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南充浩 オフィシャルブログ

好調に拡大を続けるネット広告に対して感じ始めた危うさ

2025年3月5日 メディア 1

例のフジテレビ問題で、フジテレビで流れるテレビCMの多くがACジャパンに差し替えられたことは多くの人がご存知のことだろう。

いまだにテレビCMは戻っていない。そればかりか他局の番組を見ていても以前よりもACジャパンが流れることが増えていると感じられる。このため、もしかしたらテレビCMそのものが出稿側から敬遠され始めているのではないかとも感じられる。

 

このフジテレビ問題に端を発したテレビCMの減少傾向によって、これまでから拡大してきたネット広告の出稿量がさらに増えるのではないかと容易に想像できる。

実際にネット広告はここ10数年間成長の一途をたどってきた。

直近の集計結果の記事は以下である。

インターネット広告費は9.6%増の3.6兆円、総広告費は4.9%増の7.6兆円【2024年の国内広告費】 | ネットショップ担当者フォーラム

そのうちインターネット広告費は総広告費の約半数に迫る3兆6517億円(同9.6%増)。新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアの合算となるマスコミ4媒体の広告費は2兆3363億円(同0.9%増)だった。

とある。

コロナ明けの反動もあって広告そのものが伸び続けているが、ネット広告の9・6%増に対して、新聞・雑誌・ラジオ・テレビの「オールドメディア」と総称される4媒体合計の伸び率はわずかに0・9%にとどまっている。

如何にネット広告に勢いがあるのかということがわかる。ちなみに4媒体合計してもネット広告の総額には1兆3000億円以上も少ない。

記事中の表を見てもらえばわかるがオールドメディア4媒体の中で右肩下がりを続けているのが新聞である。他のメディアは微減と微増を繰り返している。

テレビは23年度は前年割れだったが、24年度は微増している。とはいえ22年度の広告出稿額には届いていないという有様である。

80年代~2000年代に最も権勢をふるっていたテレビというメディアの凋落ぶりが一目瞭然で、25年度はフジテレビ問題も手伝って広告出稿額は激減することになるだろう。

 

 

さて、フジテレビ以外の民放でも企業CMが減ってACジャパンに差し替えられることが増えたと感じる原因の一つとして「テレビCMの効果が薄いことが発覚した」という説がある。

テレビCM効果に疑問の声 POSデータで判明か フジテレビCM問題でスポンサーのテレビCM離れに? – coki (公器)

特定の業界によっては、既にテレビCMには効果がないことがまことしやかに共有されているところもあるという。例えば、スマホゲーム業界がそれだ。

数年前までテレビをひねれば、どこでもスマホゲームのCMが流れていたものだが、いまはめっきり少ない。多くの人が感じていることだろう。これは、業界バブルが弾けて、冬の時代に突入しているというのもあるが、それ以上に、当時テレビCMを増やしてもアクセス数に大きな影響なかったのでテレビCMをやめたんだと語る業界関係者が多いのも事実である。

とある。

また衣料品業界でいえば、しまむらが5年くらい前にテレビCMを廃止したことは記憶に新しい。しかし、コロナ自粛も手伝ってテレビCM廃止後のしまむらの決算は好調を続けている。

しまむらからすればクソ高い料金のテレビCMを出稿せずとも好調な業績が続くのならテレビCMなど復活させる意味が無い。その金を従業員のベースアップやボーナスに使った方がよほど士気が高まる。(テレビCMの広告料金に関しては記事中でざっくりと言及されている)

 

 

テレビCMがテレビで受像されているということ自体は測定されている。ただ、それを人間がちゃんと見ているかというと恐らくほとんど見ていないと思われる。

当方はテレビCMが始まるとトイレに行ったり、飲み物を用意したりするし、こまごまとした家事をしたりする。理由は見る価値が無いからである。また録画した番組を見る際にはテレビCMはスキップする。時間の無駄だからだ。恐らく同様の人は多いのではないかと思う。

だから、いくら高視聴率の番組の合間にテレビCMを流しても「あまり効果が無い」という結果が生まれるのだと考えられる。

 

一方、ネット広告だが、テレビCMよりもはるかに受け手の行動が把握しやすい。各個人の端末にどれくらい届いていて、そこからどれくらいサイトにアクセスされているかというのが測定可能であり、ざっくりとした視聴率しかわからないテレビCMに比べるとはるかに数値がわかりやすい。

今回のフジテレビ問題が無かったとしてもテレビCMの凋落傾向は変わらなかっただろうし、ネット広告の拡大基調も変わらなかっただろう。

 

ただ、当方は最近はネット広告にもうんざりし始めている。

以前から何度か、ケチな当方が「ポイ活」をしていることを告白しているが、最近はこの「ポイ活」で流れるネット広告が長くなっていると感じられてならない。2020年頃のネット広告の1本あたりの放映時間はだいたい5秒から15秒くらいで、30秒あると「長い」と感じられた。

しかし、2024年後半くらいから30秒広告は当たり前のように増え、60秒広告というのも珍しくなくなった。25年現在だと「ポイ活」中に60秒広告が流れる確率は体感的に3~4割もある。

5~15秒だから我慢してスマホやパソコン画面を眺めていたが、60秒になると長すぎて当方の我慢の限界を超えている。最近では60秒広告が流れ始めると画面をそのままにしてほかの用事をするようになり、広告画面を見なくなった。目を休めるためにまぶたを閉じていることさえある。

出稿側からすれば、1秒でも長く自社のことを知ってもらいたいという思いがあることは理解できるが、見る側からすると60秒は長すぎる。これが数本続くと長すぎて発狂しそうになるほどにイラっとする。

 

テレビCMが嫌われ始めたのと同じ轍をネット広告は踏み始めていると当方は感じる。好調だからこその慢心ではないか。「好事魔多し」と言われるが、ネット広告も恐らくは早晩「見られない広告」と成り下がるのではないかと当方は見ている。

 

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 comment
  • 読者 より: 2025/03/05(水) 7:59 PM

    自分は最近のwindows10の広告の多さに辟易してます。
    オフにしてても更新のタイミングでオンにしてくるし。
    Macはそこはオフが維持できるので実用的。
    まあビジネス的にはそれは良くないだろうなあ思いますがw

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