
機能性を表示した数値をそのまま受け取ると危険な場合があるよ、という話
2025年2月10日 考察 0
みなさんこんにちは!
USです。
なかなか寒い日が続いておりますが皆さま体調はいかがでしょうか。
インフルエンザもコロナも一段落したようですがまだまだ寒い日が続くので気を付けて生活していきたいものです。
さて、日々生活していく上においても、仕事をしていく上においても数字はとても重要な物だと思います。「数字は嘘をつかない」ということばがある通り、数字ほど物事を具体的に示すものはないと思います。
しかし、「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」という言葉もあります。
(『ソム・ソーヤの冒険』の著者であるマーク・トウェインが残した言葉だそうです。)
Wikipediaによると、
「数字には解釈の余地が無いためロジカルな表現には不可欠だが、自分に都合の良い数字だけを持ち出して見せることで、これが全てであり真実であると思わせることができているということである。」
と記載がありました。
繊維製品の機能性を可視化するためにも数字は使用されており、最近では頻繁に目をする機会が増えています。
例えば先日繊維ニュースで下記のような記事がありました。
EFウエア 高機能化と在庫に厚み | THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース
記事の内容を引用させて頂くと、
『電動ファン(EF)付きウエアの高機能化が進んでいる。新型デバイスのバッテリーの最高電圧は昨年の24ボルトから一気に28ボルトまで拡大。風量も毎秒106㍑から125㍑にまで増えた。この2年は想定以上の気温上昇と、夏の期間が長くなった影響でシーズン途中に売り切れるケースが増加。在庫に厚みを持たせ、真夏の販売最盛期に備える。』
という内容になっており、電動ファンウエアがどんなものかわからない方でも、『新型デバイスのバッテリーの最高電圧は昨年の24ボルトから一気に28ボルトまで拡大。風量も毎秒106㍑から125㍑にまで増えた。』という文言から数字が増えているので、なんとなく進化しているという印象を持たれることでしょう。
しかし、実際のところ、最高電圧と風量は比例するわけではありません。
今回は引用ばかりで恐縮なのですが、2024年度版になりますが、各メーカーの空調服のバッテリー性能がこちらにまとめてあるのでお時間のある方はご覧になってみてください。
【2024年最新】空調服の性能を完全比較!今年のおすすめブランドを紹介します! | ワークマガジン | 作業着・作業服の情報誌
最大電圧と最大風量を比較してみて頂きたいのですが必ずしも「最大電圧=最大風量」という形にはなっていないと思います。
(ついでながら、カタログメーカーの社員曰く、最大電圧はバッテリーのスペックであり、最大風量はファンのスペックであるということらしいです。)
「最大電圧が高い=高スペック」ということはわかりますが、それが空調服の特徴である風の量やバッテリーの持ちに直接的に影響しないということは、やや極端な言い方になりますが、単に最大電圧が高いということ以外に何も意味がないことになります。
製品の購入動機になるように高い数字を表示しているだけで、その製品を購入着用することで他の製品より快適に涼しく過ごせるということではありません。
これでは数字を表示している意味が薄れてしまう気がします。
また、最近よく目にする接触冷感の値「Q-Max」という数値についても気になることがあります。
Q-Maxの値の測定には室温温度に対して加熱した試料を使用しますが、この加熱の温度が試験条件によって変わっていることは多く知られていないと思います。
また、Q-Maxの値が製品の商品説明に記載があっても、この加熱条件については記載がない物が多くあります。
この加熱条件は現在のJISは10℃と設定おりますが、JISが設定される少し前までは20℃という数字で試験されていることが一般的でした。この加熱条件によってQ-Maxの基準値にも違いがあり、10℃の場合はQ-Maxの値が0.1以上で合格ですが、20℃の場合はQ-Maxの値が0.2以上で合格とされており、数字に倍の違いがあります。
このQ-Maxについて「他社の製品はQ-Max0.1しかないのにうちの製品はQ-Max0.2あります」みたいなプレゼンをする方をお見掛けする度に私は加熱温度条件(10℃で測定したのか、20℃で測定したのか)が気になって仕方がありませんが、他の方はその点について疑問に思う方はほとんどいないと思います。
数字は性能を定量的に表現することに長けていますが、それが機能性に直結していなかったり、そもそも数字の単位や基準値が違う物を比較したりしているということは多々あります。
今後、自社製品をアピールするにあたってエビデンスを表示する機会も更に増えてくると思います。
ただ、表示をするメーカーがその数字を示す意味を理解した上で表示や説明をつけることを重点において消費者にアピールしていかないと消費者に対して不親切になります。
そのような場合、消費者から「見せかけだけで機能性を全く感じない」というように却ってマイナスイメージを商品やメーカーのイメージを持たれる可能性があるので注意してほしいところです。
以上USでした。