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南充浩 オフィシャルブログ

同じ商品でも用途とネーミングを変えると売れることがあるという話

2025年1月17日 販促 0

先日、懇意にしている素材系兼製品OEM業者の方から「先日、ブログに書いていた『ダサくてもわかりやすいネーミングの商品の方が売れやすい』というのと同じことをビジネス系ラジオ番組で聞きましたよ」とお知らせいただいた。

お知らせいただけて非常にありがたかった。

当方は不得意だが、商品のネーミングというのは非常に重要で「ダサい」かどうかよりも「わかりやすさ」が重要になる。

 

その一方で、メーカーなりブランドが「価値だと考えている視点」が実はマス消費者からすると大した価値ではないということも少なからずある。

このあたりは、いかに自社や自ブランドの商品を客観視できるかにかかっているのだと思う。今回はそれについての記事を見かけたので紹介したいと思う。

悲しいほど売れなかった「刻みのりハサミ」、“名前を変えただけ”で100万本超の大ヒット商品に(1/4 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

 

個人情報保護への意識が高まる昨今、シュレッダーは家庭でも求められるようになった。だが、シュレッダーは置き場所を取るし、重いし、値段が高いのも事実だ。そんな既存製品の課題を解決したのが、コンパクトな「ハサミ型シュレッダー」である。

このハサミは当初、「刻みのりを簡単につくれるハサミ」として売り出していたという。刻みのりを切るために新たなハサミを買う人は少なく、わずかしか売れないお荷物商品だった。それが視点を変えただけで累計100万本を突破する大ヒット商品へと化けたワケだ。

 

とのことだ。

当方はさして、個人情報保護に関心がないが、このハサミは欲しいと思った。理由は紙ゴミの圧縮に便利そうだからだ。当方が住んでいる地域は可燃ごみ袋は有料である。一人暮らしなので3週間に一度のゴミ出しで済んでいるが、できれば節約したい。

現在、紙ゴミは手で細切れに破って捨てて、その上から足で踏んで圧縮しているが、このハサミで切ればもっと圧縮が容易ではないかと思ったからだ。特にプラモデルの空箱なんかは手で引き裂くよりも圧縮しやすそうだ。

通常の会社ほどに紙ゴミが出るなら備え付けのシュレッダーを買っても良いだろうが、当方は一人細々やっているだけなのでそこまで大量の紙ゴミは発生しない。となるとこのハサミ程度で十分だと思えるわけである。

 

 

この商品は当初、全く異なる用途を想定して売ろうとしていた。アーネストは2005年2月、同商品を「きざみ海苔ができます!」という商品名で発売。そばやお好み焼きなどに使えるきざみ海苔(のり)を、必要な分だけ手軽に作れるハサミとして打ち出した。

しかし、使用シーンが限定的なことに加え、市販のきざみ海苔が安価だったこともあり、発売から1年間の販売数はわずか7000本。商品の廃番も検討せざるを得ない状況となる。「刻みのりを切るためだけに、刻みのりよりも高いハサミを買う人はあまりいませんでした」と、営業部広報販促課の高橋俊介氏は苦笑する。

 

とのことだが、たしかにアイデアと製作技術してはすごい。ただ、冷静に考えてみれば個々の家庭において「刻み海苔」が必要になる場面がどれほどあるだろうか?

粉もん好きと言われる大阪人でさえ、各家庭でそこまで頻繁にお好み焼きを作って食べない。せいぜい月に1回か2回だろうか。あと、焼きそばならもう少し回数は増えるかもしれないが、これとて月に5回もあれば多すぎるくらいだろう。たこ焼きもしかりである。

となると、あとはザル蕎麦くらいだが、ザル蕎麦も夏限定だろうし、夏の期間に限って見ても各家庭でそれほど頻繁にザル蕎麦を調理するとは思えない。

 

要は「想定した用途がニッチすぎた」と言わざるを得ない。

いくらアイデアと技術があっても、用途がニッチならば売れる数量も少なく終わる。需要が少ないから当たり前の話である。

 

ところが、シュレッダーとして見た場合、各家庭で必ず必要になる。特にハガキや手紙を処分する際は自分の住所がわからないようにする方が安全である。

かと言って、当方のように通常オフィスにあるような備え付けシュレッダーを買うほどでもない。となると、主導のハサミタイプが最も適している。

同じ商品でも用途を変えると需要数量は一気に増大する。そして、これまでに無い商品だからこの会社の製品だけが売れるということになる。

用途を変え、商品名を変えれば同じ商品でも売れ行きは140倍以上変わるわけである。

 

 

実はこういうことは衣料品にも多々あるのではないかと思う。

例えば、以前「塩素をかけても色落ちしないパンツ」として売り出したブランドがあった。メディアなどでは結構「驚き」みたいな感じで採りあげられていたが、何のことはない単なるポリエステル100%生地のズボンである。

塩素は綿は漂白できてもポリエステルは漂白できない。しかし「単なるポリエステル100%のズボン」というだけでは売れない。形やシルエットを気にしなければワークマンなどの作業服屋に行けば1900円で買える。

となると、別の視点が必要となり、それが「色落ちしないパンツ」という価値だったわけである。

 

繊維業界の人はとかく物作りが好きで、それは川下のアパレルも同様の性質を持つことが多い。それ自体は悪いことではないが、製造工程の手の込み方だけを「価値」として押し出しても、マス層には響かない場合が多い。その結果「手作りの温かみ」とか「人の手の加わった痕跡」とか一般マス層には判別しにくい価値を押し出してしまうことになる。実際に物作り系のブランドは世の中にあふれているし、「手作りの温かみ」を押し出しているブランドも今の世の中にあふれている。じゃあ、同じ押し出しのAとBの2つのブランドはどう違うのか説明する方も難しいだろうし、受け取る消費者も説明を聞いたところで判別が難しいだろう。

このハサミの考え方は繊維・アパレル業界にも応用できるのではないかと思うがどうだろうか。

 

 

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