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南充浩 オフィシャルブログ

ショッピングセンター内で「セールをしないこと」の無意味さ

2025年4月17日 企業研究 0

高額な商材やサービスに対して好き嫌いは別としてほとんどの人は「高いイメージ」を抱くのではないかと思う。それに見合った価格と内容である限りにおいて。

見合っていないことが露見すると「ぼったくり」と認定されイメージは低下してしまうのだが、そのことは今回は置いておく。

「高価格=高級イメージ」ということを否定する人はほぼ誰もいないだろう。当方とて同様である。

 

しかし、一方で「低価格=低級イメージ」「粗悪イメージ」とは最近は言えなくなってきたのではないかと思う。というか、そのようには捉えない消費者の割合が高まっていると感じる。

繊維・衣料品業界の中にいる人の何割かはいまだに「低価格=低イメージ」と捉えているのではないかと感じられてならない。

ちょっとしつこいようだが、前回取り上げたバロックジャパンの社長インタビューで、ショッピングセンター内の店舗が苦戦しており、その理由として「ブランドイメージを保つために値下げ販売をなるべくしなかった」ことを挙げておられた。

【トップに聞く 2025】苦戦が続くバロック、逆襲の鍵は「復活のギャル」

これまで、バロック全体の業績が悪い年は決まって郊外ショッピングセンター(SC)のブランドが不振だという相関関係がありました。今期もやはり同様でしたので、SCブランドの立て直しを抜本的に行います。

──具体的にどういった施策をお考えでしょうか?

 バロックはブランド価値の毀損を防ぐために、できる限りセールを行わず、プロパーで売り続けていました。ですが、現在の日本の経済状況で、特に地方のSCで他社さんがセールを頻繁にやられている中で、我々だけが定価販売を行うことに限界が来ているように感じています。ですので、新年度からは方針を大きく見直し、在庫については値下げを期末まで引っ張るのではなく、月ごとに売れてる商品、売れていない商品を選別して、後者については月内にそれほど高くないオフ率で消化して期末に大きな評価損が発生しないようにしたいと考えています。

 

しつこいようだが前回に続いて引用させていただく。

前回も書いたが、ショッピングセンターは基本的に値ごろ感のある低価格品が揃う場所である。そこでセールを行わなかったとしてブランド価値が上昇することはない。そういう売り方をしたいのであれば百貨店に全集中すべきである。

セールを行わなかったとしてもSCブランドはSCブランドでしかない。

それよりは不振品番だけを順次値下げして売りさばく方が期末にドカンと評価損が発生するよりも粗利率は高くなるだろう。

 

バロックがどうして、ショッピングセンター内ブランドの売れ行きによって業績が左右されるのかというと、国内で361店舗ある(自社公式サイトにそのように明示)が、SCブランドの主力である「アズールバイマウジー」がそのうち124店舗ある(自分で数えたのでもしかすると誤差があるかも)からである。構成比率にすると約34・3%もある。3分の1以上もアズールが占めているのである。そりゃアズールの不振が全体の業績に響くわけである。

 

 

セールをしない、高く売る、たしかにブランドイメージは高くなりやすい。しかし、SC内でそんな売り方をしたところでSC客層には受け入れられない。逆にセールをすればブランド価値は下がるのか?といえば、不振品番を順次値下げして売りさばくことで有名なユニクロとジーユーのイメージは低くない。むしろ高い。

たとえば、2024年7月のこのアンケート調査記事。

30代以上はユニクロ…20代は?「よく購入する・好きなファッションブランド」ランキング|まいどなニュース

10~50代へのアンケート調査だが、元記事を読んでもらえばわかるが好きなブランドは全年代でユニクロが1位である。そして、ジーユーも50代男性を除くとトップ3にほぼランクインしている。その50代男性ですら7位にランクインしている。さらに全年代で無印良品、しまむらもトップ10入りしている。

さすがに「憧れのブランド」ではこれらのブランドは出てこない。別に憧れる必要がなくいつでも購入できる価格設定だからである。

 

低価格ブランドの代名詞であり、値下げセールを必ず行うユニクロ、ジーユ―、しまむら、無印良品は全年代で「好かれて」いるのである。ここでアズールが同価格帯競合ブランドとしてセールをしないことがブランド価値を高めることになるとは到底言えない。これはアズール以外の他のブランドも同様のことが言える。

こうなるとアズールは無駄な努力をしていたというほかないだろう。

 

 

繊維・衣料品業界の人、特に40代以上の中高年層は「低価格=低イメージ」「高価格=高イメージ」という認識を強く持っている人が多いと感じるのだが、その認識が一般消費者から大きくズレ始めているといえるのではないか。もちろん、ラグジュアリーブランドとか高額ブランドは高価格路線でブランドイメージを高く保っているが、それと同じことをSC内でやっても意味が無い。それどころか今回のバロックのようにむしろ有害になるだろう。

逆にSC内で定期的な値下げ処分をしたところでブランドイメージは毀損しにくいということが、このアンケート調査でわかる。

「セールをしないことがブランドイメージを保つ」という時代ではなくなったということを認識すべきで、そういう売り方がしたいのであればSCではなく、そういう販路で売るべきである。

郷に入っては郷に従え、である。

 

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