オフプライス業態で正反対の施策を採る「ラックラック」と「ローカスト」
2025年4月23日 トレンド 0
メディアや識者の期待(ポジショントーク?)に反してオフプライスストアという業態は我が国ではさほど増えていない。
その理由は様々あるが、消費者の視点からいえばアウトレットストアと区別がつきにくく、需要が高まりにくいこともあるのではないかと思う。
アウトレットがあればオフプライスストアは要らないし、そもそも区別ができにくいという消費者は多いのではないか。
そんなオフプライスストアの中で突出しているのがゲオグループの「ラックラック」で追随しているのがパルの「ローカスト」といえる。店舗数は4月20日の時点でラックラックが29店舗、ローカスとが17店舗である。
この2つが順調に店舗数を増やしており、メディアや識者が注目するワールド、オンワードは店舗数が増えていない。
さて、前回に引き続きそのゲオの「ラックラック」を取り上げた記事を引用したい。
なぜゲオは“売れ残り”に目をつけた? 「ラックラック」の在庫を武器にした稼ぎ方:火曜日に「へえ」な話(1/4 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
この記事の中で、ラックラックの売れ行きが改善した理由を2つ挙げているが、その2つ目が興味深い。
実験の2つめは、ハイブランドとデザイナーズブランドの廃止である。先ほど紹介したように、当初のラックラックではハイブランドやデザイナーズブランドを扱っていた。しかし、ある課題を感じていた。
「東京の都市部の店では、ハイブランドはそこそこ売れていましたが、郊外の店では苦戦していまして。お客さまが『高い』と感じられたのかもしれません。ボリュームゾーンを2000~5000円に設定したところ、売り上げは大幅に伸びました」(ラックラックのOPS宣伝販促課・中村雅美さん)
当初は誰もが知っているようなブランドを扱っていたが、元値が高い。7割引き、8割引きにしても、価格はどうしても高くなる。1万円を超えると、お客は「高い」と感じるようで、そうした商品は苦戦していた。
というわけで、実験店ではハイブランドの扱いを止めたところ、売り上げがアップ。この成果を受けて、ラックラックでは2023~24年にかけて「店内のレイアウトを変更+ハイブランドの廃止」を進めていった。
で、結果はどうだったのか。2024年度の売り上げは前年比120%を達成。店舗数は4月末現在で29店だが、今年度は20店の出店を計画している。
とある。
この「ハイブランドの取り扱いをやめてみた」というところが興味深い。通常のアパレル業界人や業界経験者とは逆の発想である。当方の知っている業界人の多くは「ブランド価値を高めたい」として「ハイブランド」を取り扱うことを望んでいる。恐らく、ゲオの内部にも業界経験者はおられるのだろうが、その数は少ないのではないかと思う。特に意思決定者は業界人特有の思想にあまり染まっていないと思われる。
廃止した理由は「値段が高くなる」からである。元値が10万円する物をいくら7割引き・8割引きで売っても3万円・2万円もする。これらを好む消費者というのは業界人に近い感覚を持っているか、いわゆるブランド好きか、に限られており、総人口が多い東京都内にはそこそこ存在するのかもしれないが、人口が少ない他地域ではごく少数派でしかない。東京都内の数寄者だってもしかしたら総人口との比率では他地域と同じ程度かもしれない。
全国展開するためには「ある程度の安値」が必要だとゲオは考えたというわけである。
一方、この「ラックラック」の動きと正反対の施策を打ち出そうとしているのが「ローカスト」である。
プレスリリース:株式会社ローカスト、新アパレルブランド「LOCUST+(ローカストプラス)」を発表。新宿マルイ本館7Fに2025年4月25日にOPEN(PR TIMES) | 毎日新聞
ハイブランドからデザイナーズブランドなど、約100ブランドを取り扱い、これまで手が届かなかった有名ブランドもお求めやすい価格で提供します。
としており、画像では特に「エルメス」「プラダ」「メゾンマルジェラ」「マルニ」「ミュウミュウ」などのハイブランドが確認できる。
アディダスやナイキなどは恐らく「ラックラック」でも取り扱っているブランドだろうが、先述したようなハイブランドを積極的に取り扱うのは対照的といえる。
パルが出資しているので、ローカスト内部にはパル関係者や業界経験者が多数派を占めているのだと推測できる。そのため、東京都心狙いの施策としてこの「ハイブランド化」が実行されたのではないかと思われる。
さて、ラックラックとローカストのどちらが正しいのだろうか。
ターゲット層と企業規模の設定によって、どちらも正解だといえる。ラックラックは全国展開を考えており、マス層やライト層の取り込みを重視しているのだろう。一方、ローカストは今回東京都心の新宿という土地に出店するにあたってハイブランド化を打ち出してきた。ということは、大都心立地でブランド好きな層を狙って来たと考えられる。
全国展開してマス層・ライト層を狙うにはこの戦略は全く不向きだが、東京都心や横浜市内、大阪市内、名古屋市内のような超大都心ならハイブランド好きの人口もそこそこ多いので成り立つだろう。
問題はこのやり方で地方も含めた全国展開を目指した場合、失敗する可能性が極めて高いという点である。その点を見誤らなければ大丈夫だろう。
ラックラックが今後変な色気を出すことは無いと思われるが、ローカストがアパレル業界人特有の山っ気を出さないかどうかが気になる。まあ、ローカストが凡事徹底で堅実路線を踏み外さないことを外野から願うばかりである。