
ウールのセーターは寒冷な気候でないと売れにくいという話
2025年2月12日 素材 2
先日、ウールやカシミヤなどのセーター類をメインにするブランド、CTプラージュの展示会に久しぶりにお邪魔した。
以前にも書いたことがあるが、小規模アパレルながら、国内よりもヨーロッパでの売上高の方が高いブランドである。
ちょうど、立春寒波が襲来している期間だった。
昨年12月からの今冬は予報通りに「寒冬」になっている。特に2月4日からの立春寒波は近年稀にみる寒さだった。これも以前に書いたが、東京よりも西日本の方が冷え込みが厳しい「西冷東暖」という珍しい様相だった。
今回の立春寒波の寒さは、体感的にはほぼ10年ぶりくらいではないかというほどに寒かった。ちょうど2014年2月14日には何年かぶりで大阪に薄っすら雪が積もったほど寒かった。当方が住んでいる地域なんて5センチくらい雪が積もって一面の銀世界になったほどだ。
今回、そこまでの雪は積もっていないが、雪が舞っている時間帯もあった。
当方が子供の頃は冬というと今回くらい寒かったという記憶がある。
で、今回の立春寒波では、久しぶりにウール100%セーター、ウール高混率セーターを連日着用した。最近ではフリースを愛用する人も多いが、保温性という点では、当方の体感ではフリースはウールに劣る。
これまでの暖冬ならフリースで十分凌げた上に、メンテナンスも楽だからそれでよかったが、今回の寒波ではウールセーターでないと凌げなかった。
ウールが暖かい理由についてだが、
ニッケグループ|事業内容|衣料繊維事業|ウールについて|ウールの歴史をたどる|ヒミツ1
ウールの1本1本の繊維をよく見るとみんなチリチリと縮れている。この縮れ(クリンプ)こそが、ウールの最も大きな秘密です。
「なぜ、ウールは縮れているのか?」長い間世界中の学者の謎でした。1953年に日本人が解明。簡単に説明するとウール繊維は2種類の異なる細胞からつくられており、細胞の成長の差などによってまっすぐに伸びず、反り返るというわけです。
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ウールは繊維1本1本が縮れているために複雑にからみあい、その中に60%もの空気を含みます。この空気層が外気を遮断し、からだを寒さから守ってくれるのです。
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ウールはもともと熱を伝えにくい繊維。 合成繊維の5分の1、綿の2分の1しか熱を外に逃がしません。だから、ウールはいつもポカポカあたたかいのです。
と説明されている。
さて、CTプラージュの話に戻すと、ウールやカシミヤなどのいわゆる「冬用セーター類」を主要商材としているブランドだが、日本よりもヨーロッパの方が売上高が大きいという体制をブランド開始初期から保っている。
現在の情勢だと円安だから割安感があるんじゃないのか、と思われるだろうが、もっと円高の時代からヨーロッパの方が売上高が大きかった。
もちろん、売り方とかデザインとか、地道な営業とかいろいろな要素はあるだろうが、やはりヨーロッパの方が日本よりも寒冷な気候だから、ということも大きいのではないかと思うし、ブランド側も実際そのようにも答えている。
今回の立春寒波に話を戻すが、CTプラージュでは拠点としているフランスやその周辺の冬と同じくらいの気温だと感じると言っていて、だからこそその辺りでは「ウールやカシミヤ、その他獣毛混セーターが今も一定数売れるのではないか」と説明している。
一方、日本ではウールセーター、カシミヤを含む獣毛セーター類は年々ブランドの取り扱い量が減っていると感じる。もちろん、原料高騰と円安基調の影響もあって、低価格ブランドからはユニクロと無印良品を除いてウール100%セーターとウール高混率セーターがほぼ消えた。
いわゆる中高価格帯ブランドの取扱いのみとなっている。
高価格化している上に、ウールはメンテナンスに気を使う。洗濯する際にも気を使うばかりでなく、保管が適切でないと虫食いで穴が開いてしまう。
そのめんどくささゆえに敬遠されている側面もあるだろう。
だが、それ以上にこの10年間、日本が暖冬傾向が続いたということも大きいのではないかと思う。今回の立春寒波以外だと深刻に寒かったというのはほとんどなかった。それこそ2014年2月の積雪以来である。
それまでの暖冬だと、中綿入りアウターを着てウールセーターを着ると昼間は汗ばむくらいである。そうなると、フリースや裏起毛スエット、合繊セーターくらいで十分である。
わざわざメンテナンスのめんどくさいウールセーター類(獣毛セーター含む)など買う必要性が無い。
25年12月からの冬がどのような気候になるのかは現段階では不明だが、暖冬傾向に戻るようだとウールや獣毛セーターはまた不要と感じられるだろう。今後暖冬傾向が続けば、日本ではウールや獣毛セーターというのは、好事家向けのニッチ製品として生き残るかどうか、というアイテムになってしまうのではないかと思っている。結局は洋服は気温・気候に大きく左右される生活必需品だと改めて感じた次第である。
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忍者猫 より: 2025/02/13(木) 10:59 PM
学生の時、なんばマスザキヤでヨーロッパの毛糸、スイス製のSoren woolen とか?いう毛糸を買ったんです。名前からして、夏用なんですね。でも、そんなの大阪の夏では絶対に使えない。ヨーロッパとは気候が違うんだと感じました。
夏に手編みのウェアなんか着れないです。エアコンガンガンだったら、薄手の羽織ものが要りますけど、手編みじゃ暑苦しいです。もっと細い番手の強撚糸で機械編みとかじゃないと。。
日本の東京、名古屋、大阪等太平洋ベルト地帯は欧米の冬のファッションを楽しむには日照時間が長く、気温も温暖なんです。ウール、カシミヤ、カナダグースのダウンが必要なのは北海道、東北ぐらい寒冷なところでなければなりません。東京でモンクレールのダウンを着ている方がいらっしゃいますがオーバースペックです。