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南充浩 オフィシャルブログ

規模の拡大には「ライト層」の取り込みが必要不可欠だと感じた話

2025年5月14日 売り場探訪 0

ビジネス規模を大きく拡大するためには、基本的に「ライト層」の取り込みが必要不可欠だといえる。

もちろん、コアなマニア層を相手にするというビジネスも成立するが、その場合、多くはビジネス規模はさほど大きくならない。ならないと言うより、なれないと言う方が正確だろうと思っている。

環境問題意識の高まりから近年は古着に関する提言がなされることが増えた。

 

古着業界にはさほど詳しくないが、外野からたまに眺めてきた感想でいうと、スタープレイヤーはときどき出てきたが巨大化した企業は無かったという印象がある。

通常のアパレル業界のような巨大企業は古着においては存在していなかった。古着出身というとウィゴーがあるが、企業規模の拡大のためにはSPA化した。スピンズもそうで、今は亡きハンジローもそうだった。

一時期注目を集めた古着の量り売りも一過性に過ぎず、消えて行った某企業もあった。

それが2010年頃までの当方が受けた古着業界の印象である。

 

現在、古着の最大手というとゲオホールディングスの「セカンドストリート」だろう。4月下旬には、国内外で1000店舗を達成している。

セカンドストリート、国内外1,000店舗突破!1996年の創業から約30年、国内外でさらなる展開に向け前進 | 株式会社ゲオホールディングスのプレスリリース

セカンドストリートは2025年3月末時点で国内に880店舗、海外4カ国で100店舗以上を展開しており、米国47店舗、台湾39店舗、マレーシア23店舗、タイ4店鋪を運営しています。2025年には新たに2カ国へ進出し、4月29日(火)にシンガポールに初出店、5月9日(金)には香港に初出店します。

とのことで、国内880店舗は日本においては圧倒的な店舗数である。

通常のアパレル販売と比較すると、セカンドストリートよりも店舗数が多いのは、しまむら、ワークマンくらいしかない。ユニクロでさえセカンドストリートよりは90店舗強少ない。(25年2月末時点792店舗)

 

 

セカンドストリートの利点は、都心中心部にも郊外ロードサイドにも満遍なくあるところだと思う。しまむら、ワークマンは都心中心部に店舗が少ない。セカンドストリートはバランス的にはユニクロに近い。

この店舗立地に関しては、あくまでも想像だが、かつてのレンタルビデオ店をセカンドストリートに変更して行った結果ではないかと思う。実際、当方の自宅の近くのロードサイドにもセカンドストリートがあるが、そこも以前はレンタルビデオ店「ゲオ」だった。

レンタルビデオ店の衰退によって、ゲオにせよツタヤにせよ、新たな取り組みを模索したが、ゲオの場合はセカンドストリートへの転換という部分が大きかったと考えられる。

 

 

 

そんなわけで、先日、久しぶりに自宅近所のロードサイドのゲオに行ってみた。

ちょうど、ゴールデンウィークの合間の平日午後だった。世間的にいえば、仕事をしている人も大勢おられただろうが、大型連休中の人もそれなりにいたと思われる。

そんなわけで、通常の平日の午後よりは入店客が多かったと感じたが、入店客層を見ると、ファッションにあまり興味の無さそうな人がほとんどだった。だいたい推定50代後半~60代後半と思われる男女が多かった。言ってみれば普通のオジサン・オバサンである。消費者としてもファッションに興味はあまり無さそうだし、ファッション系の仕事をしている(いた)とも思えない。そんな風体である。

 

 

次に印象的だったのが、販売価格の安さである。ハンガーバーに大量にかかっているトップス類(カットソー、スエットなど)は500円、700円、900円が多く、中には値札からさらに半額になっているものも多かった。250円、350円、450円である。

これほどの安さならジーユー、ワークマンよりも安い。ジーユーの最終処分品が590円なのでそれとほぼ同等だが、半額となるとこれを大きく下回る。

もちろん古着なので、色も柄もデザインも不ぞろいでサイズも無い。その1枚が合うかどうかであるが、合えば圧倒的にお買い得である。

 

 

とはいえ、セカンドストリートは店舗によって並んでいる商品も異なるし、客層も異なるので、全店舗に当てはまるわけではないだろう。

しかし、通常の古着屋というと、小型店で、変わった風体の店主や店員が多く、ファッションに興味のある客層しか入りにくいというイメージが強い。気の弱い当方はアメリカ村の古着屋には気軽に入ることができない。また、アメリカ村の古着屋を見ていると、圧倒的に価格が安いわけではない。

そうなると、コアなファン層しか顧客化しにくい。

 

 

これまで古着屋に大規模なチェーン店が出現できなかったのはそのためではないかと思っている。

一方、その古着分野においてセカンドストリートがここまで大規模チェーン店化した理由は

1、ライト層が入店しやすい

2、圧倒的に安い商品が豊富

ではないかと見ている。もちろん、それ以外の要素もあるだろうが、当方はこの2点が大きいと感じる。

 

ファッションに興味の無さそうなオジサン・オバサンがフラッと入店して安い商品を物色しやすいというのは、店としてはカッコヨクはないが、当方のような初心者・ライト層には敷居が低い。敷居が低いと多くの客が入りやすい。必然的に売上高が増える可能性が高くなる。

 

 

かつて、新日本プロレスの再建を目指したブシロードの社長が「マニア層が分野を滅ぼす」として、ライト層の取り込みを図ったが、それは他の分野にも当てはまる。

ビジネス規模を大きく拡大したいのであればどの分野であれ、ライト層を取り込む必要性がある。なぜなら、世の中の人口の大半はライト層だからである。

もちろん、ビジネス規模を拡大することだけが正解ではない。売り上げ規模の拡大をさほど求めずにマニア層やコア層だけを相手にするのも正解である。要は事業主がどちらを志向するかである。

マニア層・コア層を目指しながら「でも大衆にも受けたい」というのは単なる実現不可能なわがままでしかない。

 

 

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