
衣類輸入量がコロナ禍よりも低下している理由を考えてみた
2025年2月14日 考察 0
一応、仕事柄毎月洋服は買っているが、買う枚数は年々減ってきた。
正確に数えていないが、2024年に買った洋服の数量は独立してからの15年間で過去最低ではないかと思う。
理由は様々ある。メンズカジュアルは似たような商品が多いからすでに持っているのと似ているから買わないということも大きい。また、何となく服への興味が低下し続けているということもある。さらに言えば、この年齢になると自分に似合う服はある程度理解できるようになり、似合うかどうかわからない服を買って冒険することが無くなった、ということもある。
さらにいうと、毎月発売されるガンプラ新商品を買う方が関心が高いということもある。(機体が好きではなかったら買わない月もある)
この意欲の減退が加齢によるものなのか、ある程度の社会の風潮を反映しているのかはわからない。個人的には両方ではないかと思っている。
ただ、業界の同年代の人とたまに話しても、当方同様に洋服を買う枚数や回数が減ったと言う人は多い。まあ、類は友を呼ぶというから、当方にお付き合いいただけている方がどこかしら当方と考え方が似ているせいかもしれない。
自分の息子たちを見ていても、服が欲しいと強く思っているようにはまるで見えない。息子たちが今の20代後半世代の典型例かどうかはわからないが、「若者=服」みたいな構図ではなくなっているのではないかと切に思う。
そんななか、24年の衣類輸入量の速報値が発表された。
24年の衣類輸入量 2年連続で100万トン割れ コロナ下の20年下回る水準 | 繊研新聞
日本繊維輸入組合が財務省貿易統計を基にまとめた衣類輸入状況(速報値)によると、24年(1~12月)の輸入量は前年比2.2%減の94万2282トンだった。前年に続いて100万トンを割り、コロナ下真っただ中だった20年の実績(速報値ベース=94万7340トン)を下回り、過去20年ほどで最低水準となった。
とのことで、輸入量は重量で表示されているが、重量ベースだとコロナ禍の20年よりも減少している。
23年5月にコロナ自粛が全面解禁になってから、商業施設や店舗は全般的には息を吹き返し、比較的好調を維持しているケースが多い。(もちろん、不振店はあるが)
特に2024年は23年よりも各地の商業施設やイベントが混雑するケースが多かった。また各種売上高も23年を超えていることも多い。
にもかかわらず、衣料品の輸入重量がコロナ禍時点よりも減っているというのは、なかなか難しい問題だといえる。
もしかしたら、各衣料品が年々軽量化しているからという理由も考えられなくはないが、その線は薄いのではないかと思っている。
それ以外でいくつか理由を考えてみよう。
1、洋服の売れる数量が減っている
2、各社がマーチャンダイジングの精度を高めた結果、売り切れる数量が正確さを増して製造・仕入れ数量が減った
という2点があるのではないかと思う。
大手SPAチェーン店や大手カジュアルチェーン店では不振ブランドを除いて、全般的に昔のように「大ハズレ」アイテムを見かけることが減った。要はそのアイテムが売り切れる数量の見極めが正確さを増していて、例えハズレてもそれほどの数量を仕込んでいないから、大量に売れ残るということが減っているのではないかと思う。
「少し多めに製造・仕入れしておこう」というスタイルのブランドが激減しているのではないかと思う。
次に考えられるのが、当方と同様に衣料品への関心が低下している層が増えたという理由である。
今まで年間に30枚服を買っていた人が20枚程度に落としている可能性は高いのではないかと思う。当方のように加齢による精神の弱体化ばかりが理由ではないだろう。
以前から何度も書いているように、衣料品は趣味の中の1つになってしまっていて嗜好品としての比重が下がっている。そのため他の趣味に支出するから衣料品への支出は減らすという人は当方の身の周りでも少なくない。
また、ふんわりとしたトレンドはあるものの、ビッグトレンドの不在ということも大きいのではないか。さらにいうと、言い方は難しいが、ファッション傾向の多角化・多様化もあるだろう。昔の〇〇ブームのように特定のファッションテイストに多くの人が一辺倒にはなっていない。
ワイドパンツ主流でもスキニー着用者もいるし、フレア着用者もいる。ビッグトレンド不在で多様化すれば、特定のアイテムをみんなが争って買うということとが無い。手持ちの服を長く着続けても構わないから当然、買う枚数は減る。
今後、各ブランドのマーチャンダイジングの精度はさらに高まるだろうし、ビッグトレンド不在で多様化・多角化する傾向は定着化するだろうから、当面の間は、衣料品の輸入量は減少し続けるのではないかと当方は見ている。
その一方、衣料品の輸入額は増えている。
24年の衣類輸入額 4年連続の前年超え 中国は低迷、ASEANは伸びる | 繊研新聞
財務省が1月23日に発表した24年(1~12月)の貿易統計(速報、通関統計)によると、衣類・同付属品輸入額は3兆6741億4000万円(前年比3.5%増)で、4年連続の増加となった。24年の平均為替レートは1ドル=150.97円(前年比7.7%の円安)。
とのことで、輸入量が減っているのに、輸入額が増えている理由は次の2点が考えられる。
1、為替の円安基調が進んでいる(いた)
2、衣料品の製造・仕入れコストが上昇している
である。
今後もこの2点は変わらないだろうから、衣料品の価格は上がるものの、先述したように売れる数量は減り続けるという流れが当面の間は続くことになるだろう。