MENU

南充浩 オフィシャルブログ

オフプライスストアが期待されたほどは拡大しにくい理由を考えてみた

2025年4月22日 トレンド 0

2020年春のコロナ禍の少し前くらいから業界メディアで盛り上がっていたオフプライスストアだが、現在のところメディアの報道ベースではさほど盛り上がっていないように見えるし、メディアの報道も激減しているように見える。なんと熱しやすく冷めやすいことか。

消費者の需要もさほど大きくないと個人的に感じている。

大手アパレルも参入したもののあまり店舗数は増えておらず、この「オフプライスストア」という業態において現時点で国内の覇権を握っているのはゲオの「ラックラック」だと当方は見ている。店舗数も現時点で29店舗と最多である。

 

 

なぜゲオは“売れ残り”に目をつけた? 「ラックラック」の在庫を武器にした稼ぎ方:火曜日に「へえ」な話(1/4 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

この記事は言葉遣いが平易でわかりやすかった。

このように説明しても「うーん、分かったような、分からないような。アウトレットとどう違うの?」と感じられたかもしれない。最大の違いは、アウトレットは売る側がメーカー、オフプライスストアは買い取って売る小売業者であることだ。

と定義しており、わかりやすいものの、国内の現状とはいささか齟齬があるように感じられる。しかし、定義無しには何事も分類できないのでこれはこれでありなのではないかと思う。

オフプライスストアへの参入が早期だったのは、ワールドの合弁会社「アンドブリッジ」ではないかと思う。しかし、現時点では公式サイトで数えた限りでは全国に8店舗しかない。

またワールドと並ぶ総合アパレルの雄であるオンワードも参入しているが「オンワードグリーンストア」はたったの4店舗しかない。

出店ノウハウの豊富なこの大手2社でさえ、出店が完全に停滞している状態にある。

 

 

 

一方、やや後発ながら店舗数を急速に拡大しているのが、パルグループが出資する「ローカスト」で22年10月に1号店を開設して以来、現時点で公式サイトによると17店舗にまで拡大している。店舗数だけでいうとアンドブリッジ、オンワードグリーンストアをはるかに引き離して、ラックラックに迫る勢いである。

しかし、先述の記事によるとゲオは「ラックラック」を今年度は20店舗出店する計画を打ち出しているとのことで、これが実現すれば退店が無かったとして店舗数は一気に49店舗にまで拡大するので、ラックラックの業界内覇権は当面は変わらなさそうだ。

 

 

とはいえ、ゲオとて29店舗体制にするまでコロナ禍があったとはいえ、結構な年数がかかっている。ではなぜ、各社ともにオフプライスストアの出店が鈍いのかを考えてみたい。

個人的に思いつくのは大きく2つである。

1、販売用商品の確保が不安定であること

2、同業他社に売れ残り在庫を払い下げたくないという心理的抵抗

である。もちろん、これ以外にも理由はあるだろうから、ご存知の方はぜひともお教えいただきたい。

 

 

まず、1について。

オフプライスストアというのは基本的には売れ残った在庫品を安く仕入れて安く販売する売り方である。そのため、売れ残り在庫が必ず必要になるが、売れ残り在庫の量は一定しない。多い時期もあれば少ない時期もある。正規店舗の売れ行きが好調であればあるほど少なくなる。引き取る在庫の量が一定しないと出店ペースも一定にはできにくい。正規の仕入れ型店舗やSPA型店舗とはここが大きく異なる。

さらにいうと、2020年以降は正規店舗での不良在庫が極力生じないように各社ともに商品MDの精度を高めたり、仕入れ量・製造量を少なめにしており、売れ残り在庫が出にくくなっている。

以前にも書いたが、当方が7年間お世話になった在庫処分店「ラックドゥ」の社長によると、引き取る売れ残り在庫量が年々減少しているとのことで「以前は1社で1万枚くらい引き取ることもあったが、今では1社200枚とか300枚程度が多い」状態にある。それだけ正規商品の供給量が減っているとともに売れ残り品も減っているということになる。そしてその売れ残り品をオフプライス各社が争奪するわけだから、商品確保がさらに不安定化する。

 

 

 

つぎに2についてだが、これは完全に当方の想像に過ぎない。

ワールド、オンワードは元メーカーだし現在もSPA型アパレルである。パルは元専門店だが現在はほぼSPA型チェーン店である。言ってみれば在庫を払い下げる各アパレルブランドにとっては同業他社なのである。同業他社に売れ残り在庫を払い下げることに何となく抵抗感を覚える経営陣・首脳陣も多いのではないだろうか。

一方、ゲオは元来が小売店だから払い下げに対して、メーカー各社は比較的抵抗感が少ないのではないかと思う。

同業他社に手の内を知られるのはオフプライスに限らず何となく嫌だと感じるのではないだろうか。ファーストリテイリングがデベロッパーとして運営する商業施設「ミーナ」が鳴かず飛ばずなのも同様の理由ではないかと想像している。

 

 

売れ残り在庫自体は決して無くなることはないからオフプライスストアという業態自体も無くなることはないだろう。しかし、当初メディアや一部識者が妄想していたようなオフプライスが群雄割拠という状態は実現しないだろうと見ている。数社の有力企業が確定し、その他の小規模在庫処分業者が乱立するという状態になることが最も可能性が高いのではないだろうか。そして有力な数社のうちのトップが「ラックラック」になるというのが中期的な未来ではないかと思っている。

 

 

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ