
ショッピングセンター内でバロックジャパンが苦戦したのは当たり前という話
2025年4月16日 企業研究 0
繊維・衣料品業界の中にいる人で、ユニクロとジーユーを否定的に見る人は多い。
その比率は年々減っている印象はあるが、今でも相当数いる。相当数いるにもかかわらずユニクロ・ジーユーでウケた手法や商品はそっくりそのまま導入したがる人も多い。この辺りが面白い矛盾である。
「ユニクロがやり始めたからうちも」なんてセリフは20年前から今に至るまで腐るほど聞いて来た。しかし「ユニクロはすごい」と羨ましがる一方で、同一販路なのに頑なに導入しようとしない手法もある。
どのようなバランスの思考によってそのような結果が導き出されているのかわからない。
当方が、最も取り入れれば良いと思っているユニクロ・ジーユー的手法は「不振品番の迅速な値下げ処分」である。百貨店やファッションビルではこの手法の導入は難しいと思うので無理にする必要はないが、ショッピングセンター向けブランドやスーパーマーケット向けブランドはユニクロ・ジーユーと同じ販路なのですぐに取り入れるべきだと思っている。逆に何故取り入れないのか理解に苦しむ。
不振品番を後生大事に抱えていても売れることはない。20年間くらい抱えていればビンテージとして売れるかもしれないが。(笑)
ショッピングセンターに揃うブランドは基本的に低価格である。ユニクロとジーユーはその範疇にある。ご存知のようにユニクロとジーユーは一定期間が過ぎれば不振品番を値下げし始める。いきなりドカンと値下げする品番もあれば、段階的に値下げして行く品番もある。恐らく、販売データを見ながら価格変更を決定していると思われる。ドカンと値下げする品番はよほど売れていないのだろうと思われる。
衣料品業界では元来、夏と冬のバーゲンセールが値下げ処分時期だった。ところがバブル崩壊後はその形式が崩れ始めて今に至る。夏と冬のバーゲンを死守しているのは百貨店ブランドと一部を除くファッションビルブランドくらいだろう。ショッピングセンターブランドの多くはユニクロとジーユーを筆頭にそのスタイルは早々に捨て去っている。
特にユニクロとジーユーの業績は好調なことが多いから、他ブランドが追随することは当たり前である。学ぶとは「真似ぶ」ことである。
さて、先日からバロックジャパンの業績不振からの中国事業の譲渡の話題が報道されている。バロックジャパンの商品やブランド群に関しては専門外なので何とも言えないが、原因の一つは中国事業へ注力しすぎた結果だろう。中国市場は基本的に不況であり、一部の例外を除くと売れにくくなっている。当方は中国市場に魅力も可能性も感じないから、さっさと事業譲渡すべきだったと思っている。
一連の記事の中で興味深いインタビュー記事があった。
【トップに聞く 2025】苦戦が続くバロック、逆襲の鍵は「復活のギャル」
そんなに小難しいことを言っているインタビュー記事ではない。むしろ、あっさりしていてわかりやすい。その中にこんな一節があった。
これまで、バロック全体の業績が悪い年は決まって郊外ショッピングセンター(SC)のブランドが不振だという相関関係がありました。今期もやはり同様でしたので、SCブランドの立て直しを抜本的に行います。
──具体的にどういった施策をお考えでしょうか?
バロックはブランド価値の毀損を防ぐために、できる限りセールを行わず、プロパーで売り続けていました。ですが、現在の日本の経済状況で、特に地方のSCで他社さんがセールを頻繁にやられている中で、我々だけが定価販売を行うことに限界が来ているように感じています。ですので、新年度からは方針を大きく見直し、在庫については値下げを期末まで引っ張るのではなく、月ごとに売れてる商品、売れていない商品を選別して、後者については月内にそれほど高くないオフ率で消化して期末に大きな評価損が発生しないようにしたいと考えています。
とのことである。
この一節を読めば、ショッピングセンター(SC)向けブランドの状況と今後の施策を語っているということは明らかである。
バロックジャパンでショッピングセンター向けといえば「アズール」などのことを指しているのだろう。当方の自家需要には適していないのでアズールの売り場はほとんど見に行ったことがなく、香水クサイなと思いながらたまに店の前を通り過ぎている。
ショッピングセンター内のブランドで「ブランド価値の毀損を防ぐために、できる限りセールを行わず」という施策が採られていたことに驚いてしまった。
ぶっちゃけていえば、ショッピングセンター内に出店している時点で「定価販売維持によるブランド価値」なんてものは存在しない。そもそもショッピングセンターに服を買いに来る客は当方も含めて「ある程度の安値で買いたい」と思っている。だからそういう客層に向けて「定価販売を維持」したところで何の価値も無く、むしろ「ちょっと高くてめんどくさいブランド」というイメージを与えるだけになる。
そして他ブランドが〇〇記念セールや特定品番を値下げしていたら、当然そちらに流れる。
何年か前から業界内では「アズールが不調」という噂が流れ続けてきたが、こんな百貨店向けブランドのような売り方をショッピングセンターでやっていたなら不調になるのは極めて当然の結果である。何の驚きも無い。MDの「五適」に大いに反している。特に「適所」に大いに反している。その売り方がやりたいなら百貨店に集中すべきだろう。
まさに「負けに不思議の負け無し」である。SC内での苦戦は苦戦すべくして苦戦したという話だ。
ここで語られている値下げ処分手法はユニクロ・ジーユーが行っているものと近しい。今後は迅速に不振品番が見切られるのである程度は業績は好転するのではないかと思う。