MENU

南充浩 オフィシャルブログ

「パリコレ正式参加ブランド」と「なんちゃってパリコレブランド」の判別の方法

2025年1月24日 プレスリリース 1

日本国内では広く一般的には「パリコレ」と呼ばれているパリ・ファッションウィークが始まった。当方の知人の幾人かも現地まで飛んでいるようで、SNSには連日、パリの画像やコレクションショーの日程などがアップされている。

もちろん、当方はパリへ行っていないし、今後も行く気も無い。何よりも最早、10何時間も飛行機に乗ることが苦痛で仕方が無い。当方の限界時間は4時間くらいまでである。それを越える地域には行きたいとも思わない。何なら新幹線でも3時間が限界である。それを越える移動はしたくない。

パリファッションウィークに「正式出展」することがデザイナーズブランドとして高いステイタス性を持つことは皆さんがご存知の通りである。特に国内では相当に高いステイタス性をもって受け止められることは昔も今も変わらない

 

 

しかし、体感的には2000年代前半ころから、やけにやすやすと「パリコレ出展」をしてしまうデザイナーズブランドが増えた。すでにある程度の知名度を有しているブランドなら理解もできるが、独立したばかりで業界内知名度も低いブランドが「パリコレ出展します」「パリコレ出展しました」と喧伝する事例が増えたのである。

「パリコレ」がそんなにやすやすと出展できるのかと疑問に感じていたが、実際は正式にパリファッションウィークに参加できるブランドと、そうではないブランドがあるということが判明する。

要するに「パリコレ」時期に合わせて、わざわざパリに渡って、そこら辺の施設なり公園なりを借りて勝手にファッションショーを開催するのである。そしてこれを「パリコレ出展」と自称している。これは当時から業界内では公然の秘密であった。

その認識は業界内でほぼ留まっており、一般メディアではこのような「なんちゃってパリコレブランド」が少なからず国内に存在していることはほとんど報道されてこなかった。

 

 

それが昨年、朝日新聞で大々的に報道された。今回もまた朝日新聞が同様に継続報道している。

それほどに「なんちゃってパリコレブランド」は雨後の筍のように次から次へと涌いてくるのである。

「パリコレ出ました」って本当ですか? 寄付や宣伝…無関係なのに [ファッション]:朝日新聞デジタル

「パリ・ファッションウィーク(PFW)」に参加した、とのうたい文句でSNSやタクシー広告で宣伝するブランドが近年、目立つようになった。しかし、実際のPFWには参加していないのに参加したように見せかける「パリ・コレ詐欺」のようなケースもあり、PFW自体のイメージを低下させかねない要因にもなっている状況だ。

とのことである。

一例として、某テーラーが「パリコレ参加した」という喧伝していることに触れている。

「いよいよ世界最高舞台、パリ・コレに」。ユーチューブに公開された動画で、滋賀県に本拠を構えるテーラーの代表は、こう誇らしげに語った。昨年9月25日に「パリ・コレに初参加した」といい、動画には和柄の派手なスーツを着た男性モデルたちがランウェーを歩いたり、代表らと記念撮影したりする様子も収められている。

しかし、9月25日のPFW公式スケジュール表にはザ・ロウやドリス・ヴァン・ノッテンといったブランドのショーは記載されているが、このテーラーの名は無い。しかも、PFWはレディースとメンズの各プレタポルテ(高級既製服)とオートクチュール(高級注文服)の三つのカテゴリーでそれぞれ年に2回ずつ開催されているが、このテーラーがショーを開催したとされる日はメンズではなく、レディースのショーが開催される時期だった。

ファッションウィーク正式参加ブランドかどうかは、公式スケジュールに掲載されているかどうかで簡単に判明する。

さらにいうと、メンズとレディースは開催時期が異なるため、レディース開催時期にメンズテーラーが参加していること自体がおかしいのである。

 

 

この滋賀県のテーラーというのは、恐らく某スポーツOBが記者会見時に着用した恐ろしく襟が高いシャツを作ったテーラーだろうと推測される。

シャツ襟があまりにも高すぎて後頭部をすっぽりと覆っているさまはまるで後白河法皇の肖像画のようだった。

『天子摂関御影』より「後白河院」藤原為信 画

 

 

さて、この記事では「なんちゃってパリコレブランド」が誕生する原因の一つとして「エージェント」の存在を挙げている。

テーラーの代表者を取材すると、「僕は海外のエージェントから依頼されて出ているだけで詳しいことは分からない」と話した。「エージェント」の連絡先を教えてほしいと伝えて了承されたが、その後連絡はなかった。

とのことだが、この一文の顛末を読んだ限りにおいては「海外のエージェント」の存在もあやしいものだと感じさせられる。なぜなら、その後の連絡は無いからだ。あきらかにテーラーがバックレようとしているとしか読めない。

とはいえ、このような話を持ち掛ける「エージェント」っぽい存在は確かに存在するのではないかと考えられる。ただし、個人的にはそれは海外ではなく、日本国内に多く存在するのではないかと見ている。

なぜなら、海外のエージェントはそこまで国内の零細ブランドには詳しくと考えられるからで、そういうのをピックアップして商売をするなら国内業者ではないかと思われるからだ。

 

またエージェント云々は関係なく、自らの意思で「箔をつける」ために「なんちゃってパリコレ」を開催しようと試みるブランドもある。そういうブランドを当方は直接知っている。

 

いずれにせよ、「(なんちゃって)パリコレに参加した」と言えれば、そのブランドは国内業界において他企業とのコラボや外注企画という「美味しい」仕事にありつけるからである。だから自ら開催を企てるブランドもあるし、エージェントに高い金を払ってでも後々に取り返せる可能性が高いからその企てに乗っかるブランドもある。

 

そして、「なんちゃってパリコレブランド」が国内にはびこってしまった原因の一つにはメディアの報道姿勢もある。昨年から朝日新聞は(というよりこの記事を書いた記者個人がと言えるかもしれないが)一連のパリコレ啓蒙記事を書いているが、件のテーラーを「パリコレ参加」と報じたのも大手新聞社各社なのである。要するに、公式スケジュールを確認することなく、テーラー側の言い分だけで掲載・報道してしまったということである。また業界メディアとて、それを確認せずに報道してしまうことも決してゼロではない。

日本国内においては「パリコレ参加」という肩書が報道されることで大きな利益を生みやすいため、各報道機関には必ずパリに限らずミラノ、ニューヨーク、ロンドンともにファッションウィークの公式スケジュールを確認することが求められる。それこそが「なんちゃってパリコレ(ミラコレ、NYコレ、ロンドンコレも含む)ブランド」がはびこらない土壌を作るといえる。

 

 

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2025/01/24(金) 11:32 AM

    このブログで実態を知るまで「え~、スゲェな、パリコレ出てるんか~」とか本気で勘違いしちゃってました。
    私が騙されたのは、YouTubeで偉そうに「フルオーダー」なんて言ってるイージーオーダーのテーラーの女経営者さんのことですが、書籍出したり講演会したり、すっごい面の皮と化粧が厚そうですw

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ