
衣料品ブランドだけにとどまらない「なんちゃってパリコレビジネス」
2025年1月27日 デザイナー 2
さて、フランスのパリではパリファッションウィークが真っ最中である。
25~26年秋冬パリ・メンズファッションウィーク 自由な精神を背景にしたクリエイションがパリを救う | 繊研新聞
ちなみに現在開催されているのは、記事でも明記されているようにメンズコレクションであり、レディースではない。もし仮に、今年2月以降に「2025年1月のパリコレに参加しました」というレディースブランドが出現したとするなら、そのレディースブランドは「なんちゃってパリコレブランド」だということになる。
人間はとかく肩書に弱い。
特にビジネス関係ではカネという重要物が絡んでくるのでできるだけ失敗したくない。そのため、過去に実績がある人や企業、世間的に評価された肩書のある人や企業、と契約することでできるだけ失敗のリスクを低減させようと考えるのは当たり前のことである。
衣料品業界とて同様で、何の実績も肩書も無い若手デザイナーズブランドや零細ブランドと契約したいと考える企業はあまり無い。だから、パリファッションウィークと同時期にパリに渡って、そこらあたりの公園や会館を借りて独自にファッションショーを開催する「なんちゃってパリコレブランド」があとを絶たないのである。
もちろん、パリの片隅で勝手にファッションショーを開催したとて、フランスやイタリア、イギリスなどの有料企業と契約できる可能性は極めてゼロに近い。そもそもその手の関係者が無名ブランドの独自ショーをわざわざ発見することすら無い。
彼らの狙いは帰国後にある。
日本に帰国した後で「パリコレに参加しました」と自己宣伝することで、大手アパレルや大手商社などの有力企業と契約したいわけである。
幸いにも「パリコレ(正式にはパリファッションウィーク)」の知名度だけは日本人にも高いが、パリコレの詳細や正式参加ブランドを把握している人は少ない。一般消費者はもとより、メディア関係者や衣料品業界関係者ですら決して多数派ではない。
そうなると「パリコレに参加しました」という自己宣伝に飛びつく大手企業やメディアが多く、いつの間にか日本国内では「実力派ブランド」みたいな立ち位置を手に入れることができ、美味しい契約も獲得しやすいというわけである。
まあ、要するに「優良誤認」を狙って「盛りに盛った」肩書を作り上げるという話である。
しかし、「なんちゃってパリコレ」で自らを大きく見せて、優良誤認ビジネスを画策するのはファッションブランドだけのことではない。
この辺りは「優良誤認テクニック」が他分野にまで浸透しているという証だろう。
前回、引用した朝日新聞の後藤洋平記者の記事を再度引用する。
「パリコレ出ました」って本当ですか? 寄付や宣伝…無関係なのに [ファッション]:朝日新聞デジタル
しかし、実際のPFWには参加していないのに参加したように見せかける「パリ・コレ詐欺」のようなケースもあり、PFW自体のイメージを低下させかねない要因にもなっている状況だ。
また、ある美容機器メーカーは昨年11月から、主に東京23区内を走るタクシーの車内に流れる動画広告で「パリコレに採用されました」と宣伝している。ホームページ(HP)によると、日本の男性デザイナーが手がけるブランドが同9月にパリで開いたショーで同社の機器が採用されたとしたうえ、「機能性の高さからパリファッションウィーク(通称:パリコレ)での採用に至りました」という。この男性デザイナーのブランドもPFW公式スケジュールには、どこにも記載がなかった。
とのことで、某美容機器メーカーでこの「なんちゃってパリコレビジネス」が喧伝されているというのである。ただ、この美容機器メーカーはタクシー車内の動画広告を出稿していたから記者の目に留まった。もし、大々的な広告を出稿していなかったら記者の目には留まらなかっただろう。
で、参加ブランドの場合、現在はインターネットで公式参加ブランドを調べることができる。だが、機器になると不可能ではないが、公式参加ブランドよりも調べることは難しくなる。
朝日新聞は、PFWとブロードキャスティングパートナーとして契約を結んでいる。これらのブランドについて主催者に問い合わせたところ「彼らとPFWは何の関係もなく、パートナーでもない。ショーに際して『パリ・ファッションウィーク(PFW)』の名称は使えないはずだ」との回答があった。さらに調べると、テーラーが参加した催しは若手を支援する目的で世界各地でショーを開いている団体によるものだった。美容機器メーカーの機器が「採用」されたという男性デザイナーのブランドも、他の都市で開催された同じ枠組みの催しに参加していた。いずれにしても、トップブランドが集うPFWとは程遠いものだ。
とある。朝日新聞記者ですら、主催者に問い合わせて詳細が分かるわけだから、一般的なウェブで検索することはかなり難しいと言わねばならない。
で、個人的にもっと疑問なのが「パリコレ参加モデル」という肩書を名乗っているモデルや元モデルである。これは本当かどうかをインターネット検索だけで調査することはかなり難しい。また、一定以上に著名なモデルや元モデルならまだしも、インスタのフォロワー1万~5万未満の「プチインフルエンサー」的なモデルや元モデル・自称モデルなら、その存在自体が知られていないので、名乗りたい放題である。
現に、当方もフォロワー1万数千で「日本人初のパリコレミセスモデル」という肩書を名乗っている女性のアカウントを見たことがある。
パリファッションウィークのステージモデルに「ミセス」という区分があったとは当方は聞いたことが無いのだが。(笑)
なぜ彼女らが「パリコレ参加」を肩書にするかというと、それでプチインフルエンサービジネスを展開したいためだろう。フォロワー信者を獲得して彼らに食品や化粧品を売りつけてその手数料を稼ぐというビジネスだろう。
正統派ファッションショーのステージモデルは女性だと最低175センチの身長が必要だと言われているから、それ未満の身長の女性モデルは一部の例外を除いて正統派ファッションショーのステージモデルであるという確率は極めて低い。
雑誌やウェブ媒体で活躍する女性モデルは身長が低い場合が多い。雑誌やウェブ、テレビで活躍するために必要なのは身長や体型ではなく顔面だからである。
まあ、そんなわけで「なんちゃってパリコレ」ビジネスは衣料品ブランドだけにとどまらずに美容機器や有象無象の自称モデルなどにも広がっているので、情報を受け取る側はこれまで以上の注意が必要になる。
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とおりすがりのオッサン より: 2025/01/28(火) 11:23 AM
Vスーツの女性経営者は、私がファンの某女優さんとも対談してたりして、その女優さんと直接話せる機会があったから真実をチクっちゃおうかと思いましたが、やっぱり止めておきましたw
朝日新聞の記事を読みました!
滋賀のテーラーの事も書いてありましたね。
うちは母が朝日新聞を取っているので、ぱらぱら見ますが、結構アパレルの記事が書かれています。
〇ンミカさんも、パリコレモデルと名乗っていますがメゾンではなくて、認定外の日本のブランドのショーに一度出演しただけだそう。
ビクトリースーツと名乗る、大阪発の女性テーラーも、コレクションに参戦と名乗っていますね。
詳しくない人達は、信じているでしょうね。