増えており、この嗜好はよほどの肌トラブルでも起きない限り死ぬまで変わらなさそうである。
今でも綿素材は好きだが、着用したいかと言われると首をかしげる。
吸水速乾の問題と、自身で洗濯と保管をするという両方の立場からすると、乾きにくくて洗濯するとシワになりやすい綿素材はめんどくさい素材だと感じるわけである。
好きだけれどわざわざ選ばないという点ではウールも当方にとっては同様の素材だといえる。
ウールも大好きで手元に過去に買った商品はいくつも残っている。また冬場はウールのセーターの暖かさを実感する。しかし、近年はウール素材商品を買うことが激減した。
セーターしかりブレザーしかりスーツしかり、である。
理由はめんどくさいからである。
洗濯に気を使うというのはもちろんのこと、個人的な最大の懸念は「虫食い」である。
入念に防虫剤を入れて保管しても虫に食われて穴が開いてしまうことが一定の確率で起きる。修理をしてくれるところもそんなに目に見えて多くはなさそうなので、泣く泣く捨てる羽目になる。
また、綿と異なり原材料の高騰によってウール製品が値上がりしているという理由もある。
以前にも書いたが、低価格帯ブランドでウール100%のセーターが残っているのはユニクロと無印良品ぐらいしかない。
そんな個人的な体感から市場全体でもウール製品は減少しているのではないかと感じていたが、この記事から、その公算が大きそうだと改めて思った。
シロセット加工、24年は100万点割れ 「ウールが市場から無くなりつつある」 | 繊研新聞
ウールのスラックスやスカートなどの耐久性折り目加工「シロセット加工」の業者で組織する全国シロセット加工業協同組合によると、24年1~12月の加工数量は前年比37.1%減の90万8732点と初めて100万点の大台を割った。主力のズボン主体のメンズが38%減の86万5338点だった。定時総会で明らかにした。
とのことで、シロセット加工の数量ベースでウール製品は前年比約40%減と激減している。特に2024年に大幅に減ったといえる。
ウール製のスラックスやスカートの耐久性折り目加工がシロセット加工だから、主にメンズのスーツやトラッド系のスラックスが主力だということがわかる。あとはレディースのパンツスーツのパンツやプリーツスカートだろう。
もちろん、ウール製衣料品はほかにも多々ある。これはシロセット加工を施す商品についてのことだが、恐らくはウール製衣料品そのものが減少傾向が続いているのではないかと思う。まさに「ウールが市場から無くなりつつある」といえる。
メンズのスーツやトラッドパンツについていうと、繊維業界関係者ですら「出張用のスーツやスラックスは合繊100%素材を選んでいる」という人が少なくない。理由は「シワにならない、なりにくい」からである。出張に出かけると長時間の移動がある。その際、長時間座っていてもシワになりにくいのは合繊素材である。また畳んでスーツケースやバッグに入れてもシワになりにくく移動しやすい。
いわゆる「トラベルスーツ類」「トラベルジャケット」「トラベルパンツ」と呼ばれる製品だ。
近年の技術進歩によって、見ただけではウールかどうか判別できない表面感の合繊素材も増えた。触るとバレるかもしれないが、そんなに頻繁に他人の身体に触ることは無い。当方なんて年に数回も無いだろう。
そして、出張用に限らず、これらを普段の仕事着として着用している人も増えた。
着用しない時の保管も便利である。シワになりにくい上に、防虫剤無しでも虫にも食われない。
ウール関係者はウールの良さをアピールし続けている。それはそれで必要なことだとは思うのだが、当方は「虫食い」という弱点を克服しない限り、ウール需要は今以上には伸びないのではないかと思っている。
ウールの愛好家はゼロにはならないしウール需要もゼロにはならないと思っているが、全体的なウール製品需要は今後も減り続けるだろう。
綿以上に保管に手間がかかるウール製品は原材料の高騰も相まって、最終的には少数のコアな愛好家たちが愛でるという趣味の逸品みたいな位置づけとして落ち着くのではないだろうか。そんな気がしている。