
値上げラッシュなのに「衣料品のプロパー販売好調」という論調の胡乱さ
2025年3月4日 お買い得品 0
2月28日は、愛用の食品スーパーであるスーパー万代が棚卸のため全店休業だった。
3月1日から再スタートしたわけだが、3月に入ってから野菜の価格が少し下がってきたように感じられる。2024年後半から2025年2月にかけてが最も高騰していただろう。
一束?(多分、2~3食分)の青菜類は2024年秋口までは税抜き98円だったのが、198~258円に値上がりし、128円~138円が「特売」としてチラシに掲載されるほどで、生産数量が常に安定していると言われていたキノコ類もそれまで88~98円(2~3食分)が128~158円に値上がりした。
それが2月末くらいから一束の青菜が98円~108円に値下がりすることも多くなり、キノコ類も98~108円くらいに値下がりしている。
食品に限らず、物やサービスの値段が総じて上がっているから、世の人々の多くは節約志向を強めている。もちろん、当方も節約志向を強めており、当方なんて将来には不安しかないから、今後いくら高収入になったとしても(あくまでも仮定の話)、生活水準を今以上に上げるつもりは微塵も無い。何ならさらに節約できるところは節約したいとさえ考えている。
このような情勢では、人々は逆に低価格志向を強めており、例えば飲食店では、かつて「低価格の勝ち組」とされていた「鳥貴族」を大きく下回る価格の超低価格居酒屋チェーン店が相次いで勃興している。例えば「新時代」「勝男」「てけてけ」「ぎふや」「八銭」などだ。その究極が豚肉コース飲み放題食べ放題3時間3000円の「しゃぶ葉」だろう。先日、初めて「しゃぶ葉」に行ったが、サラリーマンが3組くらい飲み会を開催していた。3000円で酒飲み放題・鍋の具材食べ放題で3時間3000円なのだから、そこら辺の居酒屋へ行くよりもはるかに安い。そりゃサラリーマンも飲み会を開くだろう。一時期、持て囃された「サイゼリヤ飲み」よりもはるかに安くてメニューのバリエーションも多い。
そのような状況を踏まえると、洋服への支出も削る人は増えているのではないかと思う。少なくとも当方は削ることを心掛けている。
当方が普段利用している「ユニクロ」「ジーユー」それからアダストリア&アーバンリサーチのネット通販では、値下げをするとその商品が完売する速度が加速すると感じる。
また、ユニクロとジーユーは不振品番の見切り値下げが積極的だとも感じる。
にもかかわらず、メディアが全般的に「衣料品プロパー好調、セール不振」を掲げているのは実状なのかという疑問を感じる。
前半はいつものメディアの論調で「はいはい」という感じだが、
一方で、セールニーズも根強くある。コートなど冬物セール品の目的買いは、セール開始当初の「オフ率」の少なさから購入に至らない事例が多かったようだ。1月中旬以降の再値下げやバンドル販売でセール品の動きが良くなったと複数のファッションビルが指摘していた。セール目的客の求めるオフ率とのズレがうかがえる商戦だった。
という一節もあり、まあ、世間一般のメディアの論調に比べるとはるかにマシだと感じる。
断続的に合計10年間近く衣料品店の店頭に立っていた経験からすると、1シーズンの中で売れない品番というのが絶対に生まれてしまう。これは避けようがない。仕入れる商品や企画製造する商品が全て完売する店やブランドなんてほとんど存在しない。
となると、あらかじめ処分方法を念頭に置いておく必要がある。処分方法として最も有効的なのが値下げである。ただ、漠然と値下げしたのでは先ほどの記事にもあるように「オフ率が少なすぎて売れない」という事態も多発する。だから、「確実に売れて損をあまりしない」という値段設定を見極めることが必要不可欠になる。この辺りがマーチャンダイザーに真に求められる技能だろう。
ご興味のある方は上の記事をお読みになれば良いだろう。
メディア全般、とりわけ業界メディアが「プロパー好調」という論調を吹聴したがることも理解できないではない。なにせ、かつてのアパレル産業というのは「どんぶり勘定でたくさん仕入れて、売れなかったら破格の値下げをして処分販売する」ということが一般的だったからだ。しかし、バブル崩壊後にはそれによって多くの企業が倒産したし価格破壊も引き起こした。これに懲りて「プロパー好調」という世論を醸成したいのだろうと思われるが、バブル崩壊から30年が経過し、各ブランドの経営方針や商品計画も当時とは大きく異なってきている。いつまでもこれを後生大事に掲げるのもいかがなものかと思ってしまう。
現在では逆にこれの弊害も出始めていて、「プロパー消化率」を絶対神の教義のように振りかざして信者獲得を目指す怪しげなコンサルタントどもの跳梁跋扈を招いているし、「値引きクーポンはプロパー消化を高める方法」という矛盾に満ちた公式コメントをする大手企業経営者も生み出してしまっている。
業界内で屈指の高い営業利益率を誇るファーストリテイリングはユニクロ、ジーユ―で不振品番を積極的に値下げ処分している。例えば、前回ご紹介したユニクロのスタンドカラーハーフジップスエットなんて、今春の新作にもかかわらず3990円が1990円と半額にいきなり値下げされている。またジーユーもズボン類が990円に頻繁に値下がりしている。当方が一昨年から購入しているワイドスラックスはすべてジーユーで990円に値下がりした物である。
逆にこの積極的な不振品番の見切り処分こそ、ユニクロとジーユーが支持されつつ高営業利益率を稼ぎ出している一因なのではないかと思う。
ユニクロとジーユーの不振品番の積極的な見切り方こそ、業界は学ぶべきではないかと個人的には思っている。