
はるやまのレディースカジュアル新ブランドは前回の失敗を雪辱できるか?
2025年5月23日 企業研究 1
スーツの大手4社といえば、青山商事、AOKI(めんどくさいから以後アオキで)、コナカ、はるやま、だが、青山・アオキとコナカ・はるやまには明確な差がある。
青山とアオキは、スーツ販売以外に飲食店などの異業種を多数抱えており、異業種の売上高によって企業規模を維持している。
一方、コナカとはるやまはアパレルにほぼ特化しており、飲食店などの異業種が無い。そのため、厳しい決算内容が続いている。
繰り返すまでもないが、クールビズの定着、コロナ禍の在宅ワークを経た一層のカジュアルスタイル化、現役世代の人口減少、などによってビジネススーツの需要は減少し続けている。従来型のスーツ販売によって企業規模を維持するには、他社から客を奪う、客単価を大幅に上げる、くらいしか方法がない。
そのため、青山とアオキは異業種で補填しているわけだが、コナカ・はるやまが厳しいのは異業種が皆無に等しいことにある。もちろん、今から異業種を育てるという手はあるが、物になるまでには長い年月が必要となる。
となると、衣料品で新しい分野を始めた方がまだ即効性があるのではないか?そういう考えに至ることはやむを得ないだろう。
大手4社はすでにメンズスーツ、レディーススーツ、メンズビジカジ、一部レディースビジカジは主力商品である。ただ、最大の市場であるレディースカジュアルはまだ手つかずである。
そうなると、レディースカジュアルに挑戦しようと考えることはこれまたやむを得ないのだろう。
はるやま商事からウィメンズブランド誕生 カジュアルウェアを幅広く展開
はるやま商事が、ウィメンズブランド「マスカット(Muscat)」を始動した。同社が展開するブランド「パーフェクト スーツ ファクトリー(Perfect Suit Factory)」のゾゾタウン(ZOZOTOWN)ショップで取り扱っている。
マスカットは、スーツを中心としたビジネスウェアを展開してきたはるやま商事が、働き方やライフスタイルの多様化に伴うカジュアルスタイルへのニーズの高まりを受けて立ち上げた新ブランド。仕事のオンオフにとらわれない、毎日着られてどこにでも着ていけるウィメンズウェアを展開していく。
とのことだ。
内容的には
マスカットは、スーツを中心としたビジネスウェアを展開してきたはるやま商事が、働き方やライフスタイルの多様化に伴うカジュアルスタイルへのニーズの高まりを受けて立ち上げた新ブランド。仕事のオンオフにとらわれない、毎日着られてどこにでも着ていけるウィメンズウェアを展開していく。
ファーストコレクションでは、綺麗めカジュアルなデザインのジャケット(9900円)やカットソー(5280円)、シャツ(7700円)、Tシャツ(5500円)、ニット(5940円)、ワンピース(6930円)、デニムパンツ(9900円)、ロングスカート(6380円)などをラインナップ。現在はゾゾタウンのみでの取り扱いだが、将来的には自社ECサイトや店舗での展開も視野に入れている。
とある。
商品画像を見ると、「ガチ」のレディースカジュアルで、ターゲット層は恐らく20代後半から30代半ばくらいではないかと思われ、業界でいうところの花形市場である。
だが、これまでスーツ関係の企業、ブランドがカジュアル、特にレディースカジュアルを大々的に成功させたことはほとんどない。ついでに純粋なメンズカジュアルもほとんど成功していない。
マーチャンダイジングからVMD、販促、広報、までスーツやビジカジとは手法が大きく異なる。そのため、これまで成功例が無かった。運営するには専用の人員が必要不可欠になる。
完全なる推測だが、はるやまは今回の新ブランドに関して、それ専用の人員は確保しているのだろう。だが専用の人員が確実に効果を発揮する保証はない。外部から招聘した人員と経営者やプロパー社員の思想が根本的に違い過ぎて合わないという話は業界内で珍しくない。それで短命に終わったブランドは多々ある。
はるやまがどこまで、新しい人員を上手く使いこなせるか、である。
懸念はそれだけではない。
はるやまは過去にもカジュアルブランドに挑戦して失敗している。その当時は経営破綻したブランドを買収するという手法だったが。
2016年ごろから、はるやまは突如として経営破綻したブランドを買い始めた。理由は、主力である男女スーツ市場に限界を感じたからではないかと推察している。
経営破綻したテット・オム、ジャヴァの買収によって整理されたストララッジョ、今は亡き遊心クリエイションから買収したイーブス、という具合だ。
ただ、どのブランドも3年ほどで手放しており、ストララッジョは廃止されている。
2019年3月にはテットオムを岐阜の物流会社、ジーエフホールディングスの子会社に売却している。また、同じく2019年3月には当時「イーブスサプライ」と微妙にブランド名を変えていたイーブスをこれまた岐阜のBMホールディングスの子会社に売却している。ちなみに「BM」とはブルーメイトの略称から来ていると思われる。
現在、イーブスはBMホールディングスの子会社であるブルーメイト販売が運営展開しており、東京、地元の中部、関西に合計15店舗展開している。出店先はイオンモールなどのショッピングセンターである。それとネット通販である。
3年ほどで両ブランドともに手放して、1ブランドを廃止しているわけだから、よほど売れなかったのだろう。
過去に一度チャレンジをして失敗したことをまた繰り返すのか、それとも前回の失敗を検証修正して臨むのか、注意深く観察してみたいと思う。
それにしても、今回の新ブランド「マスカット」の価格帯は現在のイーブスとほぼ同等だから、新ブランドを立ち上げるくらいならそもそもイーブスを売却する必要は無かったのではないか?と思えてならない。
完全に与太話だが、この「マスカット」という新ブランド名は、もしかしたら、はるやまが岡山本社だから岡山の名産品であるブドウとかけたのだろうか?とふと思ってしまった。
当たればデカいが、成功する確率も低いというハイリスクハイリターンの市場がレディースカジュアルだが、はるやまは過去の雪辱を果たすことができるのだろうか。今回はZOZOTOWN内でのネット通販からスタートするという慎重さを見せているので、前回の轍は踏まないと思えるのだが、果たして。
>この「マスカット」という新ブランド名は、もしかしたら、はるやまが岡山本社だから岡山の名産品であるブドウとかけたのだろうか?とふと思ってしまった。
東北エリアの店舗を紳士服マスカットって名乗っており、店舗名の由来が本社が岡山だから。と聞いたことがありますので間違いではなさそうです。
その紳士服マスカットの屋号も去年で無くなったようですので、
https://www.haruyama-co.jp/news/pdf/201412_17734_1.pdf
そのまま新しいブランド名に流用したのかもですね。