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南充浩 オフィシャルブログ

フォーマットやマニュアルという基本を定めることの重要性

2025年5月27日 決算 0

スーパーの衣料品が概して苦戦し続けている。

イトーヨーカドーなんて肌着・靴下・パジャマ類以外のカジュアルをアダストリアに丸投げする形に移行したことは報道されていて随分と知られている。

改良できなくもなかったのだろうが、外部に丸投げした方がマシと判断できる部分があるほどに苦戦したという見方もできる。

 

 

メディアも消費者もスーパーの衣料品については、「メディア露出ガ」とか「商品デザインが」とか「広告宣伝ガ」とか、そのような指摘・認識をする場合が多いが、実はもしかしたらもっと基本的な業務ができていないのではないかと考えられる節もある。

土台がしっかりしていないのに飛び道具を使うことはできないわけである。

50代になって思うことは、何事も「凡事徹底」「当たり前のことを当たり前に」である。もちろん、当方もできていないグループに含まれるのだが、基本ができていないのは人であれ組織であれ勝てない場合が多い。

 

 

そんな中、平和堂の衣料品に関してこんな驚くべき記事が掲載された。

平和堂、衣料品部門の今期売上高260億円を計画 売り場のフォーマット化を推進 | 繊研新聞

量販店の平和堂(滋賀県彦根市)は今期(26年2月期)、単体の衣料品で売上高が前期比5%増となる260億円、粗利益率は0.1ポイント改善の37%を計画する。今期も衣料品売り場の拡大はないが、既存店の活性化に注力する。「中期経営計画でも柱としている売り場のフォーマット化を進める」(藤田幸之助執行役員衣住統括)方針だ。

衣料品売り場ではレディス「ルカキューブ」、メンズ「レイクロード」、服飾雑貨「グッズデポ」といったショップ形態を揃えた。これまでは各店でばらばらにバイイングしていた部分も多かったが、共通した基本的フォーマットを決めて、30~40代の子育て世代向け対応を強めた。

フォーマット化は昨年秋で既存店6割ほどが終了しており、今年春では70~75%に達する予定。「フォーマット化で各店発注が減るため在庫が縮小し、値引き販売が減り粗利益率も改善できる」と期待する。

 

とのことだが、びっくりしすぎて声も出ない。

 

 

平和堂というと滋賀を拠点に関西、北陸、中部などで展開する中堅スーパーである。ちなみに25年2月期の連結売上高は4448億9800万円だから、そこそこの規模感がある。

4400億円規模の小売りチェーン店が「フォーマットを決めていなかった」というのは驚くほど無策だったといえる。

新興企業ならまだわかる。フォーマット化はこれから取り組むべき課題だからだ。しかし、平和堂の場合、創業から70年以上も経過しているし、スーパーマーケット業態になってからも59年が経過している。半世紀以上もフォーマットを定めていないというのは驚くほかない。

 

 

マーチャンダイジングの基本中の基本として「標準店を定めよう」というものがある。大型店、中型店、小型店でそれぞれ基準となる「標準店の在り方」を設定し、それに応じて店舗内のレイアウトや品ぞろえを定める。

基準が定められていないと、店長やバイヤー、販売員などの個人的属性に依存した店作り、品揃えになってしまう。これがオーナー経営の個人店ならそれでもかまわない。しかし、大規模チェーン店となると、そんな属人的な店作りや品揃え、管理体制では企業として成り立たない。

人事異動があるたびに店作りも品揃えも管理体制も根本から変わってしまう。チェーン店としてはそれでは困るのである。

だからマニュアル化し、フォーマット化することが必要不可欠となる。

 

 

もちろん、店長、バイヤー、は個人個人の感覚が異なる。それを売り場や品揃えに反映することは重要だが、あくまでもマニュアルやフォーマットを踏まえたその上で、である。

フォーマット無しに店長やバイヤーの属人性に依存して店作りや品揃えをすることは危険極まりない。そりゃ衣料品の業績が伸びなくても当然である。

こんな当たり前のことを半世紀以上もやっていないということが驚きである。

 

 

ちなみに、平和堂の25年2月期連結のセグメント別の業績を見てみよう。

q4_shiryo.pdf

生鮮食品、一般食品、衣料品、住居関連品の4部門があるが、このうち前年実績を下回っているのは衣料品だけである。

生鮮食品が前年比7・6%増、一般食品が同5・6%増、衣料品が同1・1%減、住居関連品が同1・9%増となっている。もちろん値上がりや価格高騰の影響はあるだろうが、それは衣料品とて同じなわけだから衣料品だけが前年割れとなっていることの言い訳にはならない。

やはり、半世紀以上もフォーマットを決めていなかった「ずぼらさ」の象徴といえるのではないか。

 

 

ちなみに衣料品の25年2月期も既存店昨対は1・5%減だが、24年2月期の既存店昨対も1・0%減だから、前年割れの前年割れということになり、既存店の昨昨対だと2・5%減となってしまう。

スーパーの衣料品に対する需要は落ちていて、ユニクロ・ジーユー・しまむらあたりに客を奪われているという見方もできるが、それらで買うよりもスーパーで手軽に買いたいと思う客はまだ存在する。食品はさておき、住居関連品でいえば、競合にニトリがあるにもかかわらず、前年増が達成できている。とすると、衣料品だって前年維持くらいは可能だろう。

 

 

フォーマット化するという基本中の基本を半世紀以上も怠ってきたことのツケではないだろうか。

商品デザインとかセンスwとか、広告宣伝とか、SNS(笑)とかにこだわるよりもまずフォーマット化という基本を固めるべきだろう。

今回の平和堂のフォーマット化にかかわらず、凡事徹底ができていない大手・中堅のスーパーマーケットは他にも少なからずあるのではないだろうか。

 

 

 

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