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南充浩 オフィシャルブログ

ネット通販に最も望まれているのは「安さ」と「利便性」になっているという話

2025年5月29日 ネット通販 3

コロナ禍による長期間の実店舗営業自粛によって、ネット通販が現在の物販業では不可欠であることが示されたわけだが、それから5年が経過し、ネット通販は「標準装備」であるものの、一時期に繊維・アパレル業界が夢想していたような必勝法ではなくなってきたといえる。

それはちょうど、実店舗と同様で、高水準の収益性を確保できている店もあれば、驚くほど売れない店があるのと同じ状態になっている。まあ、言ってみれば当たり前の状態に落ち着いてきたといえる。

2025年現在で「ネット通販をやったら絶対売れるんだ」と力説するような老害アパレル社長はほとんどいなくなったのではないだろうか。

 

 

 

消費者目線を欠かさないようにという思いもあり、趣味と実益と修業を兼ねて毎月ネット通販で何かを買うようにしているが、当方の心情的には「利便性が高くなければネット通販で買う必要が無い」と思うようになっている。逆に「絶対にネット通販で買いたい」と考える理由は1つも無い。

なぜなら、返品・交換の手間を考えると、実物を一度観たり触ったりしてから買う方が安全だから、できる限り実店舗で購入したいと当方は考えている。

当方がネット通販を使う理由は

1、安い(ネット通販限定値引きなど)

2、ポイントやクーポンが貯まる・使える

3、実店舗では売っていない物がある

4、持ち運びが不便な物(重い、大きいなど)

の4つがある。

 

当方には「ネット通販で買うという行為がカッコいい」なんて考えは1ミリも無い。ネット通販の価値も当方には上に挙げた4点以外は感じない。利便性が無くなればネット通販なんて消滅しても当方は構わないと思っている。

 

これまで、ネット通販に関するいろいろなアンケート調査記事をご紹介してきたが、消費者アンケート調査の結果はほぼ当方の嗜好と合致することが多かったが、今回のこの記事もほぼ当方の嗜好に合致している。

店頭よりもECを選ぶ理由は「価格の安さ」「ポイントで買える」。重視するポイントは「送料」【EC利用時の消費者心理】 | ネットショップ担当者フォーラム

直近1年以内に利用した通販の申し込み手段は、「インターネット(パソコン)」が74.2%だった。オンラインショッピングを利用する理由は「価格が安い」が最も多い。ECサイト利用時に重視する点は「送料が安い・無料」が70.3%となり、突出して多かった。

調査対象はマイボイスコムが運営するアンケートサイト「MyVoice」のアンケートモニター8947人で、調査期間は2025年4月1日~7日。

とのことである。

 

 

もう少し内容を見てみると、いくつか興味深いことがある。

直近1年間にオンラインショッピングを利用した人に、店頭ではなくオンラインショッピングで購入する場面を聞いたところ、最も多かったのは「価格が安い」で63.2%、続いて「たまったポイントで商品が買える」が40.8%、「クーポンやキャンペーンなどがある」が34.5%、「持ち帰りしにくいものを購入する」が30.6%だった。

とのことで、当方の嗜好がほぼこのアンケート結果に合致している。価格が安い、ポイントが使える、クーポンやキャンペーンのいずれも「いかに安く買えるか」ということであり、実際に当方が登録しているネット通販サイトもほぼ、何らかの値引き施策が最大の販促施策になっている。それはAmazon、楽天市場から始まり、アンドエスティ、アーバンリサーチ、ZOZOTOWNとて変わらない。ユニクロとジーユーだって頻繁に「オンライン限定 5000円以上お買い上げで500円引きクーポン」を送付してくる。

もっとも、ユニクロ、ジーユーのこの「500円クーポン」を当方はほとんど使わない。最大の理由は、1度に5000円以上の買い物をすることが滅多に無いからである。あるとするなら、防寒アウターが5990円に値引きされたときに買うくらいである。それ以外にユニクロとジーユーで1度に5000円以上の買い物をすることが無い。

 

 

 

また、

直近1年間にオンラインショッピングを利用した人の、ショッピングサイト利用時に重視する点は、「送料が安い・無料」が最多で70.3%、続いて「商品価格」「豊富な品揃え」が各60%台だった。

「割引サービス、キャンペーンなどが充実」「商品の説明がわかりやすい」「クチコミ・レビュー」「検索がしやすい」は女性で比率が高く、男女差が大きくなっているという。

とのことで、送料は購買に大きな影響を与えていることがわかる。だからこそ、多くのサイトは「〇〇円以上お買い上げで送料無料」という施策を打ち出しているのだろう。

当方もなるべく「〇〇円以上」にして送料を無料にするようにしている。唯一の例外は何万円購入しても送料無料にならないプレミアムバンダイである。しかし、プレミアムバンダイは実店舗で販売されないプレバン限定品があるので買わずにはいられないわけである。とはいえ、年に何度か不定期に発行される「送料無料クーポン」をなるべく使用するようにしている。

 

 

また、このほかにも「商品説明の分かりやすさ」「クチコミ・レビュー」も重要視されていることがわかる。前回でも書いたようにこの2点に関しては、ベイクルーズストアは最低レベルのまま留まっている。クチコミ・レビューはほとんど書かれていないし、商品説明も要領を得ない物が多い。これで本当に500億円も売れているのか疑問で仕方が無い。さらに言うと、ユニクロやジーユー、アンドエスティ、アーバンリサーチなど他社サイトがこの2点をどんどん充実させている現在の目で見ると、ベイクルーズストアが大きく見劣りしてしまう。

 

 

当方の嗜好とアンケート調査結果を合わせると、ネット通販自体にはそれほどの価値を消費者は感じておらず、なんらかのメリットが無ければ支持されないということがわかる。アパレルブランドの中には「ファッション雑誌やカタログ代わりに使われている」と思っている人もおられるのかもしれないが、説明文があやふやなら代わりにすらならない。

それにしても、かつて業界内で叫ばれていた「ネット通販は収益性が高い」という構図は最早当てはまらなくなっている。アンケート結果にも見えるように、安さや送料無料、ポイント値引きを求める消費者が最多であるため、利益率は低下せざるを得ない。また、ネット周りの人件費や設備費も年々上昇している。

 

 

それが証拠に、先月・今月とネット通販に力を入れていた2社が経営破綻している。

「イーザッカマニアストアーズ」のズーティー、破産手続きへ 「楽天SOY総合4位」の有力店に何が、業界にも波紋 | 日本ネット経済新聞|新聞×ウェブでEC&流通のデジタル化をリード

 

株式会社ロイヤル|株式会社 帝国データバンク[TDB]

 

両社ともにネット通販には力を入れており、特にズーティーは23年9月期までには実店舗を閉鎖してネット通販だけになっていた。またロイヤルもネット通販は堅調だったと報じられていたものの、円安による仕入れコスト増大などによるコスト増で支えきれなかったと報道されている。

ということは、ネット通販の収益性は実店舗並みに低くなっているということが推測できる。

消費者の志向も相まって「ネット通販は高収益」という構図は成り立たなくなったということを認識して事業に取り組む必要があるのではないだろうか。

 

 

 

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 comment
  • 細野 より: 2025/05/29(木) 12:57 PM

    ズーティーの破綻には私も驚きました。でもたしかに最近、質の低下が気になって、自然と買わなくなってました。6〜7年くらい前までは結構買ってました。

    ネット通販、便利なようでいて、段ボールのゴミがすごい増えるのが面倒です。そしてゴミ捨て場に捨てるときに1番大変なのが段ボールです。収集日までそれを取っておくスペースも必要になります。

    洋服に関しては、ネットの表記はあまりにも情報が少なすぎるんです。とくに素材の質感や厚み、どの季節に着られるものなのか、普通書いておいてもおかしくない内容なのになんで書いてないんだろうって思います。結局、ネットで買うのを控えてできる限り実店舗で買うようになりました。それでも、普通の店にはおいてなさそうな珍しいデザインだったら、サイズや素材を少ない情報から、名探偵コナンのように、推理しながら買っています。

  • とおりすがりのオッサン より: 2025/05/30(金) 11:06 AM

    生地の厚みとかは伝え方が難しそうですが、どの季節の服なのかは書いておいて欲しいですね。
    そもそも、そこはマーチャンダイジングで一番最初に決めてあるはずでしょうしw

  • 細野 より: 2025/05/30(金) 8:08 PM

    レビューでお客さんに色々書いてもらって、ポイントをあげるとか有りますけど、はじめから、ちゃんと説明書いておけば、お客さんだってレビュー見なくても安心して買えるじゃないですか。

    厳しく言ってしまいますが、売っている方が商品説明に対する責任放棄しているように思います。

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