
繊維・アパレル業界も「脱・脱炭素」に振れる可能性が出てきたと感じた話
2025年3月7日 トレンド 2
一葉落ちて天下の秋を知る
ということわざがある。
今回、個人的にそんなことになりそうな気がするという話である。あくまでも個人的な推測・憶測に過ぎないので、もしかしたら違った結果になるかもしれない。
と前置きした上で、先日こんなニュースが複数のメディアから報道された。
三井住友FG、脱炭素の国際枠組み脱退 米金融機関で相次ぐ流れ受け:朝日新聞
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が4日、脱炭素を目指す国際的な枠組みから脱退した。米国の金融機関で脱退が相次いでおり、国内の金融機関にもその動きが広がった。三菱UFJFGとみずほFGの他のメガバンクも脱退する可能性がある。
この枠組みは「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」で、2021年に設立された。現在、130を超える金融機関が加盟し、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする目標を掲げている。
ただ、米共和党の一部からは、銀行同士が化石燃料業界への投融資を制限することが反トラスト法(独占禁止法)に違反するとの声が出ていた。さらに、昨年の米大統領選で気候変動対策に消極的なトランプ氏が返り咲いたこともあり、米国で脱退の動きが続いていた。
米金融大手では昨年末から相次いで、ゴールドマン・サックスやシティグループ、JPモルガン・チェースなどが脱退を表明していた。
とのことである。他のメディアも同様に、今後、日本国内のメガバンクや他金融機関も同調するのではないかとの見方を示している。
三井住友FG以外の動きは現時点では報道されていないが、当方も他の金融機関が今後は多数が追随するのではないかと見ている。
三井住友FGは「落ちた一葉」ではないかと感じられ、「秋」が本格的にやってくるのではないだろうか。
だが、ことは金融機関だけにとどまらないだろうというのが、個人的な見解・推測・憶測である。
金融機関がその動きを見せるなら、必ず他の分野にもそれは波及する。当方は金融での勤務経験はないからどのような雰囲気なのかはわからないが、メインバンクがそうだから、当社もとなる企業は無関係の我々が想像するよりもずっと多いのではないか。
金融がこの手のことに圧力をかけるのかどうかはわからないが「〇〇に取り組んでいる優良企業だから融資を優先的に行う」程度の判断基準にすることはあるだろうというのが、それまでの社会経験から導き出される推論である。
そうなると、例えば三井住友と緊密な関係を築いている他分野の大手企業各社も追随する可能性は大いにあるし、他のメガバンクも同様の措置を取れば、そのメガバンクとつながっている他分野大手企業各社も追随するだろう。もちろん、その中には大手の繊維企業やアパレル企業も含まれることになるだろう。
現在、業界メディア各社では「脱炭素」を始めとした環境系のキャンペーンが積極的に取り組まれている。実際に企業の現場や広報と話してみると「実際、脱炭素キャンペーンはそんなに売れていない」とか「実際、効果がわかりにくい」という声で溢れているのだが、一応、建前上は「脱炭素」こそが「正論」だという風潮になっていて、業界メディア各社はそれを報じている。
例えばこんな具合だ。
今なら、日本のアパレル産業は規制なしで脱炭素へ向かえるのかもしれない – WWDJAPAN
この根底が覆る可能性が高くなってきたと感じる。もちろん、すぐさま大きな動きにはならないことはもちろんだが、三井住友FGという超大手が動いたことで、かなり大きな動きになるのではないかと見ている。
業界メディア各社の論調も変えざるを得なくなるし、何よりも「物」を製造している繊維業界の現場の姿勢は大きく変わる可能性がある。
数ある環境対策において「脱炭素」というのは、最も効果と被害が検証しにくく、当方はこれに関しては「話半分」程度にしか元来受け止めていなかった。被害と効果がわかりにくいものに対して社会全体が全力で対応するというのは、当方としてはどうにもおかしいこととしか感じられなかった。
もちろん、当方とて環境対策は重要だと思っているし、有害物質は垂れ流すべきではなく無毒化してから捨てるべきだとは思っていてそこに反対はしていない。
かつての4大公害病のようなことは繰り返してはならない。
だが、原因となった物質がはっきりと証明されている4大公害病に対して、脱炭素というのは実際に本当に効果があるのかわからない。気候の温暖化をその被害例として挙げる人もいるが。地球の温暖化期間に過ぎないという学説・主張もある。2030年代にはミニ氷河期の周期に突入するという学説すらあるほどだ。
また江戸時代は今よりもずっと寒く、隅田川が凍ったという記録もあるが、当時の地球はミニ氷河期だったという学説もある。
環境対策の各説にもあやふやなものが多いと感じる。2010年代前半に巻き起こったヒステリックな「木の割り箸悪玉説」だが、いつの間にか消えてなくなった。当時、割り箸を「プラスチック製の洗って繰り返し使える箸」に交換したファミリーレストランが近所にあるのだが、2020年頃からまた「木の割り箸」に戻している。そしてそのころに激しく糾弾していた人もメディアも今は割り箸については何も言わない。
いわゆる「手のひら返し」だが、脱炭素もそのようになる可能性が出てきたと感じる。
今回なぜ三井住友FGが米金融機関に追随したかというと、それは脱炭素を掲げたままでは米金融機関とのビジネスが拒絶される可能性が高くなってきたためである。恐らく欧州や他の地域の金融機関も三井住友と同様の措置を取り始めることになるだろう。
一寸先は闇だから、米トランプ政権が4年間の任期を全うできずに瓦解する可能性はゼロではない。だが、4年間続くと仮定するなら、脱・脱炭素の動きは世界でさらに大きくなるのではないかと考えられる。
海外市場に活路を見出している我が国の繊維企業・アパレル企業も必然的に脱・脱炭素に同調せざるを得なくなる可能性が高いだろう。
そんな予測・推測・憶測をしているという個人的な話である。
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ほしねこ より: 2025/03/07(金) 12:51 PM
僭越な物言いで大変恐縮ですが、地球温暖化とそれに伴う各種の異常気象は、そのほとんどが大気中の二酸化炭素濃度の上昇に起因するものであることが、研究によってほぼ明らかになっています。
詳しくは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」に説明があります。その他の言説は、キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏を筆頭に、ほぼ根拠がないものと言えます。
ただ、ご指摘の通り世界的に「脱・脱炭素」の流れになっていくであろうことは同意です。
これはやはり、第二次トランプ政権の影響が大きいと思われます。トランプ政権が長続きするかどうか、1つのサインが「在任中に大統領の任期を延長・撤廃すること」であり、もしこれが実施されたら、トランプ政権が長期化する可能性は飛躍的に高くなると思われます。
逆の話では、エアコンとかのダイキンは実は戦前から防衛産業だったりもして、自衛隊に洗車砲弾とかミサイル用弾頭とかを納入してたりもするんですが、そのダイキンがつい先日、白リン発煙弾の製造事業から撤退する方針を表明してました。
白リン発煙弾というのは殺傷兵器ではないんですが、白リンが激しく燃えてひどい火傷とかになるから非人道的だと欧州あたりの人権派が騒いでいて、白リン発煙弾造ってる会社には投資しない、とかいうことになってるからダイキンは製造を止めるんだとか。
そんなのより、戦車の砲弾のほうがよっぽどヤバいと思いますがw