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南充浩 オフィシャルブログ

数字を分解して考えてみた方が良いという話

2025年4月21日 売り場探訪 0

先日、ファミマのアパレルが年商150億円に達したという記事を拝読した。

これに対して、一部の業界人の中には過剰に持ち上げるような書き込みをしている方もおられた。たしかに150億円というのは今の国内衣料品市場からするとまずまずな金額で、大手総合アパレルの百貨店ブランドがだいたいそのくらいの年商規模である。

そういう意味では当方もすごいと思うことは同じなのだが、もうちょっと冷静に150億円を分解してみて考えた方が良いのではないかと思う。

 

ファミマ、アパレルで年商150億 細見社長ブランド強化の秘訣:日経ビジネス電子版

靴下や下着類だけでなく、有名写真家とコラボレーションしたTシャツや今治ブランドのハンドタオルなど豊富なラインアップがある。24年2月期には、21年開始時の4倍となる100億円の売り上げを記録。25年2月期には約150億円に達した。

とのことだが、以前にも書いたように、ファミマを含めて大手コンビニ3社は店舗数が通常のアパレルブランドに比べると桁外れに多い。

ファミマはざっくりと全国に1万6000店舗もある。

 

 

年商150億円という数字だけ見ると、たしかにすごいのだが、仮に全店で販売されていたとすると1店舗あたりの平均売上高は93万7500円、全店で販売されずに1万店で販売されたとすると、1店舗当たりの平均売上高は150万円ということになる。もちろん、全店がこの平均売上高ではなく、大きく越える店もあるだろうし未達の店もあるだろう。

しかし、年間で93万7500円とか150万円の売上高なら、それほど難しい数字ではない。というかかなりハードルの低い数字だといえる。

そう考えると、ファミマのアパレル戦略というのは、既存の店舗数の多さを最大限に活用した戦略だといえ、見事なものだといえる。これを通常の50店舗規模のアパレルでやろうとするから難しいわけだし、新ブランドとして立ち上げた場合は、出店もしていかなくてはならないからそこがネックにもなる。

一方、ファミマの場合は既存店への導入がほとんどだから新規出店のコストもほぼ不要だから効率も良い。その点においても既存店舗網を最大限に活用することに立脚したプランニングで見事だといえる。

 

 

生活圏内のいくつかのファミマを定期的に観察していると、好調とはいえ、継続できている品番と継続していない品番があるので、全ての品番が満遍なく売れているとは言えないのだろうということは推測できる。

Tシャツ類、スエットトレーナー類、フーディー、靴下、タオル類は継続されているのだが、一時期話題となった襟付きのシャツやブルゾンは継続されていないので、売れ行きが芳しくなかったか、継続的に売ることは難しいと判断されたのか、のどちらかだろう。

継続されているものはサイズ感があまりない物(靴下、タオル)か、オーバーサイズで試着の必要性が無い物(Tシャツ、スエット、フーディー)かなので、その辺りも試着室を設置できないというコンビニの弱点を考慮した設計となっている。

 

 

このように既存店舗網、店舗数、自社店舗特有の問題を冷静に分析して組み立てるという姿勢は、通常のアパレル小売チェーン店でも大いに見習えるのではないかと思う。

ファミマ服を見習うべき点はそこで、決して「年商150億円」ではない。

さらに加えて言うなら、ファミマ服のメインターゲットは恐らく洋服店に行かない(心理的ハードルで行きたくない)というライト層に設定していると思われる点も注目に値する。

バブル期や裏原宿ブーム期のような洋服への関心が高い層が多かった時代とは異なり、今は関心のある層よりもライト層の方が多数派だと思われる。

その多数派を「薄く広く」取り込むことに成功したといえる。

 

 

一方、コンビニ大手は残り2社ある。ローソンとセブンイレブンだ。

セブンイレブンはアパレルは展開していない。ローソンは追随しかけたものの昨年春以降は継続できていない。セブンイレブンは追随したくてもできないのだろうし、ローソンは追随しかけたものの継続できない何かがあったのだろうと思われる。

繊維・アパレルを得意とする伊藤忠商事がファミマのバックについていることはこの点で大きいのかもしれない。決して、繊維製品の品質が云々とかそういう問題ではなく、商材の調達や製造も含めたアパレル製品継続のためのノウハウの蓄積が大きいのだろう。

 

 

当方はもともとファッション好きな学生ではなかったから、気の張った洋服店に入るのは今でも苦手である。セルフに近いユニクロやジーユー、無印良品に入ることには抵抗感は無いが、一家言ありそうなブティックや高級店、こだわりっぽい古着屋にはなかなか入りづらい。多分そのようなライト層が現在は多数派となっており、コンビニ服というのはそのライト層を一定数取り込んでいるという点を、既存のアパレルブランドは大いに参考にすべきだろう。それと既存設備を最大限に生かしたプランニングも大いに見習うべきだろうと思う。

 

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