
アパレル各社が猛暑対策を充実させているが今夏の気温は現時点で見通しにくいという情報
2025年2月13日 天候・気候 0
先日、某ファッション専門学校の卒業制作ショーと、その後の関係者レセプションに参加した。
コロナ禍以降、めっきり人付き合いも減った上に他人としゃべるのも億劫になっていて、この手のパーティーには年1回参加する程度である。まあ、年1回程度で十分かなと思っている。
久しぶりにこの手のパーティーに参加すると、参加者は言うまでも無く業界関係者で、業界関係者のだいたいは一般人目線から言うと「すごく変な服装」をしている。「それで電車に乗ってここまで来たんですか?」と問いたいほどだが、わざわざ新しい人と名刺交換をしつつ自己紹介をするのもめんどくさいので、生暖かく眺めながらビールを飲むばかりである。
そんな中、一人、若作りの中年男性がレザーか合皮(3メートル先から見ていただけなので判別不能)の半ズボンを穿いていたのだが、寒いのになぜわざわざ半ズボンを穿くのか疑問しかなかった。その割にトップスは防寒着を着ているのだから暑いのか寒いのかどっちやねんである。
この時期に中年男性が半ズボンを穿いて電車に乗って都心にまで出てくるという感覚自体が一般人からすると大きくズレているとしか思えない。
そんな体感温度無視の服装をするのは、業界関係者かファッションに異常に関心のある人くらいで、ある程度のマス層に売ろうとするなら、体感温度に準じた服を製造・仕入れするしかない。
来週から強烈寒波が襲来すると伝えられているが、再来週からは気温が急上昇する予報が出ているので、恐らく最後の寒波となりそうだ。
さて、冬が終わると「夏」の気温が気になり始める。先ごろのワークマンの改革を見ても分かるように、ここ10年間は夏の期間が季節の半分から半分強を占めている。これを受けてワークマンは季節区分で春を無くして夏を7カ月間と設定したわけである。
当方の体感気温もほぼ同様で最低でも半年間は半袖Tシャツで生活をしている。
商品単価は安いが、年間で最長期間となった「夏」の気温というのは、業界のビジネスを大きく左右しかねない存在となったといえる。
余談だが、2010年ごろまでは東京・名古屋・大阪などでも冬は結構寒かったため、高価格な防寒着が動きやすく、夏の低単価を冬の高額商品で補うというのが総合アパレル全般の傾向だった。それが近年は夏の長期化に加えて暖冬化によって、従来型のビジネス構造が崩れつつあったというのが、2024年末までのことだった。
24年12月から、とりわけ25年1月・2月は10年ぶりくらいとなる低気温が続いており、ネット通販の在庫状況や店頭での陳列を見ていると、概ね防寒肌着と防寒アウターはほぼ大幅値下げ無しに好調に消化できていると感じられる。
さて、そんな重要市場となった夏服だが、今夏の気温予報は現時点ではひどく不確実なものとして先日発表された。
これは2月10日に発表されたものを解説動画にしたものである。
現在はほぼ正常だが、少しだけラニーニャ傾向が見られるという非常にあいまいな状態といえる。
そして、解説動画の言葉をそのまま文字としてまとめると「夏はエルニーニョになるのかラニーニャになるのかわからない。正常状態のままかもしれない。今の時点ではわからない」という具合になっている。
動画の10分当たりを見てもらうと、
5月はエルニーニョ確率10%・平常80%・ラニーニャ確率10%
6月はエルニーニョ確率20%・平常60%・ラニーニャ確率20%
という数値が発表されており、専門家ですら全く先の状況が読めないということがわかる。
確率論的に言えば、平常確率が最も高い。
そうなると、猛暑でもなく暖冬でもないということになる。それなりに暑くてそれなりに寒いという気温変化である。
エルニーニョになれば猛暑になる分、暖冬にもなる。ラニーニャになれば冷夏になりやすく、寒冬になる。
という具合で、繊維・衣料品業界からすると平常状態が最も望ましいといえるが、ワークマンに限らず、総じて長期化する猛暑対策に力を入れているので、平常化とラニーニャ化は避けてほしいというのが本音ではないだろうか。
エルニーニョ化した場合、各社ともに夏の強化策が的中するとともに、暖冬対策も売上高に反映されやすくなる。
ただ、暑さが苦手な当方はエルニーニョ化だけは避けてほしいと思っている。
もしエルニーニョ化が外れれば、各社ともに猛暑対策は空振りに終わってしまう可能性が高い。今春以降の気温推移情報はこれまで以上に一早く入手し、慎重に分析する必要がある。
恐らく今後、時期が進むにつれ、予報は二転三転する可能性が高いため、すでに動いている猛暑対策も柔軟に変化させなくてはならないだろう。今夏は例年以上に気象情報への気配りが求められる。